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計測器を故障から守る、取り扱いの注意点を伝授(1/3 ページ)

計測器は電子機器の開発や製造に欠かせないツールであると同時に、それ自体が極めて精密な電子機器でもある。取り扱いに注意しなければ、正しい測定結果が得られなかったり、故障してしまったりする危険性があるのだ。本稿では、信号発生器とオシロスコープ、ネットワーク・アナライザについて、発生件数の多い故障とその原因、そして防止方法を解説する(EDN Japan編集部)。

» 2011年12月15日 13時11分 公開
[前田雅己/柿谷由絵(アジレント・テクノロジー),EDN]

 計測器は、電子機器の開発や製造に欠かせないツールである。設計通りの特性が得られているか、良品か不良品か――。これらの判断を下したり、不具合の原因を探るためには、オシロスコープや信号発生器、ロジック・アナライザ、任意波形発生器、ネットワーク・アナライザといった計測器を使いこなす必要がある。

 ただし、かつての計測器と比べると、最近市場に投入された計測器は、性能や操作性、機能が大きく向上している。測定対象である電子機器の進化に呼応して、計測器自体も進化を遂げているからだ。測定帯域幅や測定速度、測定精度といった基本性能が高まり続けているほか、グラフィカル・ユーザー・インターフェースを使うなど、操作性や解析機能の改善も著しい。ユーザーが計測器の仕組みを熟知したり、取り扱いに習熟したりしていなくても、複雑な測定を高い再現性で実施できる場面が増えている。

 このためユーザーは、ともすれば、「計測器は極めて精密な電子機器である」という事実を忘れがちだ。しかし現実には、使い勝手の高い最新の計測器も、かつての計測器と同様に精密機器であることに変わりはない。すなわち、取り扱いに注意しなければ、正しい測定結果が得られなかったり、故障してしまったりする危険性がある。

取り扱い起因の故障は防げる

 実際に、計測器メーカーである当社(アジレント・テクノロジー)に持ち込まれる故障した計測器のうち、5%程度はユーザーの取り扱いに原因があるとみられる(図1)。残りは部品の寿命などに起因した故障と、部品の自然故障だ。確かにユーザーは、部品の寿命や自然故障については防ぎようがない。しかし、ユーザーの不注意な操作が原因とみられる5%の故障については、計測器の操作に注意を払えば防げるのだ。

図1 取り扱いに起因する故障は少なくない 図1 取り扱いに起因する故障は少なくない 計測器の故障は、部品の寿命などによる故障と部品の自然故障、ユーザーの取り扱いに起因する故障に大別できる。このうち取り扱いが原因の故障は、ユーザーが注意を払うことで防ぐことが可能だ。そうすれば、無駄なダウン・タイムを回避できる。

 もちろん計測器メーカーは、取り扱いに起因する故障に対して手をこまねいているわけではない。例えば信号発生器は一般に、出力端子に過大な電力が誤って印加された場合に出力回路を保護する「逆電力保護(RPP:Reverse Power Protection)機能」を備えている。ただし、こうした保護機能は通常、計測器の性能とトレードオフの関係にある。例えば信号発生器の逆電力保護機能は、出力端子に保護用のダイオード素子を接続することで実現しているため、ダイオード素子の寄生容量によって信号帯域幅が制限されてしまう。つまり、保護機能を過剰に搭載すると、高い性能を提供できなくなるのだ。計測器本来の高い性能を求めるユーザーに対して、過剰な保護機能を理由に性能の低下を強いることはできない。

 そこで当社は、これまでに受け付けた修理の履歴を分析し、ユーザーの取り扱いが原因とみられる故障のうち、発生件数が特に多い故障をピックアップした。本稿では、こうした故障を防ぐために、ユーザーに知っておいてほしい知識を伝授する。具体的には、信号発生器とオシロスコープ、ネットワーク・アナライザについて、発生件数の多い故障とその原因、そして防止方法を解説する。

 計測器の故障は、開発スケジュールの遅延や製造ラインのダウン・タイムに直結する。修理期間は、もちろん故障の度合いに依存するが、通常は数日では済まない。数週間を要する場合が多い。ユーザーは代替機の調達に、思わぬ手間や出費を強いられることになる。取り扱いに関する知識を身に付けておけば、こうした無駄な費用や時間を省けるのだ。なお、本稿で解説する故障防止方法は、当社の計測器のみならず、いずれのメーカーの計測器でも広く一般に適用可能である。

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