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» 2013年08月01日 00時00分 UPDATE

【講座】回路設計の新潮流を基礎から学ぶ:充電時間の短縮と電池セルの劣化防止の両立を実現、単セルのLiイオン電池に向けた電池管理チップセットが登場

高性能化と高機能化が進むスマートフォン。それに伴い、搭載する電池の容量が増加している。容量が増えれば、充電時間が長くなる。急速充電を行えば、充電時間は短くなるものの、電池の劣化が速まり、寿命が短くなる。そこでTIは、この問題を解決する充電技術「MaxLife™」を開発した。

[PR/EDN Japan]
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 携帯電話機の高性能化や高機能化とともに、搭載するLiイオン2次電池の容量が急速に増加している。かつて、フューチャーフォンでは公称容量が約800mAhのLiイオン電池を載せていた。ところが、最近主流になっているスマートフォンでは、2000mAh程度の電池を搭載するのが当たり前になっている。高機能な機種では、3000mAhを超える大容量の電池を採用するケースも少なくない。

 電池の容量が増えれば、それだけ充電時間が長くなる。容量が3倍になれば、充電時間も約3倍に延びる。しかし、多くのユーザーは、そんなに長い時間は待てない。これを解決する方法としては、急速充電がある。充電電圧を高くしたり、充電電流を多くしたりして、短時間で充電する方法である。

 ところが急速充電には大きなデメリットがある。電池を早く劣化させてしまうことである。一般に2次電池は、充放電サイクルを重ねるにしたがって、容量が徐々に減少していく。急速充電を実行すれば、その減少スピードが極端に速くなってしまうのだ。「まだ購入して間もないのに、電池がほとんど持たない」という事態を招くことになる。

マルチレベル充電方式を導入

 テキサス・インスツルメンツ(TI)では、こうした問題を解決する技術「MaxLife」を開発した。充電時間の短縮と、電池セルの劣化防止を同時に実現する技術である。

 MaxLifeでは、電池電圧(端子電圧)と充放電電流、電池セル温度という三つのパラメータを常時モニターし、それに応じて充電電圧と充電電流を最適化する方法を採用する。従って、充電方式は従来主流だった方法とは異なる。従来は、定電流定電圧(CC-CV:constant current-constant voltage)方式を採用していた。この方式ではまず、電池セルに対して一定の電流(定電流)を供給する。この状態をある程度続け、電池セルの端子電圧が規定値に達すると、定電流充電から定電圧充電へと移行する。そして、端子電圧が4.2Vや4.3Vといった充電終止電圧まで高まると充電が完了するという方式である。現在、ほとんどのLiイオン電池搭載機器は、この充電方式を採用している。

 一方、MaxLifeで採用するのは「マルチレベル充電」と呼ぶ方式である。これは、充電が進むにしたがい、充電電圧と充電電流の両方を小刻みに制御して行く方法だ。つまり、充電電圧と充電電流は一定ではなく、複数のレベル(マルチレベル)をとることになる。「現時点では、この充電方式を採用するLiイオン電池搭載機器は、当社が把握している限りでは、まだ実用化されていない」(日本TI)という。

電池セルの劣化を大幅に抑えられる

 具体的には、マルチレベル充電方式とはどのようなものなのか。以下で、その内容を説明しよう(図1)。

mm130801_ti_sensor4_fig1.jpg 図1 充電プロファイルの比較
上図は、定電流定電圧(CC-CV)方式。下図は、MaxLifeで採用したマルチレベル充電方式である。充電電圧と充電電流を細かく制御する。

 充電当初は、比較的大きな電流を電池セルに供給する。端子電圧が3.9V程度までは、大きな電流で充電しても電池セルはほとんど劣化しないからだ。具体的には、3.9Vまでは1C(1Cは1時間で充電、もしくは放電が完了する電流量のこと)を超える電流で充電する。こうして、まずは充電時間の短縮を図る。

 それ以降は、端子電圧と電池セル温度を監視しながら、充電電流と充電電圧を設定して行く。セル温度が高くなりすぎると、劣化の進行が大幅に速まる。そこで、セル温度が高くなると充電電流を減らし、低くなれば増やすといった制御を実行するわけだ。

 この充電方式の導入効果は極めて大きい。TIのシミュレーションによると、CC-CV方式では当初100%だった容量が500回の充放電サイクルを繰り返すうちに70%に減ってしまうという結果が得られた(図2)。しかし、MaxLifeを適用すれば、70%に容量が減少する充放電サイクルを750回に延ばすことが可能になる。「CC-CV方式では1年でかなり劣化してしまうが、MaxLifeを使えば1年半に延ばせる」。図3は、実測値である。CC-CV方式では、200回の充放電サイクルで容量が約10%減少したが、MaxLifeでは減少幅を約5%に抑えることができる。

mm130801_ti_sensor4_fig2.jpg 図2 充放電による電池セルの劣化シミュレーション
CC-CV方式では500回の充放電サイクルで容量が70%に減ってしまう。一方、MaxLife(マルチレベル充電方式)を適用すれば、70%に容量が減少する充放電サイクルを750回に延ばせる。
mm130801_ti_sensor4_fig3.jpg 図3 充放電による電池セル劣化の実測結果
CC-CV方式では、200回の充放電サイクルで容量が約10%減少したが、MaxLife(マルチレベル充電方式)では約5%に抑えられた。

