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» 2012年06月04日 16時31分 UPDATE

知っておきたい 電池の仕組み(4):燃料電池や太陽電池を学ぶ前の基礎固め (1/2)

これまで電池の基礎的な仕組みから原理、種類など、広義にわたって解説してきました。最終回は電池を表す記号および電池の安全性、そして2ページ目にて燃料電池や太陽電池、キャパシタなど、そのほかの電池について解説します。

[伊勢 忠司/三洋電機,ITmedia]
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@IT MONOistで掲載された記事を転載しています



電池を表す記号

 乾電池は単1、単3などと呼びますが、これは日本だけで通用する通称です。アメリカではDやAAといった記号を使っています。一方、世界的に共通する呼び方として、IEC(International Electrotechnical Commission、国際電気標準会議)が国際規格を定めており、形状を表す英字(円筒形、円形はR、角形はF)と大きさを表す数字を組み合わせた記号を使います。この規格はJIS(日本工業規格)にもなっています。

 つまり、日本で単3形と呼ばれる電池は、アメリカではAA、国際規格ではR6と呼びます。

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 マンガン乾電池以外のいろいろな電池が開発されるに伴い、その種類を表す記号も必要となってきました。それは、形状を表す英字の前に電池系を表す英字を付けることで表現します。例えば、同じようなボタン形(すなわち円形)の電池でも、酸化銀電池はSR、アルカリ乾電池はLR、二酸化マンガン・リチウム電池はCRとなっています。一見同じように見える電池でも、種類によって電圧や性能が異なりますので、電池を取り換える際には、この記号を確認するようにしましょう。

 この電池系を表す記号と大きさを表す数字の組み合わせで電池を表し、例えば、単3形のアルカリ乾電池はLR6という呼び名となります。

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電池の安全性

 電池にはエネルギーが蓄えられており、特に最近の高容量の電池には多くのエネルギーが蓄えられているため、安全性への対策は大変重要です。

(1)二次電池の安全機構

  図1にリチウムイオン電池の安全機構の例を示します。二次電池では、図のようなガス排出弁を備え、電池の誤使用時などにおいて、電池内部の圧力が異常上昇した場合に作動し、ガスを放出する機構となっています。また、CID(Current Interrupt Device)と呼ばれる内部圧力が上昇した際に、電気的な接続も切断される仕組みを持つものもあります。また、前回述べたように、微多孔膜のセパレータは高温時に電流を遮断する機構となっています。

 PTC(Positive Temperature Coefficient)素子は異常な大電流が流れた場合に抵抗を増加させ、電流を制限するデバイスであり、電池の内部に組み込んだり、電池の外部に付加されます。PTC素子は導電性の粉末を樹脂で固めた構造をしており、大電流が流れて高温になると、樹脂が膨張して、粉末の抵抗が増大し、電流を抑制する仕組みになっています。

 いくつかの単電池(円筒形もしくは角形)を直列、並列もしくは直・並列に接続をして、特別なケースに配置したものを電池パック(または組電池)と呼びます。安全に長期間使用するために、電池パックにPTC素子やヒューズを付加したり、電子的な保護回路を付加したりすることもあります。

図1 リチウムイオン電池の安全機構 図1 リチウムイオン電池の安全機構

(2)電池の安全性試験

 電池が安全なものに仕上がっているかどうかは、試験を行って確認します。JIS規格では、通常使用や予想される誤使用を想定して電池の安全性試験が定められています。その例を以下に示します。

