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» 2012年10月11日 07時30分 UPDATE

英文データシートを“読まずに”活用するコツ(5):いつかは通る道――長文セクションの読解は“順番”が鍵! (1/2)

今回は、「英文データシートを“読まずに”活用する」という連載のテーマを少し踏み外し、データシートの中でも特に豊富な情報が盛り込まれた――ただし英語の長文で――セクションにちょっとだけ触れてみましょう。データシートの内容は通常、ある“順番”に沿って記載されているので、必要なところをまず押さえるのがコツです。

[赤羽 一馬,マキシム・ジャパン]

「英文データシートを“読まずに”活用するコツ」連載一覧

 関東もすっかり秋めいてきました。でも、ついこの間まで厳しい残暑にヘキエキしていたのですから、身体が順応してくれません。その暑さを乗り越えるため!という大義名分を掲げて例年よりも(例年通り!?)たくさん摂取してしまったお酒も、今になってボディーブローのように効いてきました。季節は流れるように変わるのに、自分の体は流れに乗れずにしっくりしません(年齢のせい!?) 体調管理には注意したい時期ですね。

 さて本連載では「英文データシートを“読まずに”活用する」をテーマに、今まで電気的特性の項目や端子配列の表などから、英文の読解をなるべく避けつつICの機能を把握する手段について述べてきました。今回は連載のテーマを少しだけ踏み外して、データシートの中でも特に豊富な情報が盛り込まれた――ただし英語の長文で――セクションにちょっとだけ触れてみましょう。

 ここでもコツがあります。眺めただけでうんざりしてしまうような、何ページにもわたる英語の長文。ですがそれには、四季が巡るのと同じように“流れ”があるのです。正直に頭から読み進めようとするのではなく、その季節の流れを把握し、旬ごとに旨味のある部分を順番につまみ食いしていくのがうまい方法です。

データシートの流れを確認

 詳しい説明に入る前に、半導体製品のデータシートの一般的な構成を確認しておきます。データシートの記載事項の基本的な流れはメーカーによらずだいたい同じで、最初のページには、型名の他に、「General Description(概要)」や「Features(特長)」が書かれています。メーカーによっては、さらに「Typical Operating Circuit(標準動作回路)」やパッケージのイメージ図が載っているでしょう。そして、続くページで、「Electrical Characteristics(電気的特性)」、「Pin Configuration(ピン配置)」、「Pin Description(ピン機能)」が展開されるのが一般的です。

 その後、データシートの中盤に差し掛かると、英文の固まりともいえる「Detailed Description(詳細)」や「Application Information(アプリケーション情報)」のセクションがいよいよ登場します。ここが今回、挑戦するところです。

 エンジニアは日々の業務に忙殺されていますから、ここも一発、今まで連載で紹介してきたような回避手段を使って……とは言わずに、今回はちょっと踏み込んでみようではありませんか。読者の皆さんもそろそろアルファベットに慣れてきた頃だと思いますから!!

順番が大事です

 とはいえ、英語の長文の壁は高い。情報豊富な(言い換えれば英語だらけの)Detailed DescriptionとApplication Informationのセクションを効率良く攻略する鍵は、目を通す順番です。

 もちろん、データシートを提供するメーカー側は、「読み手がすぐに理解できる」ことを狙って作成していますから、書いてある順番通りに読んでもらえば、理解しやすいはずだ!と思っています。しかし、それも“片思い”になってしまうこともあるわけです。

肝は、やっぱり電源

 それでは、英語が得意でない我々はどこから読み始めればよいのでしょうか?

 やっぱり、一番大事なベース、つまり電源の仕様を最初に見る必要があります。例えば、どのくらいの容量のバイパスコンデンサが必要なのか? ローパスフィルタも入れた方がよいのか? さらに電源がアナログ電源とデジタル電源の複数系統に分かれている場合には、どのようなシーケンスが求められるのか? いくら定格や推奨動作範囲を守っても、ユーザーがこれらを守らなければ、ICは本来の性能を発揮できません。

 皆さんはこんな経験ありませんか? 「評価用のサンプルは2〜3個で大丈夫」と思っていたら、実際に評価する際に規定の電源シーケンスを守らずに電源を投入してしまい、ICが動作せずに電源装置の過電流保護が働く羽目になり、ICを壊してしまった……。恥ずかしながら、筆者はこのような失敗を何度もやらかしています。ということで、まずはこの電源供給の扱いを確認する必要があります。

 最近ではICへの機能集積化が進んでおり、デジタル回路とアナログ回路を混載する製品が増えています。そうした製品のうち、高い性能を引き出すような品種では特に電源をクリーンにする必要があるので、デジタル用電源、アナログ用電源、さらにロジック用電源を別々に供給することが求められる場合が少なくありません。

 例えば、TFT液晶パネル向けのガンマ補正用リファレンス電源IC「MAX9669」(クリックでPDF形式のデータシートが開きます)。この製品は、I2Cインタフェースで制御し、内蔵のD-A変換器で設定したアナログ電圧を、高駆動能力の内蔵オペアンプを介して、ガンマ補正電圧として外部に出力するICです。まさにアナログとデジタルのミックス、これは電子回路のちらし寿司や〜!……まだ冬も来ていないのに寒くなってきました……先に進みましょう。

複数系統の電源はシーケンスを押さえる

 このICの電源は、データシートの1ページ目にあるFunctional Diagramや終盤に記載されているTypical Operating Circuitで確認すると、「AVDD」、「DCDD」、おまけに「AVDD_AMP」と、全部で3系統もありました。

複数系統の電源を備えたアナデジ混載ICの例 複数系統の電源を備えたアナデジ混載ICの例 TFT液晶パネル向けガンマ補正用リファレンス電源IC「MAX9669」のデータシートに記載されたTypical Operating Circuitです。赤色の点線で印を付けたのが3系統の電源です。 (クリックで画像を拡大します)

 ここで、電源シーケンスが必要かどうか、データシートに説明が書かれているか探してみます。このとき、データシートの端から端まで目を通すのは大変なので、PDFのビューアに備わった検索の機能を使いましょう。電源シーケンスに関する記述では、「power-up(電源投入)」や「start-up(起動)」などの出現頻度が高いので、これらを検索ワードにすればよいでしょう。

 実際に検索してみると、この例では17ページにそれらしい項目がヒットしました。「Power-Up and Power-Down」という項目です。この部分、当たり前ですがぜーんぶ英語ですね!ワイルドですねぇ(海外メーカーの製品だからこれも当然ですが)。

PDFの検索機能を活用 PDFの検索機能を活用 MAX9669のデータシートを「Power-Up」で検索した結果です。検索機能は、うまく使うとお目当ての情報に素早く到達できます。 (クリックで画像を拡大します)
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