Impedance Track™技術を利用する

 マルチレベル充電方式を業界に先駆けて実現できるようになった背景には、同社の電池残量計測技術「Impedance Track™(インピーダンス・トラック)」がある。この技術は、その名の通り、電池セルのインピーダンスを捕捉するもの。具体的には、稼働中の電圧と電流、温度をモニターすることで電池セルのインピーダンスを常時把握している。MaxLifeは、この技術を利用することで実現できるようになった。

 このためMaxLifeでは、Impedance Track技術を採用した電池残量計(フューエル・ゲージ)ICと、充電ICの2チップで構成する。今回、電池残量計ICとしては「bp27530」と「bq27531」、充電ICとしては「bq24160」と「bq24190」を製品化した。単セルのLiイオン電池とLiポリマー電池に使える。対応する容量は、bq27530が300mAh〜6000mAh、bq27531が300mAh〜8000mAh。最大充電電流は、bq24160が2.5A、bq24190が4.5A。充電電圧範囲は3.5〜4.4Vである。

 充電電圧と充電電流のプロファイルは、対象となる電池セルの特性をTIが出荷時に測定して、充電ICに書き込んでおく。電子情報技術産業協会(JEITA:Japan Electronics and Information Technology Industries Association)が作成した充電プロファイルに準拠することも可能だ。

*)バッテリ管理チップセットの製品サンプルと評価モジュールについてはこちらを参照。

セキュリティ性能が高まる

 スマートフォンなどのホスト機能を担うアプリケーション・プロセッサとの接続形態は、図4のようになる。

mm130801_ti_sensor4_fig4.jpg 図4 アプリケーション・プロセッサとの接続形態
従来は、ホストとなるアプリケーション・プロセッサに、電池残量計ICと充電ICとも直接接続していた。一方、MaxLifeでは、直接接続するのは電池残量計ICのみ。充電ICは、電池残量計ICの先に接続する。

 一般に、充電アルゴリズムはアプリケーション・プロセッサに格納されている。このため、アプリケーション・プロセッサが電池残量計ICと充電ICを直接制御することになる。つまり従来は、アプリケーション・プロセッサに対して、電池残量計ICと充電ICは並列の関係になるわけだ。

 ただし、この関係だとセキュリティ上の懸念を払拭できないという問題がある。例えば、アプリケーション・プロセッサがウイルスに感染したときだ。ウイルスによって充電アルゴリズムが書き換えられると、電池セルに過大な電圧が印加されたり、非常に大きな電流が供給されたりする危険性を排除できない。「最悪の場合、電池セルの発煙や発火という事故につながりかねない」(日本TI)という。

 一方、MaxLifeでは、充電アルゴリズム(プロファイル)は、電池残量計ICに格納する(図5)。従って、アプリケーション・プロセッサに直接接続するのは、電池残量計ICだけで、充電ICは電池残量計ICの先に接続する。つまり、電池残量計ICと充電ICは直列の関係になる。

mm130801_ti_sensor4_fig5.jpg 図5 ウイルス感染に対する耐性を確保できる
MaxLifeでは、充電プロファイルを電池残量計ICに格納するほか、充電ICをホストに直接接続しない。このため、ウイルスによって充電プロファイルが書き換えられる可能性が少ない上に、電池セルに過大な電圧や電流が供給されることを回避できる。

 こうした接続形態をとるため、仮にアプリケーション・プロセッサがウイルスに感染しても、充電ICを直接制御できないので、電池セルに過大な電圧や電流を供給することを防止できる。しかも、充電アルゴリズムは電池残量計ICに格納されているため、ウイルスの影響を受けづらい。従って、MaxLifeを採用すれば、セキュリティ性能を高められるという副次的な効果も享受できるわけだ。

 さらに、放熱対策という観点で見た場合も、MaxLifeに優位性がある。一般に、アプリケーション・プロセッサは、スマートフォンの高性能化と高機能化に伴って、演算処理量が増加の一途をたどっている。演算処理量が増えれば、発熱量も増えるため、放熱対策が難しくなる。MaxLifeを採用すれば、アプリケーション・プロセッサから充電制御という処理を切り離すことが可能になる。その分、アプリケーション・プロセッサの発熱量を抑えられるため、放熱対策が容易になるわけだ。

※MaxLife およびImpedance TrackはTexas Instrumentsの商標です。その他すべての商標および登録商標はそれぞれの所有者に帰属します。



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提供:日本テキサス・インスツルメンツ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2014年3月31日

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