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ノイズはコントロールするという考え方が大事超入門! ノイズ・EMCを理解しよう(3)(2/3 ページ)

» 2012年08月07日 12時30分 公開
[菊池浩一TDK]

EMC設計の基礎(各設計段階で実施すべき項目とポイント)

EMC対策部品を使う前に考えること

 ここで、タイトルにお気付きになったでしょうか? これまでノイズ対策という言葉を使ってきましたが、EMC設計となっています。趣旨は問題が起きた後対策するのではなく、最初から設計しましょうということをいいたいのです。

 それではEMC対策部品じゃなくてEMC設計部品では? と疑問を持たれている方、そのとおりですが部品は設計してくれませんので、対策部品としました。そこに意図はありません。

 話がそれましたが、すなわち最初からEMCを考えましょうということです。前項のノイズ対策の考え方(1)音を小さくするに記述しましたが、初めから大声を出さなくてもいいように設計しましょう、ということも重要な考え方の1つであり、初めから考慮すべき内容です。

 また、やみくもに音を表に出さないように家全体を覆ってしまうよりも、いま現在音が一番大きい部屋や場所はどこか、勝手に音を拾って広げてしまうスピーカーはどこか、また逆に周囲で口うるさい家……いや失礼、音に敏感な家庭はどこかを知っておく必要があります。 そうすることで適切な対策を打てるだけでなく、余計なコストを掛けないで済むということになります。

 ここからは多少専門的な話になってしまうので、理解することが困難になっていきますがご了承ください。上記の音の例えを本来のノイズという話に戻して、端的に説明していきます。具体的な詳細理由を書き始めると1冊の本ができてしまいますので、あくまでも一般的な話でイメージととらえていただければ幸いです。場合によっては相反する作用をするケースもありますので、ここから先の話はうのみにせず、そのケースに当てはめてみてください。

ノイズ源はどこだ

 電気的に一番音が大きい場所はどこでしょうか?  周波数が高い個所や電圧、電流が大きい個所がそれに当たります。電圧、電流が大きい個所はなんとなくイメージが付きますが、周波数が高い場所に注意が必要なのはなぜでしょうか?

 デジタルで考えると周波数は「1」「0」「1」「0」を1秒間に何回繰り返すかを表した数字になります。踏み台昇降を1秒間に10回する人と100回する人をイメージしていただければ、どちらがエネルギーを使うか皆見当がつくと思います(画像3)。

photo 画像3 踏み台昇降を1分間に10回する人と100回する人のイメージ

 また繰り返し周波数が同じならば、一般的にクロック(CLK)がノイズ源といわれています。なぜなら「1」「0」「1」「0」を規則正しく繰り返すからです。ノイズは同じ周波数が重なり合うと足し算になります。クロックは動作を正しく行うためのメトロノームのような役割があり、規則正しい周波数で常に動いています。また、「1」「0」「1」「0」を規則正しく繰り返すので周波数的には一番高くなります。

 それでは、データラインやアドレスラインはどうでしょうか? DDRは除いて通常信号の立ち上がりもしくは立ち下がりでデータやアドレスはデータを送受信します。それだけでクロックの半分の周波数になります。また「1」「1」「0」「0」など同じ値のデータが続くとまたさらに半分の周波数になります。それらは不規則に可変するので、1本当たりのノイズは分散され少なくなります(画像4)。

photo 画像4 CLKとデータアドレスなどのイメージ

 上記を考慮すれば、どこを重点的に検討しなければいけないかは分かってくるでしょう。単に信号だけではなくてそれらクロックを作っている発振子や発振器、高速動作をしているメインのCPUやメモリなども要注意です。

アンテナはどこだ

 音源の次にスピーカーです。電磁気的には、電磁ノイズを放射するアンテナが該当します。このアンテナ、スピーカーを見つける上で何が音を広げてしまうのかを知っていなければなりません。基本として以下のような個所を見つけて疑ってみてください。

  • ケーブル
  • グランドと密に接していない金属
  • フレームなどの大きな金属(開口面が大きい構造)
  • スリットがある金属
  • 金属同士のつなぎ目(結果的にスリットが形成される)
  • コネクタの金属フレーム

 などです。すべてがスピーカーとは限りませんが、そこに音を伝えてしまうと大音量を流してしまうことがあり得る個所となります。

 では、見つけた後どのようにしたらいいのでしょうか?

 実際の対策はこの後説明しますが、そのスピーカーに音を伝えなければいいのです。それがEMC対策部品の役目であり、EMC設計になります。

 EMC対策部品を使う前に、ノイズ源(音源)はどこか、アンテナ(スピーカー)はどこかをあらかじめイメージして部品を使わないと、部品点数が多い設計にもかかわらず、効果のない対策となります。 あまりに定性的で定量的ではないので怪しくなりますが、数式よりもイメージが肝心と考えています。

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