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» 2013年11月26日 15時00分 UPDATE

Design Ideas パワー関連と電源:突入電流を低減できる時間遅延リレー

今回は、機械式接点を用いるスイッチを使う際の突入電流を抑える方法を紹介する。スイッチング動作時だけ直列抵抗を挿入するものだ。

[P Seshanna,タイ アサンプション大学]

 トランスのライン側(1次側)で発生するスイッチング動作は、回路ブレーカーを落としたり、ヒューズを溶断したりする原因になることがある。この現象は、トランスの2次側がオープン、すなわち負荷を接続していない場合にも起こる。トランスに流れ込む突入電流による大きな磁界変化によって発生する。

 突入電流の振幅は、トランスに通電する瞬間の入力交流電圧の波形に依存する。振幅が最大値になるのは、交流波形がちょうどゼロを通過するときに、トランスに通電する場合である。こうした現象は、力率改善(PFC)回路*1)で使用するコンデンサーがライン側に切り替わるときにも起きる。この場合は、交流波形がピーク値に達するときに突入電流が最大になる。

*1)一般に力率とは、皮相電力に対する有効電力の割合。入力電圧波形と入力電流波形が同じ波形で、位相のズレがなければ、力率は1になる。しかしスイッチング電源のコンデンサー入力型整流回路は、入力電圧波形は正弦波になるが、入力電流波形は大きく崩れる。このため実効電力が小さくなり、力率が低下する。これを改善する回路を力率改善回路と呼ぶ。一般に、アクティブ・フィルター回路などが用いられている。

 通常、機械式接点を使うスイッチでは、こうした瞬間に何も制御しない。突入電流が指数関数的に減衰し、負荷の正常な動作範囲に数サイクルで落ち着くのを待つ。もしくは最初の突入電流でブレーカーが落ちた場合には、ブレーカーを入れ直して回路に再通電し、無事を祈るしかない。

 今回は、こうした現象の対策方法を提案する(図1)。スイッチング動作時だけに直列抵抗R1を挿入し、過渡期間が過ぎたらこの抵抗を短絡することで、突入電流を抑える回路である。最近よく見られるのは、PTCサーミスター*2)を使う方法である。PTCサーミスターは、スイッチング動作が起こった瞬間に抵抗が高くなり、突入電流を抑える。数サイクル後には、抵抗は低くなり、負荷は正常な動作状態に戻れる。しかし、負荷が限定される。スイッチング電源のような用途に向く。

*2)温度が上昇すると電気抵抗が急激に上昇し、電流を流れにくくする回路保護素子。

mm131126_di1.jpg 図1 デジタル・プログラマブル電流源
通信システムに搭載するVCSEL(面発光型半導体レーザー)の駆動に適している。

 図1に示した回路は、抵抗器そのものを負荷に直列に挿入し、突入電流を抑え、ある時間をおいてこの抵抗を短絡する。この方法ならば、直列抵抗とリレーの接点容量を適切に選ぶことで、どんな大きさの負荷にも対応できる。PTCサーミスターを使用する手法の欠点は、ジュール熱を吸収する容量に限界があることだ。図1の回路ならば、突入電流を引き込む負荷を接続した交流ラインにも、直接用いることができる。

 リレーのコイルの定常状態における直流電流仕様によって、そのほかの回路素子の値が決まる。コンデンサーC2は、整流電流の平均値IAVEがリレーのコイルに必要な電流値(リレー電流)と等しくなるように選ぶ。コイル抵抗は、商用周波数におけるC2の容量性リアクタンスより小さい値にする。これらの条件により、平均整流電流を近似的にIAVE=V(2πfC2)/1.11と置く。ここでVはライン電圧の平均値(220V)、fは商用周波数(50Hz)である。リレー電流がわかれば、コンデンサーC2とブリッジのダイオードが決まる。

 コンデンサーC1の容量は、遅延時間を決めるパラメーターになる。C1に掛かる電圧は時定数τ=RLC1で指数関数的に上昇する(図2)。すなわちリレーのピックアップ電圧とコイル抵抗RLがわかれば、C1の容量が決まる。

mm131126_di2.jpg 図2 短絡までに要する時間
時間遅延リレーは、負荷に直列接続した抵抗を330 msと短い時間で短絡できる。

 図1を見ればわかるように、主スイッチを投入すると、突入電流を引き込む負荷と時間遅延リレーの両方に同時に通電する。そして定平均電流源がコンデンサーとリレーを駆動し、直流電圧が指数関数的に上昇していく。この電圧がリレーのピックアップ電圧に達すると、直列抵抗器に並列に接続したノーマリー・オープンのリレー接点が閉じ、抵抗を短絡する。主スイッチを切ると、リレーのコイルに掛かる電圧が指数関数的に下降していく。この電圧がリレーのドロップアウト電圧に達すると接点が開く。抵抗は再び負荷と直列接続になり、次のスイッチング動作を待つ。実験に用いた12Vリレーのピックアップ電圧は約6Vである。接点が閉じるまでの時間は、図2に破線で示すように330msである。

 以下に、回路設計のポイントを示す。

  • リレーの正常動作電圧は商用交流電圧よりも低く、さらに10%未満でなければならない
  • コンデンサーC2がリレーの平均動作電流を決める
  • リレーの接点容量は負荷電流の仕様に十分対応できるものを選択する。図1に使ったリレーは小さく、コイルの定格仕様は直流12V、接点容量は交流220Vで5Aである。コイルの抵抗の測定値は約160Ωだった

 図1の抵抗R2は、主スイッチを投入した際に発生する時間遅延リレーへのサージ電流を抑えるために挿入した。ツェナー・ダイオードDZは、リレーのコイルがオープンになったときに、コンデンサーC1にかかる電圧を15V以下に制限する役割を果たす。


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※本記事は、2008年7月29日にEDN Japan臨時増刊として発刊した「珠玉の電気回路200選」に掲載されたものです。著者の所属や社名、部品の品番などは掲載当時の情報ですので、あらかじめご了承ください。
「珠玉の電気回路200選」:EDN Japanの回路アイデア寄稿コラム「Design Ideas」を1冊にまとめたもの。2001〜2008年に掲載された記事の中から200本を厳選し、5つのカテゴリに分けて収録した。

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