メディア

電圧制御のプログラマブル定電流源、デジタルコントロ−ルも容易オペアンプ+トランジスタ“ちょい足し”回路集(5)(1/2 ページ)

オペアンプICに個別トランジスタを“ちょい足し”して性能を高めたり機能を拡充したりできる定番回路集。今回は、以前に紹介した定電流源回路にもう一工夫を施し、出力電流の大きさを外部から印加する電圧信号で調整できるようにします。電圧信号にD-A変換器のアナログ出力を使えば、デジタルコントロールも簡単に実現可能です。

» 2012年07月23日 09時30分 公開
[藤森弘己アナログ・デバイセズ]

この記事は会員限定です。会員登録すると全てご覧いただけます。

「オペアンプ+トランジスタ“ちょい足し”回路集」連載一覧

今回紹介する回路の概要

実現できる機能 定電流源の出力電流の大きさを、外部から印加する電圧信号で調整できる。
こんな場面で有効 出力電流調整用の電圧信号をD-A変換器を使って生成すれば、デジタル制御のプログラマブル定電流源を容易に実現できる。




 この連載の第1回目で、オペアンプICに個別素子のトランジスタを組み合わせた定電流源を紹介しました(図1)。その定電流源では、出力電流の大きさを次の方法で変更することができます。それは抵抗R1の値を変えるか、基準電圧源ICの品種を変えてリファレンス電圧を異なる値に設定するかです。ただ、いずれの方法も部品の交換が必要になるので、いったんシステムに組み込んでしまうと基本的には出力電流を変えられません。

 そこで今回は、外部の可変電圧源から電圧信号を受け、その大きさに応じて出力電流を調整するプログラマブルな定電流源を紹介しましょう。以前に紹介した図1の回路を元に、可変電圧源によるプログラマブル機能を追加します。可変電圧源としてD-A変換器を用いれば、デジタル値で出力電流の大きさを変更することも可能です。

図1 固定出力の定電流源回路 図1 固定出力の定電流源回路 連載の第1回目で紹介した回路です。なおこの図では、電源デカップリングなどは省略しています。 (クリックで画像を拡大)

リファレンスを可変にできないか?

 もう一度図1を眺めて、可変にする方法をちょっと考えてみてください。簡単な方法としてすぐに思い付くのは、基準電圧源ICが作り出すリファレンス電圧を図2のようにポテンショメータ(可変抵抗器)で分圧するという方法です。ポテンショメータのトリマー位置(ボリューム)を調整すると、オペアンプICに加わるリファレンス電圧が変わり、定電流源の出力電流が変化します。

図2 ポテンショメータを使って可変出力を実現 図2 ポテンショメータを使って可変出力を実現 基準電圧源ICが発生するリファレンス電圧をポテンショメータで分圧し、その分圧比を変える方法です。こうすればオペアンプに加わるリファレンス電圧が変化するので、出力電流の可変機能を実現できます。 (クリックで画像を拡大)

 ここでポテンショメータにデジタルインタフェースを備えた電子式の可変抵抗を選べば、デジタル制御の定電流源として使えます。でもこの方法は、本連載の趣旨である「オペアンプICに個別トランジスタを“ちょい足し”して性能を高めたり機能を拡充する」から少し外れてしまいますね。そこで今回紹介するのが、図3の方法です。

図3 電圧でプログラムできる可変定電流源 図3 電圧でプログラムできる可変定電流源 電圧入力VINの値を調整すると、定電流源の出力電流IOUTの大きさが変わります。VINにD-A変換器の電圧出力を加えて変化させれば、デジタルインタフェースのプログラマブル定電流源として機能させることが可能です。 (クリックで画像を拡大)

 図3の元になった図1の回路では、第1回目で説明した通り、定電流源としての出力電流の大きさをR1にかかる電圧で設定していました。この電圧は、「電源電圧VDDを基準にして、そこから何V」という値です。これを外部の可変電圧源から受けた電圧で置き換えるには、「グラウンド電位(0V)を基準にして、そこから何V」という電圧を、「電源電圧VDDから何V」という電圧に変換しなければなりません。そのようにできれば、一般的なD-A変換器の出力もグラウンドを基準にそこから何Vという電圧値ですから、上述のようにD-A変換器を可変電圧源として使って、定電流源の出力電流を変更することが可能になります。

 図3では、新たに追加したオペアンプA2とトランジスタQ2、抵抗R3でこれを実現しました。以下、この回路の動きを詳しく追ってみましょう。

電圧入力に出力電流を比例させる

 A2は、出力点(Q2のエミッタ)の電圧が入力電圧VINと同じになるようにQ2を制御します。その電圧はR3に印加され、それによりエミッタにはIEVINR3の電流が流れます。

 このときQ2のコレクタ電流ICは、ほぼエミッタ電流IEに等しく、ICIEと見なせます。厳密には、ICIEからベース電流IBを差し引いた値(ICIEIB)になりますが、Q2に電流増幅率の大きいダーリントン接続のトランジスタを用いているため、IBの値はごく小さく、無視できるからです。従って、IEVINR3かつICIEですから、ICVINR3となり、ICA2の入力電圧であるVINに比例することが分かります。

 ここで、視線を図3の上の方に移してください。抵抗R2にはQ2のコレクタ電流ICにほぼ等しい電流が流れ(厳密にはICにオペアンプA1のバイアス電流が加わります)、IC×R2の大きさの電圧降下VPが発生します。VPVDDを基準とした値であり、A2の入力電圧VINに比例します。つまり、上述の通りICVINR3なので、VPIC×R2VIN×R2R3になるわけです。

 図3の定電流源の最終的な出力電流IOUTは、第1回目と同じ原理で、ほぼVPIBに等しくなります(厳密にはVPR1からQ1のベース電流を差し引いた値)。IOUTVPに比例し、VPVINに比例するわけですから、結局はIOUTVINに比例するわけです。つまりこの回路は、「グラウンド電位を基準にした電圧」であるVINを変えることで、出力電流IOUTを変化させられる、プログラマブルな定電流源として機能します。

 先に述べたように、D-A変換器の電圧出力をA2の入力につなげば、出力電流をデジタル制御することが可能になります。例えば、「4〜20mAの範囲で出力電流が可変」という仕様の定電流源を作ることが可能です。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

RSSフィード

公式SNS

EDN 海外ネットワーク

All material on this site Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
This site contains articles under license from AspenCore LLC.