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2012年期待のエレクトロニクス技術(省エネ編)EDN/EE Times編集部が展望する(4/4 ページ)

» 2012年01月24日 16時58分 公開
[EDN]
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LEDを輝かせるドライバICの重要性

 LED素子がさまざまなアプリケーションに利用されるようになっていることに異論はないと思う。この10年間で、麦球やネオン管といった表示装置に用いる部品を置き換えることから始まり、液晶ディスプレイのバックライト、大型看板や照明器具として利用されるようになっている。

 他の発光素子と比べて、LED素子が、効率、寿命、形状やその他の面で多くのメリットを有する以上、当然のことだろう。しかしながら、LED素子を用いた機器において、LED素子以上に重要な役割を果たしているにもかかわらずあまり認知されていないのが、LED素子用のドライバIC(LEDドライバ)だ。LEDドライバは、交流(AC)または直流(DC)のレール電圧を適切に制御してLED素子に効率的に供給する機能を持つ。LED素子を利用する機会がさらに広がり、技術面でも多様化して行く中で、それに合わせてLEDドライバも進化する必要がある。

 2011年の傾向として見られたのが、出力電力や入力電圧、使用するLEDの素子数などが異なるさまざまな用途に合わせて開発されたLEDドライバの登場である。これは市場の要求に対応したものであり、2012年以降も続くだろう。

 例えば、街路灯を従来の照明からLED照明に置き換えることは、技術的なイノベーションを伴うような見栄えのする案件ではないが、その数量規模から言ってビジネス面では非常に魅力的である。とはいえ、LED素子が、低電圧大電流で駆動する部品であるのとは対照的に、街路灯はAC120V以上、多くの場合はAC480Vという高い電圧を使用している。製品安全を考慮するならば、電源と負荷の間を絶縁しておく必要がある。このような特殊な条件に対応するため、フォールトトレラントであるとともに安全性を確保するための機能を搭載しているLEDドライバが幾つかのメーカーから発表されている。

 屋内外で使用する家庭用LED照明も市場拡大が期待されているが、これについても避けて通れない制約が存在する。照明器具の物理的構造と、LED素子の発光効率を維持するための放熱条件が合致しないことが多いのだ。余分な熱を赤外線として発光面から放射する白熱電球と異なり、LED素子は素子自身が発熱する。その上、素子そのものは熱に弱いので、熱管理は従来の照明器具よりも慎重に行わなければならない。

 LED素子の調光には、電流値そのものを制御するという手軽な手法が存在する。とはいえ、光の色調や直線性、ダイナミックレンジについての要求が厳しいLED照明では利用できないことも多い。また、白熱電球の調光に用いられている膨大な数のトライアック調光器では、一般的なLEDドライバを搭載するLED照明を調光できないという問題もある。これらの課題に対して、LEDドライバメーカーは、2つの施策で対応する方針である。一つは、既設の照明器具をLED照明に置き換える場合で、トライアック調光器と相性のよいLEDドライバを搭載した製品で対応する。もう一つは、照明器具を新設する場合で、一般的なLEDドライバが有するPWM(パルス幅変調)制御による定電流駆動での調光が可能な調光器を用いる。

 LED素子を一列もしくは一面に並べて、液晶ディスプレイのバックライトや大画面の看板として利用する場合、LEDドライバは直列や並列、もしくは直列並列混合の構成に対応している必要がある。多くのLED素子を配列し、各素子を自在に制御するようなアプリケーションでは、LEDドライバはさまざまなタイプのLED素子を制御できるとともに、マルチプレクサやアドレス指定が可能な回路も実装していなければならない。

 これらのことを踏まえた上で2012年のトレンドを予測してみよう。まず、非常に大きな成長とビジネスチャンスを見込んでさらに多くの企業がLEDドライバ市場に参入するだろう(環境保護への貢献をアピールする狙いもあるかもしれない)。次に、各メーカーが、高効率のDC-DCコンバータや、低暗電流、高電圧対応ICの設計ノウハウやプロセスといった固有の技術をLEDドライバにどう生かしていくかも注目される。一方で、一般的な機能を持つLEDドライバはコモディティ化が進む。そしてニッチ市場をターゲットとして、さまざまな機能を持つLEDドライバ製品が登場すると思われる。こういった多様化と特定用途への最適化は、オペアンプやA-DコンバータなどのアナログICと似ているかもしれない。

(Bill Schweber:Editor, EE Times' Planet Analog)

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