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業界最高クラスの高速波形生成が可能、テクトロニクスの任意波形ジェネレータテクトロニクス AWG70000シリーズ

テクトロニクスの「AWG70000シリーズ」は、サンプルレートが最大50Gサンプル/秒の任意波形ジェネレータである。これは、同社従来製品に比べて約2倍、競合他社製品に比べると約4倍のサンプルレート性能を実現しており、業界最高クラスの高速信号を生成することが可能となる。

» 2013年03月22日 12時00分 公開
[馬本隆綱,EDN Japan]
任意波形ジェネレータ「AWG70000シリーズ」

 テクトロニクスは2013年3月21日、最大50Gサンプル/秒のサンプルレートを実現した任意波形ジェネレータ「AWG70000シリーズ」を発表した。新たに開発した25Gサンプル/秒のD-AコンバータICをインターリーブ動作させることにより、高速信号の生成を可能とした。主に、コヒーレント光通信や高速シリアル通信、レーダーなどの研究開発用途に向ける。

 AWG70000シリーズは、出力が1チャネルでサンプルレートが最大50Gサンプル/秒の「AWG70001A」と、出力が2チャネルでサンプルレートが最大25Gサンプル/秒の「AWG70002A」の2製品を用意した。従来の同社製品はサンプルレートが最大24Gサンプル/秒だった。AWG70001Aは、社内で新たに開発した25Gサンプル/秒のD-AコンバータICを2個用い、それをインターリーブ動作させることで、最大50Gサンプル/秒のサンプルレートを実現した。これは、同社の従来機種に比べて約2倍、競合他社製品に比べると約4倍のサンプルレート性能となる。これによって、最大20GHzのワイドバンドRFキャリアや最大12Gビット/秒の高速シリアル信号などに対応可能な波形を生成できるようになった。

任意波形ジェネレータにおけるサンプルレート性能の推移(左図)と、25Gサンプル/秒のD-AコンバータICを2個独立して用いた場合とインターリーブ動作させて使う場合の回路ブロック図(右図)(画像はクリックで拡大)、出典:テクトロニクス

 任意波形ジェネレータのスプリアスフリーダイナミックレンジ(SFDR)は、周波数帯域にもよるものの、一般的に45〜55dBcと言われている。これに対して、AWG70000シリーズは80dBc以上を達成しており、品質の高いRF周波数の広帯域信号を出力できる。さらに、波形メモリは標準搭載で2Gサンプル分のサイズだが、AWG70001Aはオプション追加により最大16Gサンプルまで対応できる。これによって、実際の信号環境をシミュレーションするのに十分な長さの波形パターンを生成し、出力することが可能となった。

「AWG70000シリーズ」は80dBc以上のSFDRを達成した。(画像はクリックで拡大)、出典:テクトロニクス

複数ユニットを同期、50Gサンプル/秒のI/Q信号も生成可能に

 AWG70000シリーズは複数のユニットを同期させることでチャネル数を拡張することができる。例えば、AWG70001Aを2台用いて同期運転させれば、光通信用に50Gサンプル/秒のI/Q信号を生成することができる。また、HDMI 2.0テストで必要となるレーン当たり6Gビット/秒での4レーン出力も可能となる。

 テクトロニクスでは、波形生成ツールとして「RFXpress」と「SerialXpress」の2種類を提供している。任意波形ジェネレータで生成する波形は、これまでThe MathWorksの技術計算ソフトウェア「MATLAB」で開発されたデータを用いることが多かったが、RFXpressを使えばIQ、IF、RF信号を容易に作成することができる。さらに、レーダーやOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重)用の専用プラグインも用意した。SerialXpressは、受信側のストレステストを行うために必要な、ジッタなどを含んだデータパターンの生成が可能なほか、PCIeやHDMI、USBといった規格テスト用デジタルパターンライブラリも用意している。

波形生成ツールとして「RFXpress」と「SerialXpress」の2種類を用意した。(画像はクリックで拡大)、出典:テクトロニクス

 この他、機能や操作性も向上した。USBロック機能や脱着可能なリムーバブルSSD、データ削除手順(Declassification)への対応など、セキュリティ機能を充実した。また、AWG70000シリーズは、PCによる制御はもとより機器のフロントパネルで制御することも可能だ。

出力が1チャネルでサンプルレートが最大50Gサンプル/秒を実現したAWG70000シリーズ

 AWG70000シリーズは、発表と同時に販売を開始した。価格(税別)はAWG70001A、AWG70002Aのいずれも1680万円。また、オプションで追加できる波形メモリ(AWG70001Aは16Gサンプルレコード長、AWG70002Aは8Gサンプルレコード長×2チャネルで使用)は118万円。

 なお同社は、AWG70000シリーズ向けに開発した、分解能が10ビットでサンプルレートが最大25Gサンプル/秒のD-AコンバータIC「TDAC-25」も同時に単体で外販する。TDAC-25はIBMの「8HP SiGe」プロセスを用いて製造される。設計ドキュメントやデザインパッケージなども用意されており、同社と競合しない企業であれば誰でも購入することができる。価格は要問い合わせ。

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