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» 2011年12月20日 17時34分 UPDATE

信号処理回路が差異化のポイントに:電子機器の競争力を高めるセンサー技術 (1/3)

スマートフォンやタブレット端末に代表される最新の電子機器には、さまざまなセンサーが搭載されている。電子機器の競争力を高めるには、これらのセンサーから得た信号を有効活用した機能を搭載する必要がある。本稿では、タッチパネルや温度センサー、撮像素子といった各種センサーの特徴と、それらのセンサーが出力する信号を処理するのに最適なICを紹介する。

[Steve Taranovich,EDN]

センサーと信号処理の関係

 電子機器には数多くのセンサーが搭載されている。これらのセンサーが検出するのは、温度、光、位置、動き、圧力などに関するアナログの信号情報である。電子機器の競争力を高めるためには、センサーから得たアナログ信号を、マイコンやプロセッサで扱えるようにデジタル信号に変換する必要がある。最近は、アナログICベンダーを中心に、個別のセンサーに最適な信号処理用ICが提案されている。

 そこで、最新のセンサーデバイスと言えるタッチパネルから、電子機器の黎明期から利用されている温度センサーといった各種センサーの特徴と、それぞれのセンサー向けに提案されている信号処理用ICについて紹介してみよう。

タッチパネルもセンサーデバイス

 センサーの用途は、携帯電話機、スマートフォン、タブレット端末、ノートPC、MP3プレーヤ、ゲーム機など多岐にわたる。中でも、タッチパネルに代表されるタッチセンサーは、操作入力用のインタフェースとして広く利用されている(関連記事)。その方式としては、大まかに静電容量方式と抵抗膜方式に分けることができる。静電容量方式のタッチセンサーは、キーパッド、回転スイッチ、押しボタンなどの用途に適している。一方、抵抗膜方式のものは、回路設計が容易なことが特徴だ。以下に、タッチパネルを例にとって、これら2つのタッチセンサー方式の原理と信号処理回路について説明する

■静電容量方式タッチパネル

 静電容量方式タッチパネルは、ITO(酸化インジウムスズ)をはじめとする透明な導電体をコーティングした絶縁体のガラスパネルを用いる。このガラスパネルの表面に人間が触れると、導電体である人間の体によってパネルの静電界が歪(ひず)む。これを静電容量の変化として検知して、ガラスパネルが触れられた位置を検出するのが静電容量方式のタッチパネルである。

 センサー信号であるタッチパネル上の静電容量の変化を取り込んでデジタル信号に変換するICがCDC(静電容量‐デジタルコンバータ)である。CDCを選定する際には、以下の項目に配慮するとよい。

  • A-D変調器の精度
  • デジタルフィルタのノイズ処理能力
  • 周辺環境の温度変化を補償する機能の有無
  • CDC、もしくはCDCと接続するホストプロセッサに高度なアルゴリズムが組み込まれており、それらのアルゴリズムをLinux やMicrosoftの組み込みOS「Windows Embedded Compact」で利用可能かどうか

 これらが備わっていれば、入力時に行うタッチ動作の圧力や動きを正確に検出できるタッチパネルを開発できるだろう。

 一般的に、静電容量方式のタッチパネルコントローラには24ビットのA-D変調器を搭載するCDCが用いられる。これは、わずかなレベルの静電容量の変化をデジタル値に変換する必要があるためだ。CDCの代表例としては、Analog Devicesの「AD7746」がある。AD7746は、励起信号源とΔΣ型のA-D変調器の間に接続されているタッチパネルの静電容量を検知するICである。励起信号源から出力される方形波の励起信号によってタッチパネル上に静電界が形成し、A-D変調器はタッチ位置検出の基となる静電容量をデジタル信号として出力し続ける。

図1 「AD7746」を用いた静電容量方式タッチパネルの模式図(提供:AnalogDevices) 図1 「AD7746」を用いた静電容量方式タッチパネルの模式図(提供:AnalogDevices) 

 A-D変調器からの出力は0と1の密度情報を含むビットストリームである。A-D変調器後段のデジタルフィルタでは、周辺環境の温度変化などに合わせて検知した値を校正(キャリブレーション)するための係数が適用される。最終的には、校正された静電容量のデジタル信号を、シリアルインタフェースを介してホストプロセッサに送るのである(図1)。

 校正の基準となる周辺環境の温度変化の測定は外付けの温度センサーを用いてもよい(温度センサーについては後述)。ただし、温度センサーとCDCまでの間にあるプリント基板の配線抵抗に注意払わなければならない。

■抵抗膜方式タッチパネル

 抵抗膜方式タッチパネルは、最上層に位置する柔軟性を備えたフィルムと、透明なガラスなどを用いた基板から構成される。フィルムとガラスの間は、絶縁体スペーサが挟み込まれているので一定の空隙が存在している。最も重要なのは、この空隙の内部にある、フィルムの裏面とガラスの表面に形成されている導電層である。指などで上側のフィルムを押し込むと、内部の導電層がその押し込んだ点で接触し、導電層に流れる電流値が変化する。この変化からタッチ位置を検出するのだ。

 抵抗膜方式タッチパネル用信号処理ICの選択基準も、静電容量方式タッチパネルと基本的には同じである。ただし、アルゴリズムについては、抵抗膜方式タッチパネルの場合ホストプロセッサのソフトウェアとして搭載されていることが多い。A-D変調器は分解能が12ビット程度のものでも、十分な検知精度を確保できる。励起信号源はA-D変調器のリファレンスで駆動されるので、デジタル信号の出力結果にリファレンスのドリフト誤差は反映されない。

 なお、抵抗膜方式タッチパネルにおける温度変化への対応は、信号処理IC内蔵の温度センサーで対応することが多い。

 抵抗膜方式タッチパネル用信号処理ICの例としては、Maxim Integrated ProductsのタッチパネルコントローラIC「MAX11811」がある。MAX11811は、最新の低消費電力マイコンを搭載するような、消費電力の低減を意識した携帯機器を主な用途としている。分解能が12ビットのSAR(逐次比較)型A-D変調器とマルチプレクサを内蔵しており、ホストプロセッサとの通信はシリアルインタフェースを介して行う。また、A-D変調器から得たデジタル信号を処理してタッチ位置を算出するデジタル処理回路を内蔵しているので、ホストプロセッサの処理負荷を軽減できる。

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