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LEDドライバから学ぶ コンバータ部のスイッチング回路超入門! イチから覚える電源回路(6)(2/2 ページ)

» 2012年06月28日 11時44分 公開
[梅津 秀恭/ネクスト・ディメンション,ITmedia]
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 次に、図2においてFETのON時にスパイク状の電流が流れていることに着目します。これは先ほどダイオードのリカバリ電流であるといいましたが、これがコンバータの動作周波数の上限を決めている1つの要因です。近ごろはこのリカバリ電流が小さいと同時に電流の変化が緩やかな、いわゆるソフトリカバリダイオードなどが自由に使えるようです。ダイオードを選定するときにはこの性能をしっかり確認することが必要です。このような回路に、安いからといって整流ダイオードを使ってはいけません。

 また、このアプリケーションのように瞬時電流検出の構成ではFETがONした瞬間ダイオードのリカバリ電流を検出し、FETをOFFしたのでは何の役にも立たないことになってしまいます。このためダイオードのリカバリ電流が落ち着いてしばらくの間(TMASK)は電流検出をしないようにするなどの工夫が必要です。さらにこの工夫だけでは十分ではなく、入力電圧Edが最大値のときにON時間が(TMASK)よりも長いことを確認しておくことが必要です。そうでないと、制御されるべき電流が本来の検出レベルを超えてしまうことになり、制御不能となります。

ダイオードリカバリ電流iR 図3 ダイオードリカバリ電流iR

 (1)式から

     ONmin=OFF×Dmin/(1-Dmin)>TMASK
     Dmin=VLED/ηVdmax

 を確認しておくことが必要です。

 最後に、入力電圧が負荷電圧に近いような低い電圧(Ed≧VLED)のときには、ON時間が極端に長くなる場合が生じます。この場合、考えている周波数帯域を外れることになり、部品の選定条件を満足しないこととなります。この場合は、入力電圧の値が一定値を下回ったときに電流指令値をゼロにするなどの工夫が必要となります。

 ダイオードDには最初Idが流れているときにスイッチをONすると、図3のような電流がダイオードに逆向きに流れ、スイッチを通して電源に帰ります。iRの形はダイオードの種類により図のような違いがあります。ソフトリカバリは高速、ハードリカバリは低速で、整流ダイオードなどはハードリカバリの部類で使い分けが必要です。

 Buckコンバータは図4に示すような回路があり、よく目にする回路です。いずれもDC/DCコンバータとして多用されています。

Buckコンバータ回路の例 図4 Buckコンバータ回路の例

 図4の左の回路は図1のFETの位置を変えたものです。グランド共通の用途に用いられます。図4bは大きな容量に適しており、負荷と電源を変圧器によって電位分離することができます。これらは出力電圧を一定に制御する構成です。市販のコントローラはスイッチング周波数を固定するものが大半です。インダクタのリセット条件の制約から入力電圧の適用範囲には制約があることはもう自明でしょうが、注意が必要です。

 図4の右の回路は変圧器を使用した例です。変圧器は片振れの電圧が印加されるので、磁束のリセットが必要です。図のように変圧器の1次側に励磁リセット用の回路を必要とします。

 次回はこのインダクタのリセット動作を積極的に利用するFly Back型について勉強しようと思います。

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