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電流帰還オペアンプを用いたRF帯発振器Design Ideas アナログ機能回路

今回提案するアイデアでは、アンプの入力段を基本的なコルピッツ型発振器の電圧フォロワーとして使う。電流帰還アンプの非反転入力端子をフォロワー入力、反転入力端子をフォロワー出力に用いる。

» 2013年09月27日 11時55分 公開
[Victor Koren,Tioga Technologies]

 電流帰還アンプは多くの用途に使われているよく知られた部品だ。基本ブロック図によると入力段は電圧フォロワーで、一般的には対称型のエミッタ・フォロワーを使う(図1)。

 電流帰還アンプの入力は、このアンプの出力電流を利用して、帰還をかけていることになる。この出力電流を高いインピーダンスを使って電圧に変換する。さらに、変換した電圧を、出力が大きく出力インピーダンスが低いアンプで増幅して出力する。


図1 一般的な電流帰還アンプ
電流帰還アンプの入力段は電圧フォロワー回路である。

 今回提案するアイデアでは、アンプの入力段を基本的なコルピッツ型発振器の電圧フォロワーとして使う。電流帰還アンプの非反転入力端子(VP)をフォロワー入力、反転入力端子(VN)をフォロワー出力に用いる。アンプの出力段は、比較的高い電力のバッファー出力を得るために使う。図2は基本的なコルピッツ型発振器である。アンプの入力電圧フォロワーは、発振器の能動素子として用いた。

図2 電流帰還アンプを用いたコルピッツ型発振器
きれいな正弦波出力を得るために電流帰還アンプを採用した。

 この発振器には2つの特徴がある。1つは、発振振幅を制限するためにバック・ツー・バックで接続したダイオード(クランプ・ダイオード)を共振回路と接続した点。こうして、電圧フォロワーの直線性を確保した。2つ目は、共振回路の中間出力と電圧フォロワーの出力を抵抗ROSCを介して接続した点。これにより、直線性を改善するとともに帰還量を決定している。ROSCは330Ωである。この抵抗値にしたことで、共振回路に接続したダイオードはクリッピング動作をする(共振回路の出力電圧VRESは1VPPである。これは2つのダイオードがそれぞれ0.5Vのピーク電圧を持つため)。

 図3は、共振回路の出力電圧VRESを測定した結果である。帰還抵抗RFとしては、アンプメーカーの推奨値を用いる。この回路ではアンプに、米National Semiconductor社の「LM6181」を用いた。このためRFには1kΩを採用した。

図3 共振回路の出力電圧VRESの測定結果
図2に示した共振回路の出力VRESはきれいな正弦波となった。

 コルピッツ型発振器の出力電圧VOUTを計算するのは簡単である。まず、VRES=1VPP、VINV=VRES=1VPPとする。ここで、電圧バッファーの利得は1であるので、抵抗ROSCにおける電圧はV(ROSC)=VINV−VRES/2となる。共振回路に使った2つのコンデンサーは同じ値(1nF)であるため、共振回路の中間出力電圧はVRES/2である。さらに、V(ROSC)=VRES-VRES/2=0.5VPPなので、抵抗ROSCを流れる電流は、I(ROSC)=V(ROSC)/ROSCとなり、帰還抵抗を流れる電流はI(RF)=I(ROSC)と決まる。アンプの負帰還は反転入力電流を打ち消す働きをする。このため発振器の出力電圧はVOUT=V(RF)+VINV=RF×I(RF)+VINV=1000×(0.5/330)+1=2.51VPPと求まる。

 さらに高い出力電圧が必要なら、反転入力端子と接地間に抵抗RGを追加すればよい。ここでは100Ωを挿入した。この場合、抵抗RGを流れる電流はI(RG)=VINV/RGとなり、帰還抵抗RFを流れる電流はROSCとRGを流れる電流の和となる。従って、出力電圧はVOUT=V(RF)+VINV=RF×I(RF)+VINV=1000×(0.5/330+1/100)+1=12.51VPPとなる。図4にRG=100Ωとしたときの、発振器の出力を観測した結果を示した。

図4 コルピッツ型発振器の出力電圧VOUTの測定結果
図2のコルピッツ型発振器の出力VOUTでもきれいな正弦波が得られた。

 LM6181の出力電流は最大100mAである。100Ωの負荷(50Ωの出力終端抵抗と50Ωの負荷抵抗の合計)を±63mAPP(±6.3V/100Ω)で駆動するのに十分な電流である。50Ωの抵抗負荷における駆動電圧はピーク値で3.15V、実効値で2.23Vrmsとなる。従って、駆動電力は約20dBm(100mW)となる。この出力電力があれば、高電圧のダイオードで構成するダブル・バランスド・ミキサーを直接駆動したり、高出力のパワー・アンプできれいな正弦波を供給したりできる。

 このほか、この共振回路のチューニングに使う素子は、ほかの素子に置き換えられる。例えば、インダクターは水晶振動子に置き換え可能だ。この際、共振回路を構成する2個のコンデンサーは68pFといった適切な値に変更する。さらに、アンプの非反転入力端子にバイアス電流を供給するため、非反転入力端子と接地間に10kΩ程度の大きな抵抗を挿入する必要がある。


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※本記事は、2008年7月29日にEDN Japan臨時増刊として発刊した「珠玉の電気回路200選」に掲載されたものです。著者の所属や社名、部品の品番などは掲載当時の情報ですので、あらかじめご了承ください。
「珠玉の電気回路200選」:EDN Japanの回路アイデア寄稿コラム「Design Ideas」を1冊にまとめたもの。2001〜2008年に掲載された記事の中から200本を厳選し、5つのカテゴリに分けて収録した。

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