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電流測定用ロゴスキー・コイル、可変抵抗内蔵で単体校正を実現(3/3 ページ)

» 2011年12月19日 13時22分 公開
[Gennadiy Frolov/Oleg Grudin/Tim Warland(Microbridge Technologies),EDN]
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参照用コイルと比較して校正する

 図2は、リジャスタを取り付けたロゴスキー・コイルの校正用システムの概略図である。目標感度をあらかじめ保証した高品質のコイルを参照用に利用する。すなわち、校正対象のコイルの感度を実際に測定する代わりに、校正用の電流を流したときに校正対象のコイルと参照用コイルが出力する信号を比較して、両者が一致するようにリジャスタの抵抗値を調整するわけだ。


図2 参照用コイルを使った校正システム 図2 参照用コイルを使った校正システム あらかじめ感度特性が保証された参照用のロゴスキー・コイルを利用する。スイッチを切り替えることで、参照用コイルと校正対象のコイルそれぞれの出力電圧を切り替えて、アンプとフィルタ経由でデータ集録モジュールに入力して測定できるようにした。データ集録モジュールとしてこの図の例では、16ビット分解能のA-D変換入力を32チャネル備えた米NationalInstruments社の「NI9205」を使っている

 図2に示したように、コイルの後段に、低雑音の交流アンプと低域通過フィルタ(もしくは帯域通過フィルタ)をなるべく近づけて接続しておけば、出力信号を

測定する電圧計やデータ集録モジュールは分解能が低い安価な機種でも構わない。なおこの交流アンプは、差動出力を備えていることが望ましい。さらに、ロゴ

スキー・コイルの出力信号を歪ませないように、利得帯域幅(GBW)積が十分に広い品種を選ぶ必要がある。

 リジャスタの抵抗値の調整には、先に述べた通り、専用の調整ツールを用いる。具体的には調整ツールが自動的に、リジャスタの調整用端子である「trim1」と「trim2」に調整用の電圧パルスを印加して、リジャスタの出力端子における電圧を測定し、想定値と比較するという処理を繰り返すことで所望の値に合わせ込む。全部で30〜60個の電圧パルスを印加し、所要時間は2〜3秒である。

図3 直流電圧源でリジャスタを調整 図3 直流電圧源でリジャスタを調整 ロゴスキー・コイルの校正に向けてリジャスタの抵抗値を調整するシステムの構成図である。リジャスタの調整時は、コイルが出力する交流信号ではなく、直流電圧源(Vref)が出力する直流電圧を印加すればよい。スイッチをオンに切り替えれば、直流電圧が直接、リジャスタに印加される仕組みだ。なおこのシステム中、バッファ/アンプと低域通過フィルタについては、省くことも可能である。

 この調整作業の間、リジャスタは単に抵抗分圧器としてしか機能しない。従って調整時は、図3に示すように、リジャスタにはコイルが出力する交流信号ではなく、別に用意した直流電圧源から直流電圧を印加すればよい。


3ステップで校正が完了

 リジャスタを組み込んだロゴスキー・コイルの校正手順は、図4に示したフローチャートの通りだ。図2に示した校正システムに、図3に示したリジャスタの調整システムを接続し、各システムを切り替えて使う。

 第1ステップでは、図2のようにコイルを貫く導体に交流電流を流しながら、校正対象のコイルに搭載したリジャスタの調整に向けて目標レシオ「X」を決定する。この目標レシオは、校正対象のコイルの初期感度と目標感度(参照用コイルの感度)との比率に相当する。

図4 リジャスタを搭載したコイルの校正手順 図4 リジャスタを搭載したコイルの校正手順 校正作業の手順である。コイルの感度測定、リジャスタの調整、誤差の確認と、大きく3つのステップからなる。

 第2ステップは、リジャスタの抵抗値を実際に調整する作業である。図3に示したスイッチをオンに切り替えてリジャスタに直流電圧を印加した状態で、出力

端子の電圧値を測定する。次にリジャスタの調整ツールを使って、リジャスタに内蔵した2つの可変抵抗のどちらか一方の値を調整することで、この電圧値をス

テップ1で求めた目標レシオであるX倍にする。

 最後のステップは、調整後の感度の誤差が±0.5%以内に収まっていることの確認である。±0.5%を超えている場合は、第1ステップに戻って、リジャスタの抵抗値を調整し直す。

 ここで注目してほしいのは、リジャスタの調整時は、印加する直流電圧の大きさに出力端子の電圧値が単純に比例するということだ。従って、直流電圧の精度や、バッファやアンプの利得に対して厳しい条件はまったくない。ただ1つ注意すべき点は、調整に要する数秒の間、これらが温度ドリフトを起こさないことだけである。

(初出:EE Times Japan 2008年4月号掲載記事、著者の所属は当時のものです)

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