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JESD204Bシリアル・インターフェイス規格をサポートする2チャネル16ビットA/Dコンバータとクロック・ジッタ・クリーナ【講座】回路設計の新潮流を基礎から学ぶ

» 2013年01月07日 00時00分 公開
[PR/EDN Japan]
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 4G/LTE無線基地局などの通信機器をはじめとして、医療機器、計測機器などのアプリケーションにおいて、高速・高分解能のA/Dコンバータ、D/Aコンバータが数多く使われるようになっている(図1)。

図1 基地局における無線トランシーバの構成例
無線のデジタル化により、基地局では高速・高分解能のA/Dコンバータ、D/Aコンバータが多数使われている。

 これらのコンバータは、多くの場合、ボード上でFPGAなどの高速ロジック・デバイスとインターフェイスする。コンバータが高速・高分解能になるほど、接続に必要なデジタル信号は高速化し、信号線の本数が増える。従来のパラレル接続では、信号線の本数が多いためボード上のレイアウトが難しい、コンバータやFPGAの小型化が難しい、スキューやノイズなど特性の面でも問題を生じやすいなど、多くの課題を抱えていた。

 そこで、このような高速コンバータとFPGAなどの高速ロジック・デバイスをシリアル接続するための標準インターフェイスとして、JEDECによって策定されたのがJESD204規格である。8b-10b変換やスクランブラなど既存の高速シリアル・インターフェイス技術を利用し、かつデータ・コンバータ向けとして必要なスペックに最適化した規格となっている(図2)。

図2 データ・コンバータの高速シリアル・インターフェイス
JESD204B対応のシリアルA/Dコンバータの例。内蔵のJESD204B回路でシリアル-バラレル変換を行い、FPGAなどとシリアル接続できる。

 今回は、JESD204の概要と、その最新バージョンであるJESD204Bに対応した業界最高速の2チャネル16ビットA/Dコンバータ、業界初のクロック・ジッタ・クリーナを紹介する。

高速A/Dコンバータ、D/Aコンバータの課題を解決するJESD204

 JESD204は、A/Dコンバータ、D/Aコンバータのためのシリアル・インターフェイスの規格として、2006年に最初に策定された。これは、コンバータとFPGAなどのロジック・デバイスを接続するシリアル・インターフェイスであり、電気的特性、データストリーム(トランスポート層、データリンク層)、トランスミッタ動作、レシーバ動作などが規定されている。

 当初の規格は、コンバータとロジック・デバイスを1対1で接続するものであり、1レーン、1リンクで312.5Mbpsから3.125Gbpsまでの信号レートが規定されていた(図3)。

図3 最初のJESD204規格(2006年)
最初のJESD204規格では、コンバータとロジック・デバイスは1対1で、信号レートは最大3.125Gbpsだった。

 JEDECでは引き続きJESD204の拡張を進め、2008年にはレーンの並列化と、複数コンバータの接続をサポートするJESD204Aを策定した。

 JESD204Aでは、同期して動作するL本のレーンを用いることによって、実質的な信号レートをL倍に向上できる。逆に、1レーンあたりの信号レートを下げてノイズ低減やコストダウンを図ることも可能になった。

 また、JESD204Aでは、1台のデバイスに接続した複数のコンバータの動作もサポートされるようになった(図4)。

図4 JESD204Aへの拡張(2008年)
JESD204Aになって、マルチレーンによる高速化と、複数コンバータの接続がサポートされた。

 2011年には、さらに大きな拡張を加えた最新バージョンのJESD204Bが策定された。

 JESD204Bでは、まず1レーン、1リンクでの信号レートが最大12.5Gbpsと、従来の4倍に高速化された。これによって、例えば250Msps、16ビットという高速・高分解能のコンバータが1レーンで実現可能になった。

 また、JESD204Bでは、サンプリング・タイミングからデジタル・データ出力までの遅延時間を一定に管理できるdeterministic delayの機能が追加された。コンバータとロジック・デバイスの同期も、従来のフレーム・クロックに加えて、より柔軟に利用できるデバイス・クロックがサポートされた。

 なお、JESD204Bではサポートする機能によって、サブクラス0、サブクラス1、サブクラス2という三つのサブクラスが定義されている(図5)。

図5 JESD204Bへの拡張(2011年)
現行版のJESD204Bでは、1レーンあたりの信号レートが12.5Gbpsに高速化され、定遅延(Deterministic Delay)やデバイス・クロックのサポートが追加された。

 JESD204、JESD204A、JESD204Bの比較を表1に示す。

発表 最大信号レート マルチレーン レーン間同期 サブクラス
JESD204 2006年 3.125Gbps/レーン なし なし  
JESD204A 2008年 3.125Gbps/レーン あり あり  
JESD204B 2011年 12.5Gbps/レーン あり あり 0 定遅延サポートなし(後方互換用)
1 SYSREFによる定遅延サポート
2 SYNCによる定遅延サポート

