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» 2012年07月18日 12時58分 UPDATE

いまさら聞けないデジタル技術の仕組みを解説:タッチするだけで高速データ転送――TransferJetとは (1/2)

USBなども使わずに、目の前にいる人とその場ですぐにデータ交換ができたら――こうした要望にも応えてくれる、新しい近接無線転送技術“TransferJet”。TransferJetは、屋外でも家の中でも、専用のモジュールが組み込まれた機器同士をタッチするだけで、高速なデータ交換ができます。

[上口 翔子,@IT MONOist]
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@IT MONOistで掲載された記事を転載しています



登場人物の紹介

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乙女
文系女子

デジタル製品に興味はあるが、細かいスペックの話をされるとよく分からない。結局、デザイン重視で選びがちになるが、どうせ買うなら、きちんと製品の性能を理解して自分に合った良い物を買いたいという思いがある


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ムサシ
理系男子

自称デジタル人間。スケジュール管理に紙なんて論外。デジタル製品のことなら、細かいICの隅々まで、何でもこい。基本的には物静かだが、得意分野となると熱く語り始める。女の子に「すごい!」といわれると、やる気が出る



原理は誘導電界

 TransferJetは、提案者のソニーが開発したTransferJet Coupler(トランスファージェットカプラ。以下、カプラ)という専用アンテナがコア技術となっています。カプラは、電気信号を送ることで生じる誘導電界という現象を利用したもので、近距離での高効率なデータ伝送を実現しています。

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誘導電界……?


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イメージとしては、コンデンサという電子部品に電気を蓄えて、そのときに生じる電界を通して信号を伝えるという感じかな。近距離だからこそ利用できて、かつ伝送効率も高いといえる。


 物理層の転送レートは560Mbpsまで対応しており、プロトコルのオーバーヘッドなどの影響を考えても、実効レートで375Mbpsを達成しています。

構造、仕組み

photo 画像1 TransferJet Couplerの構成と原理(提供:ソニー)
Z軸方向に縦波を発生させる

 カプラは、画像1のように結合電極、共振スタブ、グランドで構成されています。共振スタブに信号が入力されると、結合電極に電荷が蓄積され、その電荷と同等の仮想電荷(イメージ電荷)がグランドに発生。それらの電荷によって微小電気ダイポール(双極子)が構成されます。最終的に微小電気ダイポールが縦波の電界を通して、受信側のカプラに伝わり、データ伝送が完了します。

 通常、電波は横波となっていますが、横波は偏波という特性を持っており近づけるアンテナの向きによって受け取るエネルギーは大きく変化します。一方で、音波と同様に進行方向と平行に振動する縦波はアンテナの向きに依存しないため、データ伝送の際にも安定した性能(高効率)を発揮します。

 また、カプラは従来のアンテナと比べ、近距離では高い性能を発揮しながらも、離れると急激に減衰します。こうした特性からも、タッチ(近距離接続)するとデータ交換ができ、離すと終わるという分かりやすい操作を実現しているといえます。

photo 画像2 TransferJet Couplerと従来アンテナの比較(提供:ソニー)
距離が近いほど、高い伝送能力を発揮する

TransferJetの特長

 以下、TransferJetの主な特長を列挙します。なお、現在はコンソーシアムで規格策定中のTransferJetですが、「誰でも使える簡単な無線」をコンセプトに商品化やインフラまわりの整備が進められています。

  • タッチするだけの分かりやすい操作
  • ネットワークにつながらず、刹那的に情報を得られる
  • タッチした相手にのみ、1対1でデータが伝送される
photophoto 画像3 TransferJetの採用例
市販デジカメを使用して、テレビへ画像データを転送するデモンストレーションの様子。デジカメをデモ用の装置上に乗せると、わずか数秒で数十枚の画像データが転送された
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携帯で撮った写真なんかはこれまでも赤外線通信で送れたけど、それとは何が違うの?


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TransferJetの売りは“カンタンな高速伝送”ができること。4.48GHz帯域の周波数を利用していて、実行速度は先ほどもいったように375Mbpsなんだ。USB2.0と同じくらい速さでデータが送れるんだよ。あと、通信のパワーも低いから、消費電力も低い。


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