・外部短絡試験

 ポケットや鞄に電池を入れた状態で、ネックレスや鍵などでショート(短絡)したときの安全性を評価するために、意図的にショートさせる試験です。

・過充電試験

 電池を充電する充電器は一定の条件で充電を止めるように設計されていますが、充電器が故障した場合などを想定して、充電し過ぎたときの安全性を調べる試験です。

・強制放電試験

 電池を充電器にプラスとマイナスを逆に接続した場合、電池が強制的に放電されることになります。そのときの安全性を調べる試験です。過放電試験とも呼びます。

・自然落下試験

 電池を落下させたときの安全性の試験です。

・加熱試験

 電池がファンヒータのそばに置かれた場合など、電池の温度が異常に高くなったときの安全性を調べる試験です。

(3)リチウムイオン電池の安全性規制

 特にエネルギー密度の高いリチウムイオン電池は、電気用品安全法の電気用品に指定され、法律で安全性の技術基準が定められています。技術基準は、従来のJIS規格(JIS C 8712)に加えて、より厳しい条件での試験を課した新たなJIS規格(JIS C 8714)を基に定められています。JIS C 8714では3つの試験が新たに採用されています。

・強制内部短絡試験

 電池を分解し、異物(ニッケル製の小片)を挿入し、外部から圧力を掛けて、強制的に短絡させる試験。電池内に導電性の異物が混入した場合、電池内部で短絡が生じ、激しい発熱に至ることがあります。この試験は、たとえ内部短絡が生じたとしても、発火や破裂に至らないことを確認する試験です。

図2 強制内部短絡試験 図2 強制内部短絡試験

・組電池の落下試験

 電池を電池使用機器、またはそれを模擬したものに装着し、落下させる試験。機器の構造や電池の配置によっては、落下させた場合に電池が衝撃を受けやすいことがあるため、電池単体ではなく、機器に電池を装着した状態で、安全性の確認を行うものです。

・過充電保護の確認試験

 リチウムイオン電池は、ある電圧を超えて充電されると、内部短絡などが発生した場合に電池が発熱、発火など危険な状態になる可能性が高まります。電池が充電電圧の上限を超えないように、組電池または機器に過充電保護機能が備えられているかを確認する試験です。

(4)電池の使用上の注意

 上述のように、電池の安全性や機器の安全性については、機構面での工夫や、各種安全性試験で確認されています。しかし、使用者自身が電池を正しく使わなければその効果も完全ではありません。電池を安全に使用するための注意事項の一部を示します。

・異なる種類、銘柄の電池、新旧の電池を交ぜて使わない

 電池は種類、銘柄によって容量や性能が異なり、これらを交ぜて使うと、過充電や過放電といった状態となり、十分な性能が得られないだけでなく、電池が発熱するなど、安全面でも危険です。同じ電池であっても新品と使用途中あるいは使用済みの電池を交ぜて使ったり、二次電池では充電の状態が異なるものを交ぜて使わないでください。

・電池を分解、改造しない。また、強い衝撃を与えたり、加熱しない

 電池の内容物には酸やアルカリ、有機溶液など化学薬品が使用されているため、分解して外部に漏れると危険です。また、傷つけられた電池がショートして発熱する可能性もあります。また、外部から衝撃を与えたり、熱を加えると電池が発熱することがあり危険ですので避けてください。

・電池をショート(短絡)させない

 電池を裸のままでポケットやかばんなどに入れると、ネックレスやヘアピン、鍵などと接触してショートする危険があります。ショートにより大きな電流が流れると、電池が発熱する原因となります。

図3 電池の使用上の注意 図3 電池の使用上の注意

・乾電池やリチウム一次電池などの一次電池は充電しない

 二次電池は充電ができるように安全面の工夫がなされていますが、一次電池はそのような構造となっていません。無理やり充電すると事故の原因となりますので、決して充電しないでください。

 機器付属の充電器はそれぞれの電池に調整し、確認された状態になっています。正規でない充電器を使った場合には、電池との調整が十分に取れておらず、危険な場合があります。また、正規でない模造品や改造品の電池も、充電器との調整が十分に取れていない場合があるので、注意が必要です。

図4 一次電池を充電しない 図4 一次電池を充電しない

 そのほか、細かな注意点は、取扱説明書、メーカーのホームページ、(社)電池工業会のホームページなどで確認し、正しく使うようにしてください。

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