表1 JESD204、JESD204A、JESD204Bの比較

 JESD204によって、高速データ・コンバータの配線が大幅に削減され、ボード面積やシステム・コストの低減が可能になった。特に、最新バージョンのJESD204Bでは、十分な高速性と使いやすい同期機能をサポートしており、今後の高速データ・コンバータはJESD204B対応が主流になっていくと考えられる。

 FPGAメーカでもJESD204B対応のI/O機能のサポートを早くから進めており、インターフェイスとして利用可能になっている。

JESD204B対応、業界最高速の2チャネル16ビットA/Dコンバータ ADS42JB69

 テキサス・インスツルメンツ(TI)のADS42JB69は、JESD204Bに対応し、2チャネル16ビットA/Dコンバータとして業界最高速の250Mspsを実現した。単に高速化、シリアル化しただけでなく、SNRやSFDRなどのダイナミック特性もきわめて優れた特徴をもつ。また、消費電力も775mW/チャネルときわめて低く抑えられている。無線基地局をはじめ、超音波診断装置などの医療機器、計測/テスト機器などのアプリケーションで注目されている。

 ADS42JB69は、JESD204Bのサブクラス0〜2のすべてに対応し、deterministic delay(定遅延)をサポートしているので、アプリケーションのさまざまな仕様に柔軟に利用できる。最大3.125Gbpsのシリアル・インターフェイスを4レーン持ち、2チャネル16ビットで250Msps動作に必要なデータレートを実現できる(図6)。

図6 2.5Gbpsおよび3.125Gbpsでのアイ・パターン
ADS42JB69のシリアル・インターフェイスのアイ・パターンを示す。良好な信号が得られている。

 また、fin=170MHzにおいて、フルスケール基準で最大74.9dBのSNR、最大89dBcのSFDRなど、A/Dコンバータとしてのダイナミック特性でも、業界最高を実現している。それによって、無線レシーバの受信感度を大幅に向上できる(図7)。

図7 fin=170MHzにおけるSFDR
fin=170MHzにおけるFFTの図を示す。第2高調波(340MHz)で90dBC、第3高調波(510MHz)で89dBC、それ以外の周波数では100dBCのSFDRが得られている。
図8 ADS42JB69EVM、JESD204B-パラレルLVDS変換ボード、TSW1400EVMの接続例
ADS42JB69の評価用モジュールとJESD204B-パラレルLVDS変換ボードが用意されており、既存のデータ・キャプチャ/パターン生成プラットフォームに接続して評価・開発ができる。

 さらに、TIではADS42JB69を用いた回路設計を迅速に実現するための評価用モジュールもすでに供給を行っている。

 ADS42JB69の評価用モジュールであるADS42JB69EVMと、FPGA搭載のJESD204B-パラレルLVDS変換ボードが用意されており、従来から用いられているコンバータ評価用の高速データ・キャプチャ/パターン生成プラットフォームTSW1400EVMに接続できる。ADS42JB69EVMとJESD204B-パラレルLVDS変換ボードを組み合わせたADS42JB69SEKは、参考価格999ドルで供給中という。また、Xilinx社やAltera社のFPGA開発プラットフォームにも接続可能である(図8)。

 ADS42JB69はJESD204B対応のシリアルA/Dコンバータだが、TIでは、これと同等のA/D変換性能をもち、パラレルLVDSインターフェイスを装備したA/Dコンバータとして、ADS42LB69を製品化している。さらに、ADS42JB69とピン互換の14ビット版としてADS42JB49、ADS42LB69とピン互換の14ビット版としてADS42LB49を発売している。

JESD204B対応、業界最高性能の高速クロック・ジッタ・クリーナLMK04828

 TIでは、JESD204B対応の高速A/DコンバータであるADS42JB69と合わせて、きわめて低ジッタのクロックとJESD204Bサブクラス1のSYSREF信号をペアで供給可能な業界初のクロック・ジッタ・クリーナLMK04828を製品化している(図9)。

図9 LKM04828のブロック図
LMK04828はJESD204対応の低ジッタ、高機能クロック・ジェネレータ。外付けVCXO(PLL1)と内蔵VCXO(PLL2)を用いてデュアルPLLを構成した例を示す。

 LKM04828は、内蔵の低ノイズVCXOモジュールを用いて、245.76MHz出力時に100fsRMS未満という低ジッタ(10kHz〜20MHz)のデバイス・クロックを7チャネル供給できる。また、各デバイス・クロックにSYSREF信号をペアで供給可能であり、SYSREF信号を用いない場合は最大14チャネルのデバイス・クロックとして供給することもできる。また、各出力はLVPECL、LVDS、HSDSに設定でき、デジタル遅延、アナログ遅延、ゼロ遅延などのクロック機能をサポートする。

 ADS42JB69と組み合わせることにより、最高のシステム性能を得るとともに、部品点数やコストの大幅な削減が可能になる。評価用モジュールであるADS42JB69EVMでは、ADS42JB69とLKM04828を組み合わせて搭載している。

JESD204B データ・コンバータ・インターフェイス 概要ビデオ(日本語字幕付き)


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提供:日本テキサス・インスツルメンツ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2013年3月31日

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