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新規格USB3.0、計測面ではどう変わった?高速シリアル・インターフェイス入門(5)(4/4 ページ)

» 2012年06月19日 15時43分 公開
[辻 嘉樹/レクロイ・ジャパン,ITmedia]
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コンプライアンス・パターン
 上記のコンプライアンス試験で使うコンプライアンス・パターンが規定されていますが、USB3.0ではPCI Express同様に、コンプライアンス・パターンの発生に特別の機器を必要としません。送信レーンが抵抗で終端されていれば自動的にチップがコンプライアンス・モードに入りコンプライアンス・パターンを発生するように規定されています。

 しかしながら、PCI Expressとは異なり、多様な試験に対応するためにCP0〜CP8まで9種類のコンプライアンス・パターンが用意されています。上記の状態で発生されるのはCP0と呼ばれる疑似ランダム信号です。CP7はデエンファシス波形の例で示したように、非常に遅い周期のクロックパターンです。

 CP1は0101パターンで、最も高い周波数成分を持つクロックパターンです。このように多くのコンプライアンス・パターンを持つUSB3.0のデバイスから適切なパターンに切り替えるには、LFPS(Low Frequency Periodic Signaling)と呼ばれる信号が用いられます。この信号は図11に示したように、Serial ATAのときに示したOOB信号によく似た構造を持っています。

図11 USB3.0のLFPSパターン 図11 USB3.0のLFPSパターン

 ここで示したLFPSはPolling.LFPSと呼ばれるものですが、コンプライアンス・パターンの切り替えにはPing.LFPSと呼ばれるものが用いられます。データ・ジェネレータからコンプライアンス・モードに入ったデバイスにPin.LFPSを送ると、コンプライアンス・パターンが順番に切り替わる仕組みになっています。

レシーバ・テスト
 USB3.0では、レシーバの試験を積極的に行うことにしていることも特徴の1つでしょう。これは、Serial ATAで行われているジッタ・トレランス・テストに準じたものといえるでしょう。いままで述べてきたように、USB3.0では伝送中に大きな減衰とISIの発生が想定されており、レシーバ内ではイコライザによる信号品質の改善が行われることが前提となっているために、実際のレシーバのビットエラーレートを計測して評価を行うことが求められています。

 レシーバのビットエラーレートを計測する場合には、レシーバにジッタなどのエラー要因を付加した疑似ランダム・パターンを送り、レシーバで起きるエラーをカウントします。一般的には、レシーバをループバックと呼ばれるモードにしてレシーバから送られてくる信号のエラーを評価します。図12に、ループバックの概念を示します。

図12 ループバックの概念 図12 ループバックの概念

 エラーが起きるのは、レシーバのデテクタの部分です。デテクタの出力データを使ってそのままシリアライザから信号を出力するのがループバックと呼ばれるものです。デテクタでエラーが起きればエラーのままデータ返信されるので、デテクタのエラーの有無が外部の機器で判定ができます。この方法でエラーを検出しながら、レシーバの入力信号のジッタ量を変化させてジッタに対する耐性を調べるのがジッタ・トレランス・テストです。

 このように、レシーバのエラーの有無を外部の機器(エラー・デテクタ)を使って判定する方法が現在は主となっていますが、USB3.0のデバイスにはユニークな機能が実装されていて、別の方法でもエラー検出ができるようになっています。それは、レシーバの中にエラー・デテクタを内蔵しているのです。開発当初は外部でエラーを検出する方式に対応したUSB3.0用の機器がなかったため、エラーをレシーバ内部のエラー・デテクタで検出し、その結果を読み出すという手法が用いられていました。現在もこの方式は有効とされていて、外部でエラー検出ができない場合に用いることが許されています。

 なお、一般的にジッタ・トレランス・テストに用いられるBERT(Bit Error Rate Tester)は、データ・ジェネレータとエラー・デテクタが一体になったものですが、実際に試験を行うには、あらかじめ被試験デバイスをループバックのモードにする必要があります。これには被試験デバイスとUSB3.0で通信を行い、ループバック・モードにする必要があるので、従来はBERTとは別の機器を使用する必要がありました。しかし、最近USB3.0用には、BERTにUSB3.0の通信機能を持つ機器が発表され、より簡便に試験ができるようになっています。

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