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» 2012年08月01日 09時30分 UPDATE

Wired, Weird:80年代末期の“亡霊”に注意、現代の修理業務でも遭遇率高し (1/2)

筆者の経験では、電気製品が不良になる原因は十中八九、電源部にある。特にスイッチング電源やモータードライバでは、ある種の部品が共通して問題になる。1988〜2000年にかけて製造された電解コンデンサだ。その時期の電気製品が故障したら、これを真っ先に疑ってほしい。今回は、筆者が実際に遭遇した事例を挙げて説明しよう。

[山平 豊,内外テック]

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 筆者は、警報機器や半導体製造装置のメーカーで回路設計や基板の不良解析を長年にわたって経験した後、今年3月に現職の企業に移った。新しい職場はメカトロニクスの専門商社であり、4月からは電子機器やその内蔵基板の修理業務に従事している。この仕事には、過去の回路設計や不良解析の経験が大いに役立っている。

 修理業務のつらい所は、手元に回路図が無い製品でも何とかして直さなければならないことだ。それでも、自分自身で設計したり、検査の経験があったりする製品ならば、回路の特性が分かっているので修理はさほど難しくない。しかし全く未知の製品を修理する場合は、事前に万全の準備を整えてから着手しないと、かえって状態を悪化させ、壊してしまうことになる。

 未知の製品の修理にトライするのは無謀なことだと心得ているが、自分の経験を生かせる仕事であり、エンジニアとしてはファイトが湧いてくる。

モータードライバの基板 筆者が修理を手掛けたある製品の内蔵基板の一部。モータードライバの基板で、ここに不良の原因が潜んでいた。

 筆者はこの業務に就いて2カ月ほどの間に、10種類近くも未知の製品の修理にトライした。残念ながらまだ完璧に仕上がった製品はなく、客先から評価結果の回答を待っているものがほとんどである。無手勝流の修理であり、成果を出すにはもう少し時間がかかりそうだ。

 しかし、過去の経験から、電子機器の中で部品が壊れやすい箇所は明確に分かっている。すなわち、電気製品が不良になる原因は、十中八九が電源部にある。筆者が手掛けた故障品は、いずれも電源回路を詳細に確認し、電源制御ICのデータシートを熟読して回路構成や主要部品を把握し、通電後の電源電圧波形を観測することで不良箇所をほぼ特定できた。

 そこで今回は、この経験を皆さんと共有すべく、電源部を修理する際に注意すべき点を具体的な事例を挙げて説明する。

80年代の“亡霊”がまだそこに!

 電子機器の電源部であるスイッチング電源やモータードライバでは、共通して問題になる部品がある。電解コンデンサだ。

 特に電子機器の製造時期が一番の鍵であり、1988〜2000年にかけて製造されたものは格段の注意が必要である。理由は、その時期の電解コンデンサに電子部品業界で“禁句”となっている「第四級アンモニウム塩」の電解液が使用されているからだ。

 この電解液には功罪の両面がある。プラス面では、電解コンデンサの等価直列抵抗(ESR:Equivalent Series Resistance)を大幅に引き下げる効果をもたらし、スイッチング電源の性能を飛躍的に向上させた。一方でマイナス面の影響も大きく、強アルカリの電解液が電解コンデンサの外部へ漏れるという事象が起きた。その結果、1995〜2000年ころにかけて、さまざまな電子機器で電源部が焼損するなどの大きな事故を引き起こしてしまったのである。

 しかしこの問題は、公式な場ではほとんど取り上げられていない。それが“禁句”たるゆえんでもある。結局この事故の後、コンデンサのメーカーはプリント基板のレイアウト時の注意事項として、「電解コンデンサの下や周囲にはパターンを配置しない」ことを推奨し、それが一般的なルールになってしまった。現在では、これはパターン設計の常識になっているようだ。

 今でも、第四級アンモニウム塩の電解コンデンサは、古い装置の基板や小型の電気製品の中で数多く働いており、時間経過で電解液が漏れる。そして漏れた強アルカリの液が電解コンデンサの周囲に広がって、いろいろな不具合を引き起こす。

 厄介なことに、この液漏れは装置の電源を切っても止まらない。例えば、長期連休前に装置の電源を切って、連休後に電源を再通電すると、装置が立ち上がらなくなるといった問題が多発した。これは、連休中に漏れ出た電解液が基板上に広がって回路不良を引き起こしたからだ。このため、連休中も電源を切れないという事情を抱えた装置がこの現代でもたくさんある。

 製品を修理する時は、まずその製造時期を調べ、実装されている電解コンデンサの型名を詳細に確認してみてほしい。第四級アンモニウム塩を利用した電解コンデンサが使われていないかどうか、それを調べることから始める必要がある。

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