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» 2012年02月22日 06時00分 UPDATE

目指せ“パーフェクトタイミング”:ジッタと位相ノイズの測定にPLLの分周器を活用 (1/3)

通信チャネルのデータ伝送速度が向上し、クロック信号の速度が高まるにつれて、ジッタと位相ノイズを高い精度で測定することがますます重要になっている。一方、測定の難易度は増すばかりで、高いコストが掛ってしまう。そこで本稿では、PLL ICの分周機能を活用して、測定器の性能限界を高める手法を紹介する。

[Howell Mitchell(Silicon Laboratories),EDN]

 ジッタが極めて低い部品や装置を対象にジッタ測定を実施する際には、測定結果として得られた値が果たして被測定物(DUT)自体の特性なのか、それとも測定器の特性なのか、常に注意する必要がある。また、測定器の性能限界をユーザーが手元で高められる方法があれば非常に有用だ。そこで本稿では、高周波発振のVCO(電圧制御発振器)を組み込んだPLL(位相同期ループ) ICを使い、クロック信号を分周してジッタを測定する手法について解説する。

 ジッタの評価に使う測定器の最新機種は、大きく2つの種類に分けられる。1つは時間領域の測定器で、具体的には広帯域のサンプリングオシロスコープである。もう1つは周波数領域の測定器だ。具体的には、スペクトラムアナライザ(位相ノイズ測定の専用機能を備えた機種もある)や位相ノイズアナライザがこれに該当する。それぞれに長所と短所があり、測定の手法も異なるが、測定する対象の物理現象そのものは同じである。

いくつもあるジッタの指標

 一言でジッタと言っても、実際にはいくつかの指標がある。順番に説明しよう。

 1つ目は、サイクル間ジッタのピーク値(Peak Cycle to Cycle Jitter)である。これは、連続するクロック周期をある固定の数の周期にわたって観測し、その間に検出されたクロックタイミングのばらつき(時間的なずれ)の最大値を表わす。観測期間は通常、1000周期もしくは1万周期のいずれかに設定する。この指標は、周波数の急激な変化を制限する必要がある場合に使う。例えば、PLLを駆動するクロック信号では、PLLのロック状態を維持できるように、クロック信号の周波数の瞬間的な変動を一定範囲以下に抑えることが望ましい(図1)。

図1 図1 PLLを駆動する用途では、PLLのロック状態を維持できるように、クロック信号の周波数の瞬間的な変動を一定範囲以下に抑えることが望ましい。

 2つ目は、ピークツーピーク(ピーク間)の周期ジッタ(Peak-to-Peak Period Jitter)である。これはクロック周期のばらつきの幅を示すもので、観測期間における最も短い周期と最も長い周期の差分で表わす。観測期間については、やはり1000周期もしくは1万周期のいずれかに設定するのが一般的だ(図2)。この指標は、デジタル回路においてフリップフロップのセットアップ/ホールド時間のマージンを保証するために有用である。

図2 図2 ピーク間の周期ジッタは、クロック周期のばらつきの幅を示すもので、観測期間(通常は1000周期もしくは1万周期)における最も短い周期と最も長い周期の差分で表わす。

 3つ目は、タイムインターバルエラー(TIE:Time Interval Error)ジッタで、累積ジッタ(Accumulated Jitter)や位相ジッタ(Phase Jitter)とも呼ばれる。全てのクロック周期にわたる、理想的なクロック周期と実際のクロック周期の偏差として求められる値だ(図3)。周波数領域で見ると、これにはジッタ変調周波数の全ての成分が含まれる。この指標は一般に、同期型光ネットワーク(SONET)や同期式イーサネット、および光トランスポートネットワーク(OTN)など、広域ネットワーク(WAN)のタイミングアプリケーションで利用されている。

図3 図3 TIEジッタは、全てのクロック周期にわたる、理想的なクロック周期と実際のクロック周期の偏差に相当する。

 このようにジッタは、さまざまな統計量で表わすことができ、上記の他にも二乗平均平方根(Root Mean Square:rms)で表現する場合もある。ピークツーピークの統計量を用いるときは、測定結果の確度が十分に確保できるような数の周期にわたってサンプルを採取することが望ましく、通常は1000周期から1万周期の間に設定する。

装置によって測定できるジッタは違う

 時間領域の測定器は、ピーク間ジッタとサイクル間ジッタ、周期ジッタ、およびTIEジッタを直接測定できる。この測定手法では、低周波数のクロック信号(またはキャリア信号)のジッタを測定することが可能だ。測定データに対して、高速フーリエ変換(FFT)やデジタルフィルタ、さらにその他の後処理を施し、特定の周波数帯域にわたって位相ノイズの値を積分すれば、位相ジッタのrms値を求められる。時間領域の測定器は、データ依存性のあるジッタの測定では周波数領域の測定器よりも優れているため、SERDES技術を用いる高速シリアルインタフェースの測定に有効である。

 一方で周波数領域の測定器は、ピーク間ジッタとサイクル間ジッタ、周期ジッタについては、直接測定することができない。周波数領域の測定器の本来の機能は、特定の周波数帯における信号電力のrms値を測定することだ。さらに、データ依存性のあるジッタの測定にも不向きである。しかし、周波数領域の測定器のハイエンド機は、時間領域の測定器よりもノイズフロアが低いため、位相ノイズが極めて低く、データ依存性の無いクロック信号の測定に使われる(表1)。

表1 表1 時間領域の測定器と周波数領域の測定器の違い

時間領域と周波数領域の指標の変換も可能

 本稿では低ジッタのクロック信号の測定に焦点を絞るため、時間領域の測定器については説明を省き、周波数領域の測定器について詳しく解説する。ただ、数学的な推定や変換処理を使えば、ある指標で測定したジッタから別の指標に基づく値を求めることは可能だ。

 例えば、波高率(クレストファクタ)や所望のビット誤り率(BER)をパラメータとして用いると、ピーク間ジッタからrmsジッタを求めたり、その反対の計算もできる。あるいは、時間領域のデータにFFTを施せば、周波数領域情報が得られる上、フィルタ処理もかけることが可能だ。しかし、こうしたテクニックのほとんどは、数学的モデルを利用しており、多くの場合は実用に足りる近似値が得られるものの、限界があるのも事実である。そのため、使う場合は慎重を期してほしい。

2分周で位相ノイズは6dB減、ただしジッタは変わらず

 さらに検討が必要な問題として、ジッタ測定におけるクロック信号(もしくはキャリア信号)の周波数の影響がある。あるクロック信号を理想的な分周器で分周すれば、元のクロック信号と分周後の出力信号もクロックエッジのジッタは変わらない(図4)。これは直感的に理解できるだろう。図4の上側に示した周波数がFOでジッタがJOの信号を、理想的な分周器で2分周した結果が下側である。分周後の信号は、周波数はFO/2になるものの、ジッタはJOのまま変わらない。

図4 図4 直感的に理解できる通り、あるクロック信号を理想的な分周器で分周すれば、元のクロック信号と分周後の出力信号もクロックエッジのジッタは変わらない。

 ただし、ある一定の時間で見ると、分周後は分周前に比べてクロックの立ち上がり/立ち下りの数が半分になるので、分周後はジッタのエネルギーも半分になることに注意してほしい。これは、2分周によって、クロック信号のジッタはJOで変わらないが、位相ノイズについては6dB低くなることを意味する。20×log2=6dBという計算だ。

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