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» 2013年05月23日 11時49分 UPDATE

Design Ideas アナログ機能回路:1本のワイヤで自動車用通信リンクを実現

自動車業界では、自動車の配線をより簡単でより軽くしたいと考えている。この点で、2本のワイヤを使う配線に比べると、1本のワイヤによる配線が望ましい。今回は、1本のワイヤによる双方向通信リンクを実現する回路を紹介する。

[Anthony Smith,Scitech]

 自動車業界では、自動車の配線をより簡単でより軽くしたいと考えている。この点で、2本のワイヤを使う配線に比べると、1本のワイヤによる配線が望ましい。

 図1は、1本のワイヤによる双方向通信リンクである。車のシャーシ、あるいは接地導体が負のリターン・パスを形成している。マイコン(マイクロコントローラー)は、発光ダイオードLED1を点灯させることによって自動車の運転者に情報を伝える。運転者は、スイッチS1を操作することでマイコンに情報を入力する。

mm130523_di_fig1.jpg 図1 1本のワイヤと接地によるリターン・パスで双方向の通信リンクを構成
マイコンは発光ダイオードLED1で、車の運転者はスイッチS1で情報を伝える。

 スイッチを閉じるとき、電流センシングは不要である。適切にバイアスされた発光ダイオードの順方向電圧降下が、通常はバイポーラ・トランジスタのベース‐エミッタ間電圧VBEの2〜3倍であることをこの回路は利用している。トランジスタQ1と発光ダイオードLED2、トランジスタQ2は、ほどほどの精度の電流源を形成する。マイコンの受信側トランジスタQ3は、スイッチが閉じたことを検出する。マイコンの送信出力ピンTXが高レベルに遷移すると、Q2はLED2を点灯させ、Q1をバイアスしてオンさせる。Q1は抵抗R2とダイオードD1を通じてLED1に定電流を供給する。

 発光ダイオードLED2は高価ではないが効率的な基準電圧を構成しており、電流設定抵抗R1に定電圧を与える役目を果たす。トランジスタQ2のベースを駆動するように抵抗R3の値を選んでおくと、LED2の電流と電圧を一定の値に、かなり精密に制御できる。例えばR3を430Ωとすると、Q2のベース電圧が5V(TXが高レベル)のときにLED2の電流は約10mAとなる。LED2に「HLMP-1000」のようなデバイスを用いると、その順方向電圧は約1.6Vと一定値に保たれる。従って、抵抗R1に加わる電圧は約0.9Vとなる。その結果として、Q1には20mAの電流が流れ、LED1を適切な明るさで光らせる。バッテリー電圧VBや周囲温度などが変動しても、電流は許容範囲に保たれる。

 スイッチS1を開くと、抵抗R6がトランジスタQ3をバイアスしてオンさせる。そしてマイコンの受信入力ピンRXを低レベルに引っ張る。発光ダイオードLED1がオンしているかどうかにかかわらず、RXは低レベルにとどまる。スイッチS1を閉じると、抵抗R4とR6によってQ3のベース電圧が約150mVに下がる(マイコンの電源電圧VSが5Vのとき)。Q3はターン・オフし、RXは高レベルに遷移する。スイッチS1が閉じている期間は、RXは高レベルを維持する。TXの値とは無関係である。

 電流源回路の電源は自動車のバッテリー(VB)である。マイコンの電源とは別になる。マイコンの電源に対する負担を軽減すると共に、マイコンの電源電圧VSが極めて低い値であっても、発光ダイオードLED1のバイアスを保証できるようにするためである。抵抗R3とR4、R6の値を適切に選ぶと、マイコンの電源電圧VSが3V以下でもこの回路は動作する。また、複数の発光ダイオードを直列接続した素子でLED1を置き換えることもできる。バッテリーの電圧が12Vだと、4〜5個の発光ダイオードを十分駆動可能である。

 抵抗R2はとても重要な部品というわけではないが、トランジスタQ1の消費電力を低減する役目を果たす。ダイオードD1は正の過電圧に対して電流源を保護し、電圧サプレッサーD2は、自動車という過酷な環境でシステムがしばしば遭遇する危険な過渡現象から回路を保護する。コンデンサーC2と抵抗R4は雑音用のフィルターである。雑音がトランジスタQ3に与える影響を、無視できる程度に小さくしている。コンデンサーC1と抵抗R5は、Q2の周波数応答をなだらかにする。高周波における発振の恐れを取り除くために必要な素子である。トランジスタの品種はそれほど気にせずともよい。適切な電流利得と定格電力があれば、ほとんどのトランジスタを利用できる。

 発光ダイオードLED2は3つの機能を実現する。電流源の基準電圧の役目、それからLED1と同期して点灯することによってマイコンの近くで表示用発光ダイオードの状態を知らせる役目がある。さらに、ワイヤが断線してダイオードD1と発光ダイオードLED1との接続が断たれたことを、LED2が消灯することによって知らせる役目がある。マイコンのTXが高レベルでもこの動作は生じる。トラブルの発見と解決に有用な機能である。断線時には、トランジスタQ1のコレクタ電流はほとんど流れない。Q1のベース‐エミッタ接合がLED2に流れる電流を分流する。R1をR3よりはるかに小さくしておけば、分流によってLED2はバイアス電流を奪われて消灯する。


Design Ideas〜回路設計アイデア集

【アナログ機能回路】:フィルタ回路や発振回路、センサー回路など

【パワー関連と電源】:ノイズの低減手法、保護回路など

【ディスプレイとドライバ】:LEDの制御、活用法など

【計測とテスト】:簡易テスターの設計例、旧式の計測装置の有効な活用法など

【信号源とパルス処理】:その他のユニークな回路




※本記事は、2008年7月29日にEDN Japan臨時増刊として発刊した「珠玉の電気回路200選」に掲載されたものです。著者の所属や社名、部品の品番などは掲載当時の情報ですので、あらかじめご了承ください。
「珠玉の電気回路200選」:EDN Japanの回路アイデア寄稿コラム「Design Ideas」を1冊にまとめたもの。2001〜2008年に掲載された記事の中から200本を厳選し、5つのカテゴリに分けて収録した。

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