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セキュリティを高めた不揮発性FPGA、SEU耐性と待機時低消費電力もうたうMicrosemi SmartFusion2

Actelを2010年に買収してFPGA市場に参入したMicrosemiが、Cortex-M3コアを内蔵する不揮発性FPGAの新製品を発表した。高度なセキュリティ機能を特長として打ち出しており、ハイエンドの産業機器や、防衛・航空宇宙分野の機器、医療機器、通信機器などを狙う。

» 2012年10月12日 07時30分 公開
[薩川格広,EDN Japan]

 米国の半導体ベンダーであるMicrosemi(マイクロセミ)は2012年10月、ARMの32ビットプロセッサコア「Cortex-M3」をハードマクロとして集積する不揮発性FPGAの第2世代品「SmartFusion2」を発表した。同社が2010年に買収した中堅FPGAベンダーのActel(アクテル)が同年3月に製品化した「SmartFusion」の後継品である。

 製造プロセス技術を0.13μmから65nmに微細化し、ロジック集積規模や動作周波数を高めた他、FPGAに書き込む設計情報やFPGA上で処理・保持するデータを保護するセキュリティ機能を強化したり、待機時の消費電力を低く抑える機能を搭載したことが特長だ。Cortex-M3コアの動作周波数は、第1世代品の100MHzから166MHzに高まった。ハイエンドの産業機器や、防衛・航空宇宙分野の機器、医療機器、通信機器などに向ける。

FIT率ゼロのSEU耐性を確保

 SmartFusion2は、第1世代品と同様に、プログラマブルロジック領域の基本素子にフラッシュメモリ・セルを使う不揮発性FPGAである。フラッシュメモリは、放射線によるソフトエラーが発生しにくいという特長があるので、同社は従来から、大手FPGAベンダーが供給するSRAMベースの品種に比べてソフトエラーに対する信頼性が高いと主張してきた。

Paul氏 2012年10月11日に東京都内で開催した記者発表会で、MicrosemiのSoC Product GroupでVice President of Marketingを務めるPaul Ekas氏が説明した。

 SmartFusion2ではさらに、ソフトエラーの一種でメモリ・セルに保持するデータが不正に反転してしまうSEU(Single Event Up-set)を検出/訂正する保護機能を新たに盛り込んだ。FIT率(109時間当たりの不良発生率)はゼロだと主張する。「フラッシュメモリ・セルで構成するプログラマブル領域のみならず、スタンダードセルで実装するCortex-M3コアや各種の周辺回路ブロックにも全てSEU耐性を持たせた。第1世代品のM3コアは、SEU耐性を備えていなかった」(MicrosemiのSoC Product GroupでVice President of Marketingを務めるPaul Ekas氏)。

SmartFusion2の回路ブロック図 SmartFusion2の回路ブロック図である。フラッシュメモリ・セルで構成したブロック(紫色)も、スタンダードセルで実装したブロック(水色)も、いずれもSEU耐性を備えている。出典:Microsemi (クリックで画像を拡大)

 セキュリティ機能については、改ざんや模造などの不正行為から設計情報を保護するための検出機能や高強度の暗号化機能を搭載した他、FPGA上のデータを保護する機能として、サイドチャネル攻撃の一種である差分電力解析(DPA)を防止する機能などを取り込んだ。

SmartFusion2の特長 SmartFusion2の特長をまとめた。出典:Microsemi (クリックで画像を拡大)

 待機時の消費電力については、従来は低消費電力FPGA「IGLOO」にしか搭載していなかった「Flash* Freeze」と呼ぶ待機モードを新たに導入した。このモードに切り替えれば、消費電力を1mWまで低減できるという。「SRAMベースのFPGAに比べて、わずか1/100である」(Ekas氏)。

消費電力の比較 大手FPGAベンダーであるAlteraおよびXilinxの製品と、SmartFusion2の消費電力を比較した。青色が電源オン時に回路が静止している状態のスタティックな消費電力で、緑色が待機時の消費電力である。なお、電源オン時に回路が動作している場合のダイナミックな消費電力については、SmartFusion2と他社品は同等だという。出典:Microsemi (クリックで画像を拡大)

周辺回路ブロックも大幅拡充

 さらにSmartFusion2では、第1世代品を含む同社従来のFPGA群が備えていなかった各種の周辺回路ブロックを新たに集積した。具体的には、5Gビット/秒動作の高速シリアルトランシーバ(SERDES)や、デジタル信号処理の専用回路(DSPブロック)などである。これにより、「第1世代品に比べて応用範囲が一気に広がり、FPGA市場の中でも使用個数が特に多いメインストリームの用途に使えるようになる」(Ekas氏)という。

 プログラマブルロジック領域の集積規模が異なる6品種を用意した。具体的には、4入力のルックアップテーブル(LUT)が約5000〜12万個の範囲で異なる。まずLUT数が約5万個の中規模品「M2S050」から供給を開始する。2012年10月中にエンジニアリングサンプルの出荷を始め、2013年の4月に量産出荷を開始する予定だ。残りの品種については、2013年第1四半期にエンジニアリングサンプルの出荷を始める計画である。

SmartFusion2の品種構成 SmartFusion2の品種構成である。出典:Microsemi (クリックで画像を拡大)

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