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» 2013年07月16日 12時30分 UPDATE

「超入門」いまさら聞けない半導体技術:パワー半導体の基礎知識 (2/2)

[竹本達哉,EDN Japan]
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パワー半導体の働き

 パワー半導体をもう少し詳しく見てみると、4つの働きがある。(1)直流での電気を交流に変換する「インバータ」(2)交流を直流に変換する「コンバータ」(3)交流の周期を変える「周波数変換」(4)直流の電圧を変換する「レギュレータ」、の4つだ。パワー半導体は、これら4つの働きのうち、いずれか1つの働きをして、電力を制御してマイコンやモーターなどに電力を供給する。

 この4つの働きの中で、よく耳にするのがインバータだろう。エアコンや冷蔵庫、洗濯機などのカタログなどには、製品の省エネ性をアピールする要素として「インバータ搭載」などとうたっている場合が多い。

 では、インバータエアコンと、そうでないエアコンはどう違うのだろうか。

 インバータ非搭載のエアコンでは、エアコンを動かすモーターをフル回転させるか、止めるかのどちらかしかない。言い換えれば、モーターのオン/オフしかできず、極端な動作で無駄な動きが増える。

 一方、インバータを搭載していれば、モーターの回転数を自由に変えることができ、無駄な動きが減らせ省エネ化できるのだ。

 インバータがモーターの回転数を自由に変える仕組みは、モーターへの電源供給を高速にオン、オフし、そのオンとオフの時間の割合を自在に変えて、回転を制御している。インバータも突き詰めると、モーターをオン、オフしているにすぎない。

 このオン、オフを行うことをスイッチングと呼び、このスイッチングを行うのがパワー半導体だ。インバータ以外のコンバータや周波数変換、レギュレータなどでもパワー半導体のスイッチング機能を使って行う。

パワー半導体の種類

 スイッチングを行う半導体は、スイッチング素子/スイッチングデバイスとも呼ばれ、パワートランジスタとサイリスタがある。またスイッチングを行わないパワー半導体としてダイオードも存在する。

 数あるパワー半導体の中でも、パワートランジスタは最も応用範囲が広く、技術開発が盛んなデバイスだ。そのパワートランジスタには、主に(1)バイポーラトランジスタ(2)パワーMOSFET(3)IGBTの3つがある。

 バイポーラトランジスタは3つのパワートランジスタの中で、最も構造がシンプルだ。構造がシンプルなこともあり、より大きな電力を扱えるという利点がある。ただスイッチング動作するために必要な電力(消費電力)が大きく、スイッチング速度も比較的遅い。

 パワーMOSFETは、CPUなどのICにも似た構造であり、3つのパワートランジスタの中で最も高速なスイッチングが行える。ただ、バイポーラトランジスタに比べ、大きな電力が扱いにくい。なお、MOSFETは、metal-oxide-semiconductor field-effect transistorの略で、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタと訳される。

 IGBTは、Insulated Gate Bipolar Transistorの略で、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタとも呼ばれる。その構造は、バイポーラトランジスタとパワーMOSFETを組み合わせたもので、大きな電力が扱えると同時に高速スイッチングが行えるという利点を持つ。ただし、その構造は複雑だ。

 現在、比較的小さな電力ではパワーMOSFETが、比較的大きな電力領域ではIGBTが主に用いられる。

パワー半導体の提供形態

 パワー半導体の提供方法もいくつかの種類がある。最も単純な提供形態は、1つのトランジスタや1つのダイオードなど、1つの半導体素子だけをパッケージング(チップに基板実装用の接続端子などを付けて樹脂で封止)した「ディスクリート」での提供だ。ディスクリートとは、個別半導体とも訳され、1つの半導体素子で構成するチップのことを指す。なお、複数の半導体素子を1つのチップに搭載したものがIC/集積回路で、より集積規模が大きいものはLSIと呼ばれる。

 ディスクリートでの提供で始まったパワー半導体はその後、複数のディスクリートチップを組み合わせてパッケージングされた「モジュール」が登場する。3相モーター制御では、6つのパワートランジスタとダイオードの組み合わせが必要になるなど、用途に応じて決まった複数個のパワー半導体を使う必要があり、パワー半導体を使う側がディスクリートをわざわざ接続しなくても済むため、モジュールが普及してきた。

 さらに、このモジュールに、パワー半導体に対しオン/オフの指示を与える制御ICやパワー半導体の異常を検知するなどし安全を保つ保護ICなどを加えた「IPM」(インテリジェントパワーモジュール)なども登場している。

パワー半導体の今後

 パワー半導体は、大きな電力をより細かに、より効率的に制御する方向性で進化を続け、既に、数千V、数千Aという大電力を扱えるようになった。今後は、スイッチング周波数を高めてさらに細かな制御を効率的に行うための開発がより活発化していくことになる。

 実はパワー半導体は、スイッチング動作を行うための電力消費に加え、電力を流した際に一部の電力が熱として逃げてしまうなどの電力損失が発生する。これまでも、電力を無駄にするこの電力損失を抑えるため、デバイスの構造を見直すなどして損失低減を図ってきた。しかし、昨今では物理的な限界が近づきつつあり、大きな損失改善が見込みにくい状況になっている。

シリコンよりも優れた半導体材料でパワー半導体を作る

 そこで、シリコンよりも、電気を通しやすく、電力損失が発生しにくい新しい半導体材料で、パワー半導体を製造することが検討されてきた。新しい半導体材料としては、SiC(炭化ケイ素、シリコンカーバイト)、GaN(窒化ガリウム、ガリウムナイトライド)の2種類が有力視され、開発が活発に行われ、両材料ともに「次世代パワー半導体」として、ここ数年間で製品化が相次いでいる。なお、SiCは、これまでIGBTが使用された用途、GaNはこれまでパワーMOSFETが使用された用途を中心に応用されるとみられている。

 SiC、GaNともに、パワー半導体に適した特性を備えるものの、ウエハー製造がシリコンに比べ難しく、製造コストが高いという課題を抱えており、その解決に向けた技術開発が望まれている。

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