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SPICEの内側を探る――節点法とはSPICEの仕組みとその活用設計(1)(3/3 ページ)

» 2013年04月19日 11時00分 公開
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SPICEは何を、どうやって解いているのか?

 SPICEは、節点法と呼ばれる、回路図上の各点の値を求める手法を採用しています。これは、回路図に以下のような3つの特徴があるからです。

  1. 空間や領域という概念がない
  2. 抵抗やキャパシタといった部品の電流・電圧を扱うことを目標にしている
  3. 力や流れ場に代表されるベクトルの概念がない

 基本的には回路図上の各点(=節点)のスカラー量*3)さえ扱えればよいのです。

*3)スカラー量とは、温度のように大きさしか持たない量のことです。一方、ベクトル量とは、流れのように大きさと方向を持つ量のことをいいます

 ですから、解析手法の代表としてよく引き合いに出される、有限要素法や有限体積法(例えば「NASTRAN」や「OpenFOAM」)のような領域を対象としたものを採用する必要はありません。なぜなら、部品間の結線さえ間違っていなければ、電流が回路図の上方向に流れようが、左方向に流れようが回路の動作に問題はないからです。立体空間を扱わないのでベクトルを扱う必要はないのです。

 では、SPICEの計算手法を、例を挙げながら説明します。ここでは話を簡単にするため、抵抗と電流源だけで構成される回路網を考えます。これはSPICEではDC解析と呼ばれており、時間によって変化しない一定の解を求めることになります。有限要素法であれば、基本的な解析である線形静解析に相当します。

 まず、解析の基礎になる基本法則ですが、以下に説明する「キルヒホフの電流則」を用います。

図2 図2 キルヒホフの電流側の概念図(クリックで拡大)

キルヒホフの電流則(1846年)

 電気回路の任意の節点iにおいて、流れ込む向きを正(または負)と統一するとき、各線の電流Iiの総和は0となる。


図3 図3 解析に用いる回路図(クリックで拡大)

 図2では、電流経路として流入が2本、流出が2本でバランスしていますが、これは単なるイメージです。線上の1点を切ってみれば、流入1本、流出1本の合計2本になります。このように、節点に2本以上の電流経路があれば何本でも問題ありません(1本では電流が流れません)。

 回路素子としての抵抗の接続条件にはいろいろ考えられますが、一例として図3の回路網を取り上げます。この例は、電流注入/直列接続/合流(分岐)/接地から構成されています。

 この接続条件を解ければ、その他の接続は応用にすぎません。この回路網を実際にどのように解くかについては、次回説明します。

執筆者プロフィール

加藤 博二(かとう ひろじ)

1951年生まれ。1972年に松下電器産業(現パナソニック)に入社し、電子部品の市場品質担当を経た後、電源装置の開発・設計業務を担当。1979年からSPICEを独力で習得し、後日その経験を生かして、SPICE、有限要素法、熱流体解析ツールなどの数値解析ツールを活用した電源装置の設計手法の開発・導入に従事した。現在は、CAEコンサルタントSifoenのプロジェクト代表として、NPO法人「CAE懇話会」の解析塾のSPICEコースを担当するとともに、Webサイト「Sifoen」において、在職中の経験を基に、電子部品の構造とその使用方法、SPICE用モデルのモデリング手法、電源装置の設計手法、熱設計入門、有限要素法のキーポイントなどを、“分かって設計する”シリーズとして公開している。



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