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スマホの発振器も水晶からMEMSへ、SiTimeが発振周波数32kHz品を投入SiTime SiT15xx

「SiT15xx」は発振周波数が最大32.768kHzのMEMS発振器である。水晶振動子を用いた発振回路に比べて、プリント基板への実装面積を最大85%削減するとともに、消費電流も半減できる。

» 2013年04月01日 09時50分 公開
[馬本隆綱,EDN Japan]
「SiT15xx」の外観

 SiTimeは2013年3月27日(米国時間)、発振周波数が最大32.768kHzのMEMS発振器「SiT15xx」を発表した。スマートフォンやタブレット端末などモバイル機器の用途に向ける。従来の水晶振動子を用いた発振回路に比べて、プリント基板への実装面積を最大85%削減するとともに、消費電流も半減できる。同社は新製品の発売により、スマートフォン市場にも本格参入し、現在主流となっている水晶デバイスからの置き換えを狙う。

SiTimeのCEOを務めるRajesh Vashist氏 SiTimeのCEOを務めるRajesh Vashist氏

 同社は、振動子や発振器などのタイミングデバイスに焦点を当てたMEMS事業を展開してきた。SiTimeのCEO(最高経営責任者)を務めるRajesh Vashist氏は、「デジタルカメラや電子書籍リーダー、通信ネットワークのインフラ装置などに当社のMEMS発振器が採用されている。これまで800社の顧客に対して約1億5000万個の製品を出荷した。MEMSタイミング市場で80%のシェアを獲得することができた」と話す。

 これらの製品に続き、同社が注力するのがスマートフォン分野である。スマートフォンとタブレット端末の世界規模の出荷台数は、2013年に約10億台、2017年には約20億台に達すると予測されている。こうした状況を踏まえて、SiTimeもスマートフォン向けの製品展開を図ることとなった。このほど市場に投入することになったSiT15xxは、発振周波数が最大32kHzという、最も基本的な発振回路に用いられる製品である。Vashist氏は、「スマートフォン向けでも、さらに精度が高い周波数を要求される温度補償型水晶発振器(TCXO:Temperature Compensated Crystal Oscillator)や、リファレンスクロックなどに用いられているメガヘルツオーダーの振動子を、MEMSタイミングデバイスに置き換えるための製品も開発を進めている。これらは1年後の2014年をめどに製品化していく」計画である。

SiT15xxの外観 SiT15xxの外観。(クリックで拡大)

 このほど出荷を始めたSiT15xxは、発振周波数が32.768kHz固定の「SiT1532/1533」と、1Hz〜32.768kHzの範囲で選択できる「SiT1534」で、電源電圧はいずれも1.2〜3.63Vである。2013年6月には、電源電圧が2.7〜4.5Vで、発振周波数が32.768kHz固定の「SiT1542/1543」と、1Hz〜32.768kHzの範囲で選択できる「SiT1544」の出荷を始める。電源電圧2.7〜4.5V品を採用するメリットは、既にシステム電源ICの設計が完了している場合など、設計の変更や電源ICの追加をすることなく、リチウムイオン電池から直接電源電圧を供給できる点にある。

 SiT15xxの消費電流は0.75μAと小さく、同じ仕様の水晶振動子に比べてほぼ半分である。周波数安定度は室温環境の場合に20ppmで水晶振動子と同じだが、−45〜85℃のインダストリアル環境では100ppm(水晶振動子は160ppm)と優れている。

 また、水晶振動子を用いて発振回路を構築する場合には、2個のキャパシタを外付けする必要があるが、SiT15xxは不要である。このため、外形寸法が2.0×1.2mmのSMDパッケージ品のSiT15xxを用いる場合、プリント基板の専有面積は2.4mm2に収まる。一方、同寸法で端子配列も同一のSMDパッケージの水晶振動子を用いた発振回路は、2個のキャパシタを含めて、プリント基板の専有面積が8mm2になる。つまり、SiT15xxを使えば、発振回路の実装面積を70%削減できるわけだ。

 SiT15xxは、先述したSMDパッケージ品の他に、外形寸法が1.5×0.8mmと小さいCSPパッケージ品も用意している。両品種とも2013年5月からサンプル出荷を始める予定だ。

水晶振動子と「SiT15xx」を用いた場合の発振回路の専有面積の比較 水晶振動子と「SiT15xx」を用いた場合の発振回路の専有面積の比較(クリックで拡大) 出典:SiTime

 SiT15xxの価格は明らかにしていない。Vashist氏は、「水晶振動子と同等の価格設定を考えている。これまで外付けしていたキャパシタが不要になったり、プリント基板の専有面積を削減できたりするため、トータルではコストメリットがあるはずだ」と語った。

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