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» 2012年07月13日 16時43分 UPDATE

いまさら聞けないオシロスコープ入門(1):進化したオシロスコープを使いこなせる、 真のエンジニアになろう (1/3)

電子機器や組み込み機器などの開発において欠かすことのできないオシロスコープについて、その操作方法や概念をあらためて解説します。

[稲垣 正一郎,日本テクトロニクス]
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@IT MONOistで掲載された記事を転載しています



はじめに

 電気信号の挙動を見る目的で生まれたアナログ・オシロスコープは、それまでのどの装置より電気信号に対する観測力に優れ、多くの産業の発展に貢献しました。波形をデジタル値として処理し表示するデジタル・オシロスコープへ進化することによって、波形のパラメータ(振幅や周波数)を数値化する測定力を持ちました。その後もユーザーからの要求に応え続けることにより、今日のオシロスコープは「流れるデータの内容を吟味する」解析力さえ持つようになりました。

 用途の観点から見ても、「波形を観測しその性質を知る用途」に加え、「不具合原因を探るデバッグ用途」「波形の良否判定による自動化用途」「規格適合性を知るコンプライアンス用途」と、オシロスコープの用途は拡大してきました。

 今日のオシロスコープは、もはや波形を見るだけの装置ではありません。オシロスコープに満載された豊富な機能を活用するだけで、仕事の効率を大きく向上できる魔法の箱です。しかし、便利過ぎる機能を使うことに慣れ、オシロスコープの基本を押さえることを忘れては本末転倒です。

 本連載では「いまさら聞けないオシロスコープ入門」と題して、波形を正しく見せるために外せないポイントを説明します。これらのポイントを外せば、オシロスコープは正しい波形を表示できません。基本を押さえることにより、オシロスコープを真に使いこなせるエンジニアを目指してください。

 サンプリング・オシロスコープと呼ばれるオシロスコープは特殊な波形取り込み手法により、100GHzもの超々広帯域性能を持ちますし、通常のオシロスコープでもDSP(デジタル信号処理)を用いて、周波数特性の補正をするタイプは1GHzを優に超え20GHzまでもの超広帯域性能を持ちます。これらのオシロスコープはここでは論じません。本連載では約1GHzくらいの周波数帯域を持つオシロスコープに限ってお話しします。なお、特別の断りがない場合、「オシロスコープ」は「デジタル・オシロスコープ」を指すものとします。

同じ周波数帯域のオシロスコープで測れる?

 オシロスコープの垂直軸に関する最も大きなスペックは「周波数帯域」です。カタログばかりか、実機のフロント・パネル上にもしっかりと明示されています。100MHzとか1GHzとかオシロスコープの性能が示されています。

 さて、問題です。

 最高周波数帯域100MHzをうたうオシロスコープで繰返し周波数100MHz振幅1Vのサイン波を観測すると、どう見えるでしょう?

 答えは「振幅は1Vより小さく見える」です。理由は周波数帯域の定義の仕方にあります。エネルギーが半分、振幅が70.7%に低下した周波数をもって周波数帯域と定義します。つまり、周波数帯域と定められた周波数においては振幅が減少しているのです。よって、周波数帯域が100MHzぴったりのオシロスコープで観測すると、1Vの100MHz信号は0.707Vにしか見えません。

photo 図1 周波数帯域の定義の仕方を示したもの

 さて、また問題です。「最高周波数帯域100MHzをスペックでうたうオシロスコープで繰返し周波数100MHzのサイン波を観測すると?」

 答えは「振幅は70.7%より大きく見える」です。なぜならオシロスコープのスペックにおいて、周波数帯域は○○Hz「以上」と規定されているからです。つまり、周波数帯域は余裕を持たせてスペックするので、70.7%より小さく見えることはありませんし、ちょうどピッタリでもなく、70.7%より少し大きめに見えます。

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