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ΔΣ(デルタ・シグマ)型ADコンバータこれだけは知っておきたいアナログ用語

» 2013年12月17日 00時00分 公開
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ΔΣ型ADコンバータ

 ΔΣ(デルタ・シグマ)型ADコンバータは、ΔΣ変調技術を利用してアナログ信号をデジタル信号に変換するADコンバータのこと。日本国内では、ΔΣ(デルタ・シグマ)と表記する場合が多いが、欧米ではΣΔ(シグマ・デルタ)と表記することが多い。表記方法は異なるが、同じものを指している。

 ADコンバータには、複数の実現方式がある。例えば、逐次比較(SAR)型や、パイプライン型、フラッシュ型などである。こうした方式のADコンバータと比べると、ΔΣ型の方が高い分解能が得られるという長所がある。具体的には12〜24ビットと高い分解能が得られる。

 しかしその一方で、サンプリング速度(標本化速度)は、他の方式に比べると低い。一般には数k〜数百kサンプル/秒である。ただし、最近では回路方式の工夫などによりMサンプル/秒オーダーと高い製品が入手できるようになっている。

 ΔΣ方式のADコンバータの主な用途は、オーディオ機器やテスト/計測機器などである。

減算器と積分器で構成

 ΔΣ型ADコンバータは、大きく2つの回路ブロックから構成されている。1つはΔΣ変調器。もう1つはデジタル・フィルタである。ΔΣ変調器は、1ビットのADコンバータとして機能する。つまり、アナログ信号をオーバーサンプリングすることで、振幅が0と1のパルス信号に変換するわけだ。デジタル・フィルタでは、ΔΣ変調器で発生した量子化雑音を取り除く処理と、間引き(デシメーション)によってサンプリング周波数を低くする処理を実行する。

図1 ΔΣ変調器の構成
減算器(Δ)と積分器(Σ)、量子化器、1ビットDAコンバータの4つの回路ブロックからなる。この4つの回路ブロックを使って、アナログ入力信号をデジタル出力信号に変換する。ΔΣ型ADコンバータを実現するには、この後段にデジタル・フィルタを用意する必要がある。

 ここでΔΣ型ADコンバータの心臓部に相当するΔΣ変調器について説明しよう。ΔΣ変調器は、大きく4つの回路ブロックから構成される。すなわち、減算器(Δ)と積分器(Σ)、量子化器、1ビットDAコンバータの4つである(図1)。減算器は差動アンプで構成されており、まずは入力アナログ信号と、基準信号(+Vref、もしくは−Vref)の減算を実行する。次の積分器では、減算器での計算結果を累積加算していく。そして量子化器において、積分器の計算結果と基準信号を比較して、0か1かのデジタル値を決定するわけだ。この結果を1ビットDAコンバータに入力し、減算器で使う基準信号を決める。そして、減算器へフィードバックする仕組みだ。1であれば+Vref、0であれば−Vrefを減算器に送ることになる。

 この構成が1次のΔΣ変調器である。減算器と積分器の組数を増やすことで高次のΔΣ変調器を実現できる。高次になればなるほど、量子化雑音を高周波側に移動させることができ、変換精度を高められる。これをノイズ・シェーピングと呼ぶ。高周波雑音は、後段のデジタル・フィルタで取り除く。こうすることで、変換精度が高く、雑音(ノイズ)の少ないデジタル出力信号が得られる。

図2 ΔΣ型ADコンバータの内部構成
テキサス・インスツルメンツ(TI)のΔΣ型ADコンバータ「ADS1675」の内部構成図である。ΔΣ変調器の後段に、デジタル・フィルタが接続されている。

 ΔΣ型ADコンバータの具体例としては、テキサス・インスツルメンツ(TI)の「ADS1675」が挙げられる(図2)。分解能が24ビットと高い高精度ながらも、最大サンプリング速度が4Mサンプル/秒と高い点が特長だ。さらに交流(AC)特性と直流(DC)特性も高い。AC特性については、4Mサンプル/秒動作時のダイナミック・レンジが103dBと広く、全高調波歪みが−107dBと低い。DC特性は、積分非直線性誤差(INL)が3ppmで、入力オフセット電圧の温度ドリフトが4μV/℃を実現している。自動テスト機器や、医療用画像処理装置、科学用測定機器、計測器などに向ける。



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提供:日本テキサス・インスツルメンツ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2014年3月31日

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