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トヨタの次世代テレマティクス戦略は「カーナビからの脱却」第3回 国際自動車通信技術展

「第3回 国際自動車通信技術展」の基調講演において、トヨタ自動車常務役員の友山茂樹氏は、同社のテレマティクス戦略を発表。次世代テレマティクスの実現には、カーナビからの脱却が必要になると説いた。

» 2012年03月15日 10時05分 公開
[朴尚洙,Automotive Electronics]

 「次世代テレマティクスを実現するにはナビゲーションシステムから脱却する必要がある」――「第3回 国際自動車通信技術展」(2012年3月14〜16日、東京ビッグサイト)の基調講演において、トヨタ自動車の常務役員を務める友山茂樹氏は、同社のテレマティクス戦略を表明した。

 友山氏は、カーナビサービス「G-Book」や、プラグインハイブリッド車「プリウスPHV」などに活用されている「トヨタスマートセンター」など、同社におけるテレマティクス関連事業を統括している人物だ(関連記事)。


トヨタ自動車の友山茂樹氏 トヨタ自動車の友山茂樹氏

 同氏は講演の冒頭で、高級車ブランド「Lexus」向けのテレマティクスサービス「G-Link」について、「2012年1月発売の『Lexus GS』の新モデル向けの『SmartG-link』では、スマートフォンで車両のリモート監視/操作ができるまでに機能を拡張した。このような進化を遂げているものの、テレマティクスはまだ第1世代のままで、いまだ黎明(れいめい)期にいると考えている」と語る。

 続けて同氏は、次世代テレマティクスへの変革に必要な条件として、「大胆なコスト低減」、進化速度が速いスマートフォンなどへの「時代進化対応」、「スマートグリッド対応」、「グローバル対応」の4つを挙げた。そして、これらの条件を満たす次世代テレマティクスのアーキテクチャの1つとなるのが、先述した「ナビゲーションシステムからの脱却」である。この他にも、ソフトウェア更新に柔軟に対応するための「リプログラミング」、「スマートフォンとの複合サービス」、「クラウドプラットフォームの構築」が必要になると主張する。

次世代テレマティクスへの変革に必要な条件次世代テレマティクスのアーキテクチャ 左の図は、次世代テレマティクスへの変革に必要な条件。右の図は、これらの条件を満たす次世代テレマティクスのアーキテクチャである。(クリックで拡大)

 トヨタ自動車の調査では、カーナビユーザーの約80%が月1〜2回程度以下の頻度でしかルート設定機能を使っていなかった。友山氏は、「テレマティクスに求められる機能は、ルート設定機能などのPull型サービスから、通信を活用したPush型のサービスに移行するだろう」と想定している。通信の方式としては、車両に組み込み型のモジュールを使った常時接続するDCMと、スマートフォンのテザリング機能の2種類を挙げた。そして、「DCMは確実なデータ通信と情報収集が可能だが、契約が面倒だったり追加の通信コストが負担になったりする。市場が急拡大しているスマートフォンのテザリング機能が主流になるだろう」(同氏)とした。また、トヨタ自動車が、テレマティクスで無線LAN(Wi-Fi)を活用する方針も明らかにした。例えば、同社の充電スタンド「G-Station」は、Wi-Fiスポット機能を搭載している。

 そして、カーナビから脱却したテレマティクスの姿として紹介したのが「ODD(On Demand Display)」によるスマートフォン連携システムである。同システムでは、ODDとODDの操作インタフェースとなるステアリングスイッチ、テレマティクスサービス専用アプリを組み込んだスマートフォン、そしてスマートフォンと車両間の認証に用いる非接触充電トレイを用いる。ODDは、表示機能がメインなので、既存のカーナビのように高性能のプロセッサは搭載していない。地図表示やルート設定などの処理は、スマートフォンで行うことになる。

 ODDとスマートフォンの連携は、ODDの車載ミドルウェアと、スマートフォンの専用アプリもしくはOSに組み込まれた連携プログラムの間で行う。「リプログラミング」は、これらの車載ミドルウェアや連携プログラムの更新によって実現できる。

「ODD」によるスマートフォン連携システムODDとスマートフォンのソフトウェア構成 左の図は、「ODD」によるスマートフォン連携システムである。右の図は、ODDとスマートフォンのソフトウェア構成を示している(クリックで拡大)

 なお、ここまで紹介したシステムでは、ODDとスマートフォンの通信をWi-Fiで行っている。この通信をUSBインタフェースを介して有線で行うシステムについては、2012年3月末にタイで発売する1万2000台の特別仕様車で先行展開する予定だ。一方、Wi-Fiで通信するシステムは数年内の実用化を目指して開発中である。

 また、プリウスPHVでは、エコ運転支援に用いる「eConnect」、車両への充電と家庭の電力消費を管理する「H2Vマネージャー」、ソーシャルネットワークサービス「トヨタフレンド」など、スマートフォンを活用したテレマティクスサービスが展開されている。友山氏は、これらの「スマートフォンとの複合サービス」を指して、「第2世代とまでは言わないが、プリウスPHVとともに第1.5世代のテレマティクスは始まっている」と強調する。

 そして、講演の最後では、第2世代テレマティクスの実現に向けて、マルチクラウドサービス「T-MACS(TOYOTA Multi Aggregation Cloud Service)」を構築していることを明らかにした。

マルチクラウドサービス「T-MACS」の概要 マルチクラウドサービス「T-MACS」の概要

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