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» 2013年08月26日 10時35分 UPDATE

岩通計測 SY-956:省エネ化に欠かせない! 板状磁性材料の特性を高確度に測定する装置

岩通計測は、これまで正確に測定できなかったシート状や板状の「単板」と呼ばれる形状の磁性材料の鉄損(コアロス)を高確度に測定できる小型単板磁気測定装置「SY-956」を開発した。

[竹本達哉,EDN Japan]
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 岩通計測は2013年8月23日、これまで正確に測定できなかったシート状や板状の「単板」と呼ばれる形状の磁性材料の鉄損(コアロス)を高確度に測定できる小型単板磁気測定装置「SY-956」を開発した。従来の単板磁気測定装置では、長さ280mm以上の単板の測定に限られたが、開発した装置は、長さ36mmの小さな単板にも対応できる特徴を持つ。磁性材料メーカーの他、電子部品やモーターのメーカー、電子機器メーカーなどでの利用を見込む。

 省エネ化を実現する上で、パワーエレクトロニクスで必ず使用される軟磁性体(永久磁石ではない電磁石の鉄芯材料)のコアロスを抑える必要性が高まっている。コアロスとは、磁性体に与えられた電気エネルギーのうち磁化されないエネルギー損失のこと。コアロスが低いほど、電力エネルギーが無駄にならない。

軟磁性体の単板の特性を正確に測ることは難しかった

 低コアロスの軟磁性体材料の開発が活発化する中で、「コアロスを容易かつ正確に測定する技術が確立されていなかった」(同社)という。現在、コアロスを高確度で測定できるのは、閉磁路構造と呼ばれるリング形状の軟磁性体などに限られ、シート状や板状の単板の軟磁性体を高確度で測定することは難しかったとする。

tt130823IWATSU_K001.jpgtt130823IWATSU_K002.jpg 単板の例(左)と単板を積層して作る閉磁路構造の磁性体の例 (クリックで拡大) 出典:岩通計測

 モーターやトランス、リアクトルに使用される磁性体は、立体的な形状の閉磁路構造だが、単板を積層することで立体的な形状を実現している。そのため、単板での特性を正確に把握することで、さまざまな形状の磁性体をより意図通りに作ることができる。しかし、これまでは、単板での特性を正確に把握できなかったため、手探りの状態で立体的な磁性体を試作するなど、手戻りの多い状況での開発が強いられてきた。

これまでの一般的な測定方法は単板が12本必要だった

tt130823IWATSU_K003.jpg エプスタイン法のイメージ (クリックで拡大) 出典:岩通計測

 これまで、単板のコアロスなどの特性を測る方法としては50年以上前に開発されたエプスタイン法が今も広く用いられている。この方法は、単板を12枚以上用意して、その単板を井桁に組み、閉磁路を構成。閉磁路状にした状況で、測定を行うというものだった。しかし、全く同じ特性、形状の単板を12枚以上用意する必要がある他、井桁に組むため、四隅の部分と各辺の部分で、磁束密度が異なるなど、高確度を得ることは極めて難しい方法だった。

 1枚の単板でその特性を測定する励磁電流法という手法も開発されている。これは、単板を「U字型の磁性体」(ヨーク)で挟んで閉磁路を構成し、測定するというもの。しかし、この手法では測定値に測定対象ではないヨークのコアロス(ヨークロス)などの磁気特性が含まれるという課題があった。同じようにヨークで1枚の単板を挟み測定するHコイル法という方法では、コークの特性を除いた正確な単板の特性を測定できるが、測定用コイルが複雑(4種5個のコイルが必要。他の方法は1種2個で済む)という欠点があり、Hコイル法を用いた装置は製品化されていないという。

tt130823IWATSU_K004.jpgtt130823IWATSU_K005.jpg 1枚の単板から特性を測定する励磁電流法(左)とHコイル法(右)の概要 (クリックで拡大) 出典:岩通計測

手軽に正確な単板の特性を測定する新手法

tt130823IWATSU_K000.jpg 開発した単板磁気特性測定装置「SY-956」

 1980年代から、閉磁路構造の磁性体の特性を測定する磁気測定装置(BHアナライザ)を販売してきた岩通計測は、手軽に正確な単板の測定を行いたいというニーズに応えて単板測定用の装置開発に着手。そして、今回、新たな測定手法を用いた単板磁気特性測定装置SY-956を開発した。

 新装置に用いた新測定手法とは、励磁電流法をアレンジしたもの。従来の励磁電流法では2つのU字型のヨークで測定する単板を挟んだが、新測定法では、1つのU字型ヨークに単板を載せる形で、閉磁路構造を作り測定する。この場合、従来の励磁電流法同様に、ヨークロスを含む測定値しか得られない。そこで、単板を載せたヨーク(測定ヨーク)とは別に、そのヨークとほぼ同じ材料/形状の2個のU字型ヨーク(参照ヨーク)を用意。参照ヨークを使ってヨークロス分を割り出し、そのヨークロス分を差し引いて、単板単独のコアロスなどの特性を測定するというもの。これにより、より簡易的な装置で、正確な磁性特性を測定できるという。

tt130823IWATSU_K006.jpgtt130823IWATSU_K007.jpg 左=開発した新測定方法の原理 出典:岩通計測 /右は、さまざまなサイズの単板と、SY-956に内蔵している測定ヨークと参照ヨーク。「部材メーカーだけでなく、モバイル機器メーカーなど国内外のさまざまな企業から、小さな単板を正確に測りたいという要求があった」(同社担当者)という (クリックで拡大)

IEC規格外の小さな単板でもOK

 従来の単板測定装置は、IECなどの規格で定められている幅30×長さ280〜300mmサイズの単板を10KHzまでの周波数域で測定する装置がほとんどだった。しかし、「小さな単板を測りたい、20KHzの可聴域まで測りたい」というニーズが多く、それらの声にも応えた」とし、長さ36mmの小さな単板でも測ることのできる小型サイズを実現し、測定周波数も20KHzまで対応した。

 「これまでは、不確かな単板の特性情報を頼りにデバイス、モーター用などの磁性体設計を強いられていたが、手軽に単板の確かな特性を把握して、一発で意図した磁性体を設計開発できるようになる。パワーエレクトロニクスのさらなる低損失化に貢献するだろう」とした。

 なお、SY-956を使用するには、閉磁路構造磁性体用BHアナライザ「SYシリーズ」本体との接続が必要になる。SY-956の価格は298万円(税別)で年間45台の販売を見込んでいる。

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