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ブラックボックスのFPGA、基板の回路設計に潜むわなWired, Weird(1/3 ページ)

基板の回路図ではFPGAは単なる「ボックス」状のシンボルとしてしか描かれておらず、そこから入出力の情報を読み取ることは不可能だ。しかしFPGAの内部に構築された回路を把握しなければ、入出力の条件は分からないのである。それが障壁となって、不具合のトラブルシューティングを阻んでしまう。

» 2012年11月06日 07時30分 公開
[山平 豊内外テック]

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 FPGAの台頭が目覚ましい。筆者は電子機器やその内蔵基板の修理に従事しているが、最近では新規設計の基板を手にすると複数個のFPGAが実装されていることが多い。

 しかし、その基板を作る回路設計者の意識は、FPGAの普及に追い付いていないように思える。FPGAのハードウェア特性は、データシートを読み込んでも完全には理解しにくい。まして、基板の回路図ではFPGAは単なる「ボックス」状のシンボルとしてしか描かれておらず、そこから入出力の情報を読み取ることはできない。回路図だけではハードウェア特性が全く把握できないため、筆者も設計検証時に不安を感じることが多々あった。

 実際にFPGAが絡む基板の不良解析を今までに数回手掛けたが、不具合が再現せず、原因の調査が難しかった。今回は2つの事例を挙げて、FPGAのハードウェア設計に潜む落とし穴を紹介しよう。

当初はフォトカプラを疑った

 まずは、比較的簡単な例である。今から5年ほど前に設計された基板だったが、これまで不良は出ていなかった。しかし、半年前に出荷した基板で動作不良が発生し、2週間程度で返却された。その基板を引き取って調査したが、不良箇所が見つからず、機能試験でも問題が生じなかったので再出荷したところ、また不良が出てしまい、2週間程度で戻ってきた。

 不具合情報からすると、センサーの作動を伝える信号がFPGAに正しく伝わっていないようだ。信号ラインに絶縁の目的で挿入されたフォトカプラが怪しい。すなわち、フォトカプラの電流変換効率(CTR)のばらつきが絡むハードウェア不良が疑われた。

 早速、FPGAの入力部分の回路図を再確認した。概略を図1に示す。センサーが作動するとフォトカプラ(図中のPC1とPC2)に24Vの電圧が供給される。この時、フォトカプラが内蔵する1次側のLEDには約2mA、2次側のフォトトランジスタには約0.3mAの電流が流れていた。フォトカプラのCTRは、IC(出力電流)÷入力順電流(IF)×100で求められるので、測定値を当てはめると0.3mA÷2mA=15%程度という計算になる。

図1 不良基板のセンサー信号取り込み部 図1 不良基板のセンサー信号取り込み部 センサー作動時に出力される24Vの直流電圧を駆動信号として受け取り、フォトカプラ経由でプログラマブルロジックLSI(CPLDとFPGA)に入力する回路構成だ。フォトカプラは光結合方式を利用した絶縁素子であり、パッケージに発光素子(LED)と受光素子(フォトダイオードやフォトトランジスタ)を内蔵し、両者の間で信号を光伝送することで絶縁を確保する仕組みである。 (クリックで画像を拡大)

 フォトカプラ自体のCTRは製品仕様として100%以上が保証されており、実際の基板では上記の通りCTRを15%で使用していたので、マージンは十分だ。従って、動作不良の原因はフォトカプラの製造ロットごとにCTRがばらつき、特にCTRが低いロットの個体が混入したからではないかと推定した。

 そこで、24Vの電源に47kΩの抵抗を直列に入れてIFを0.4mA程度に制限し、フォトカプラのLED端子に電流を直接流し込んで、その時のフォトトランジスタのオン電圧(Vce)を測定した。この基板には1ブロック当たり40個のセンサーがフォトカプラを通して接続されており、それが6ブロックもある。合計で200個を超えるフォトカプラが実装されていたが、それらの動作を1つ1つ手作業で確認していった。

 回路図の上から順番にVceの確認を進めたところ、初めのうちは各フォトトランジスタのVceはほとんど0.2Vだった。しかし、30個目を過ぎた辺りから少し怪しくなった。同じ構成の回路を同じ方法で確認しているのに、Vceの値が2.9Vと桁違いに高くなり、オンしないフォトカプラが出はじめた。結局、40個のフォトカプラのうち5個で同様の動作不良が見つかった。残る5つのブロックも調べたところ、やはり同じ傾向だった。フォトカプラのロット不良にしては、あまりにも数が多過ぎる。

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