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大切なことは(全部じゃないけどある程度)ピン情報が教えてくれる英文データシートを“読まずに”活用するコツ(3)(1/2 ページ)

半導体製品の英文データシートを攻略するには、ページを埋め尽くす英語の長文に真正面から切り込むのではなく、まずは数字と回路図・ブロック図に注目して「自分の設計に使えそうか」のアタリをつけるのがうまい方法です。次は、ピン配置を示す図と、ピン機能をまとめた表をチェックして、製品への理解をさらに深めましょう。

» 2012年08月06日 09時30分 公開
[赤羽 一馬,マキシム・ジャパン]

「英文データシートを“読まずに”活用するコツ」連載一覧

 データシートやアプリケーションノートなど、半導体製品を使って電子回路を設計する際に避けて通れない英文の技術資料。英語アレルギーのエンジニアでも、コツをつかめば今までよりも短い時間で必要な情報を引き出せるようになります。

 そのノウハウをお伝えする本連載も第3回目に突入です。これまでに、「文字よりも数字を見る」(第1回目)、「ブロック図と回路図に注目する」(第2回目)というワザを紹介してきました。英文のデータシートを埋め尽くすアルファベットの森に真正面から踏み込む道を避けて、数字や図という、直感的にイメージをつかみやすい情報源を足掛かりにしたわけです。数字からはその半導体製品を「自分の選択肢にすべきか?」を読み取ることができ、図からはその半導体製品の大まかな機能を把握することができました。

ワカレミチ ニ キタ。ドウシマスカ?

 今回は、次のステップに進みましょう。今、我々の前には2本に分かれた道があります。もし英文の技術資料に真正面から挑むならば、いばらの道をゆかねばなりません。英語の文章が大量に待ち受ける「Detailed Description」や「Application Information」の項目に足を踏み入れ、読み込んで、その半導体製品の機能や動作を詳細に確認していく作業です。

 もちろん、これもいつかは征服すべき道でしょう。でも、その脇にはもう1本の回り道があり、しっかり先につづいています。英語に対するアレルギー反応をなるべく抑えつつ、着実に歩を進める――そのための道です。ならば、我は行かん、その道を!

 ということで、今回の道しるべはこれ、「大切なことは(全部じゃないけどある程度)ピン情報が教えてくれる」です。具体的には、「Pin Configuration(ピン配置)」と「Pin Description(ピン機能)」の項目からその半導体製品の理解を深めていくという方法です。こっちなら、いばらのように生い茂った英語の長文に足をとられることはありません。単語や決まり文句のような短文が下草のように地面から顔を出している程度。大丈夫、平気で踏みつぶせますよ。

ピン情報はブロック図とセットで見る

 一般に、半導体製品のデータシートに記載されたPin Configurationには、ピンの物理的な配置が図で示されています。その半導体パッケージにどういう配置で何本のピンが設けられており、各ピンの名称は何なのかが読み取れます。

ピン配置の記載例 ピン配置の記載例 半導体チップのデータシートには、ピンの物理的な配置を示した図(Pin Configuration)が記載されています。これは、汎用タイプの降圧型DC-DCコンバータIC「MAX5035」の例です。 (クリックで画像を拡大します)

 しかしこれだけでは、各ピンに与えられている機能までは分かりません。そこで確認すべきがPin Descriptionです。通常は、各ピンの番号・名称とともに、それぞれのピンの機能についてごく簡単な説明が短い英文で記述されています。英文と言っても、ほとんどが基本的な単語と表現ですので、「記号」的に理解できるレベルですから、アレルギー反応を起こす必要はありません。このピンはどこそこに接続してください、オープンにしておいてください、外付け部品として何が必要です……といった説明です。

ピン機能の記載例 ピン機能の記載例 Pin Configurationという項目には、ピンの番号と名称、機能(Function)の簡単な説明文が表形式で掲載されています。先に示した図と同様に、MAX5035の例です。 (クリックで画像を拡大します)

 ここで必要な作業は、前回お話ししたブロック図と、このPin Descriptionを照らし合わせることです。具体例として、汎用タイプの降圧型DC-DCコンバータIC「MAX5035」(クリックでPDF形式の英文データシートが開きます)を見ていきましょう。都合が良いことに、このデータシートではPin Descriptionとブロック図(Block Diagram)の両方が同じページに掲載されていますね。

ブロック図と突き合わせて確認する ブロック図と突き合わせて確認する MAX5035のチップ内部の構成を機能ブロックレベルで記述した図(Block Diagram)です。Pin Configurationと照らし合わせることで、理解が深まります。 (クリックで画像を拡大します)

 このICは、降圧処理を担うスイッチング素子のパワーMOSFETが集積されており、外付け部品が比較的少なくなっています。そのためもあって、Pin Descriptionにある英語の説明文は至って簡潔です。

 さて、最初に見て把握すべきところは、入力電圧(電源電圧)ピン「VIN」と接地ピン「GND」ですね。おや、もう1つ「SGND」というのもあるぞ、何だろう? ブロック図を見ると、電圧制御のロジック回路(図中のCONTROL LOGIC)から出ている接地用のピンのようだ。ふむ、分かった。Pin Descriptionではどう説明されている?

Internal Connection. SGND must be connected to GND.

 直訳すれば、「SGNDはIC内部の接続。GNDに接続しなければならない」。つまり、SGNDピンに電圧を加えたり、抵抗を接続したりするのはダメなんだな。……と、こんなふうに理解を進められます。

 さて少し本論からは外れますが、実際にデータシートに向かっていると、ここでちょっと引っかかりを感じる方がいらっしゃるかもしれません。例えば、「内部の接続って、何じゃ?」、「このピンはどこそこに接続しろって、何で?」といった具合です。半導体メーカーのFAEである筆者は、実際にユーザーの方からこのようなご質問をいただくことがあります。

 ただ、これは皆さんにはもしかしたら「半導体メーカー側にいる筆者として無責任だ」と捉えられるかもしれませんが、この辺りの疑問にとらわれすぎるのも考えものです。あまり突っ込んでも、得られるものは少なく、下手をするとパンドラの箱を開けるようなことになりかねません。皆さんの貴重な時間をつぎ込むのはもったいないので、ここはデータシートの説明を黙って受け入れて、次のチェックポイントに進みましょう!

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