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電気自動車「シボレー・ボルト」を解剖、電力システムの秘密に迫る製品解剖(1/3 ページ)

General Motorsのプラグインハイブリッド車「Chevrolet Volt(シボレー・ボルト)」を3日間かけて解剖し、その特徴である電力システムを分析した。その心臓部は288セルのLG Chem製リチウムイオン二次電池パック、頭脳はインバータモジュールに収められた日立製の制御ボードである。

» 2012年06月08日 19時32分 公開
[Rick DeMeis,Automotive Designline]

 エンジニアとして働いていると、新たな学びが多いけれども、“単純に楽しい”という仕事に巡り合えることがある。

 John Scott-Thomas氏とAl Steier氏の2人にも、そうした幸運が訪れた。General Motors(GM)が2011年に米国市場に投入したプラグインハイブリッド車「Chevrolet Volt(シボレー・ボルト)」を解剖し、その動作原理に迫るとともに、この新型車に開発エンジニアたちが投入した技術を分析するという仕事である。

 Scott-Thomas氏は、米EDN誌と同じくUnited Business Mediaの傘下にある技術情報サービス企業のUBM TechInsightsでプロダクトマーケティング担当マネジャーを務める。Steier氏は、エンジニアリング分野のコンサルティング企業であるMunro & Associatesにシニアアソシエイトとして所属している。

 この2人は3日かけてボルトを分解し、このプラグインハイブリッド車について多くのことを学んだ。本稿では、読者の皆さんとその成果を共有しよう。

バッテリーパックをT字型に収める

 まずは、プラグインハイブリッド車の中核要素であるバッテリーに注目しよう。シボレー・ボルトは、288セルのリチウムイオン二次電池をまとめたバッテリーパックを搭載している。4個のモジュールに分かれており、後席の下にある空間と、前席と後席の間にあるトンネル状の空間にまたがって、T字形にはめ込まれている(図1)。これら4個のモジュールは、棒状の導体(バスバー)で相互につながっており、遮断用導体(サービスディズコネクト・バー)によってバッテリーパックの電極に接続されている。

図1 図1 シボレー・ボルト解剖の様子 重量170kgのリチウムイオンバッテリーパックが、シボレー・ボルトの心臓部だ。ボルトに搭載されたシステムとソフトウェアは、このバッテリーパックを監視/制御することで、長期間にわたって使用できるように健全性を維持する役割を担う。出典:Munro & Associates

 このバッテリーパックは、プラスチック製ケースに入ったブレード状の薄板に物理的に分離されており、各薄板にリチウムイオン電池のセルが2個ずつ収められていた。これら2個のセルの間には冷却フィンが挿入されており、5系統の冷媒用導管が通っている。電気的に見ると、3個のセルが並列接続されて1つのグループを形成し、そのグループを96個、直列に接続することで、バッテリーパック全体としては288セルで16kWhの容量を確保し、360Vの電圧を生成する仕組みだ。バッテリーの寿命をなるべく延ばすための工夫も採用した。すなわち、バッテリーが満充電や完全放電に至らないように制御し、フル容量の半分程度に相当する10.4kWh分だけを利用する。

 このバッテリーは、韓国のLG Chem(LG化学)の製品だ。正極材料にスピネル型結晶構造をとるマンガン酸リチウムを使うタイプである。ただしGMはコバルト系材料を用いるバッテリーの技術ライセンスをUS Argonne National Lab(米国立アルゴンヌ研究所)から取得しているので、近い将来、バッテリーを現在のタイプからニッケル・マンガン・コバルトを使うタイプに切り替えることも予想される。

 ボルトは4系統の冷媒回路(液体循環導管)を搭載しており、バッテリー冷却用の冷媒回路はその1つである。残る3系統の冷媒回路は、1つがガソリンエンジン用、もう1つが電動モーターと発電機のための2個のインバータ用、最後の1つがプラグイン充電向けのパワーコンバータ用だ。これら4系統の冷媒回路は、それぞれが独立にコントローラとラジエータを備えている。

 バッテリーの冷媒回路は、単にバッテリーを冷やすだけではない。動作温度が最適範囲を下回ると、バッテリーを加熱する機能も備える。その後、温度が過剰に上昇しないように、冷却して調整する。ボルトでは、車が動いていないときもコントローラが冷媒回路を制御し、気温が高い場合にバッテリーが熱くなり過ぎたり、気温が低い場合にバッテリーが冷え過ぎたりしないようにしている。この制御を行うために、車を使用していないときはボルトを外部充電器につないでおくことで、バッテリーの放電を防ぐ。

 バッテリーパック用の冷媒回路を確認したところ、配管の接合部はホースクランプでとめられていた。この事実から、このボルトが限定生産車であることが分かる。大量生産車ならば、溶接で接合することが可能なはずだ。バッテリーパックを固定するボルトには、それぞれに3人の検査員の検査マークが刻印されていた。このことは、バッテリーパックの性能と品質を確保するために、組み立て工程で詳しい検査が施されていることを示すものだ。実際、このバッテリーパックはボルトの心臓部であり、8000米ドルものコストを占めている。

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