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» 2012年07月03日 09時30分 UPDATE

無線通信技術:4Gの時代はもう来たのか、モバイルで1Gビット/秒実現へ (1/4)

現在のモバイル通信の目標は、IMT-Advancedで規定されている。静止時に1Gビット/秒、高速移動時に100Mビット/秒というその目標をどうすれば実現できるのだろうか。LTE-Advancedを通過点として、創造的なアプローチを生み出す取り組みが続く。

[Janine Love,EDN]

 巧みな宣伝活動やブランドイメージの売り込みによって、モバイル通信の一般ユーザーは「既に世の中が4G時代に入った」と認識しているだろう。確かに4G/LTEで、モバイル端末の性能はかなり改良された。しかし、それはまだ進化の途中である。性能を限界まで押し上げ、後ほど紹介する「IMT-Advanced(International Mobile Telecommunications-Advanced)」が規定するレベルに少しでも近づくよう、設計者の努力が今も続いている。

 多くの場合、通信速度の制約条件は利用可能な周波数帯域幅にある。連続した幅広い周波数帯域が利用できれば話は比較的スムーズだ。しかし現実には、周波数帯域の整理統合は、政府が対応しなければ進まない。それまでは、開発者が創意工夫を凝らしたアプローチで通信速度を向上させていく必要がある。エンジニアは最先端の可能性を探り、新しい技術や素材、手法を求めて努力を傾け、シミュレーションツールや試験・計測用のツールを性能限界まで駆使している。

 明るい展望もある。この分野のエンジニアのコミュニティーの全てが低電力端末や極めて多様な無線ネットワークにおいて最高の性能を実現しようと、共同で行動していることだ。モバイルの利用が急成長していることが背景にある。モバイル機器向けアプリケーションソフトウェア(いわゆるアプリ)のダウンロード数が1カ月当たり10億本を超え、2011年のメール送信本数は8兆本に達する状況であり、このような急速な増加に対応するには取り得る対策を総動員することが不可欠だ。

目標は1GbpsのIMT-Advanced

 IMT-AdvancedはITU-R(International Telecommunications Union-Radio Communication Sector、国際電気通信連合・無線通信部門)が規定した標準規格であり、世界中で利用できる規格として策定されている。この標準規格で最も注目が集まったのは、通信速度の目標が高速移動時に100Mビット/秒(bps)、静止時に1Gbpsとなったことだ*1)。物理層に対するIMT-Advancedの要求は、帯域幅が40MHz以上、周波数利用効率がダウンリンクで15bps/Hz、アップリンクで6.75bps/Hz、レイテンシがユーザーに対して100ms以下、制御系に対して10ms以下である。

*1) ITU-RのIMT-Advancedに関する公開情報ページ

 最新のLTE(Long Term Evolution)やHSPA+(High Speed Packet Access+)、EVDO(Evolution Data Optimized)Revision Bを利用した商用サービスは、従来の無線通信に比べて高いデータスループットを提供する。だがいまだ、IMT-Advancedの要求性能に適合する十分なレベルに至っていない。米Agilent Technologiesのワイヤレスマーケティング企画部門を率いるJung-ik Suh氏は、「IMT-Advancedの要求性能を実現するには、ダウンリンクに対して、より広い帯域幅や4×4レベルのMIMO*2)が不可欠だ」と言う。

*2) 4×4レベルのMIMOとは、トランスミッタとレシーバそれぞれが4個のアンテナを有するMIMO(Multiple Input/Multiple Output)をいう。

 一方で、ダウンリンク用として帯域幅100MHzの8×8MIMOを目指す研究も進行中である。しかし無線サービスプロバイダーが現実の環境でこの目標を達成するのは、まだ難しそうだ。

 帯域幅制限の問題を解決するアプローチの1つが、割り当てられた複数の周波数を組み合わせて、より大きな帯域幅を仮想的に作り出すキャリアアグリゲーション技術だが、この方式では複数のレシーバを並列に実装する必要がある。AgilentのSuh氏は、「このアプローチでも、IMT-Advancedのレベルに到達するにはなお多くの技術的な課題がある」と述べ、「現状が“真の4G”の性能レベルにあるのか、あるいはLTE-Advanced(LTE-A)のレベルにあるのかを断言するのは難しいが、多数の技術研究や開発が続けられていることから、目指すIMT-Advancedを実現する前に横たわるギャップは埋まっていくだろう」と続けた。

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