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1セル乾電池で白色LED をフラッシュ点灯Design Ideas ディスプレイとドライバ(1/2 ページ)

一般に、白色LEDの順方向電圧は3〜5Vであるため、公称電圧が1.5Vのアルカリ乾電池1セルで駆動するのは難しい。1Vといったより低い電圧では、白色LEDの駆動はさらに難しくなる。だが、今回は、1Vと低い電源電圧で白色LEDをフラッシュ点灯(点滅)させる回路を、個別半導体素子で実現する方法を紹介する。

» 2014年01月29日 08時00分 公開
[Anthony Smith,Scitech]

 1セルのアルカリ乾電池で駆動する携帯型機器などは、非常に低い電圧で動作できるように設計しておく必要がある。一般に、白色LEDの順方向電圧は3〜5Vであるため、公称電圧が1.5Vのアルカリ乾電池1セルで駆動するのは難しい。1Vといったより低い電圧では、白色LEDの駆動はさらに難しくなる。

 今回は、1Vと低い電源電圧で白色LEDをフラッシュ点灯(点滅)させる回路を、個別半導体素子で実現する方法を紹介する(図1)。この回路を使えば、RC時定数によって設定した周期で白色LEDの点滅駆動が可能である。玩具やセキュリティ機器、小型ビーコン装置などの他、1セル乾電池でフラッシュ点灯を利用したい機器に応用できる。

図1:1セル乾電池で白色LEDをフラッシュ点灯する回路。1セル乾電池の端子電圧を昇圧して、白色LEDをフラッシュ点灯(点滅)させる。個別半導体素子を使って実現した (クリックで拡大)

 図1において、トランジスタQ1とQ2、および抵抗R3とR4、R5は簡単なシュミット・トリガー回路*1)を形成している。このシュミット・トリガー回路と抵抗R1、R2、およびコンデンサーC1によって白色LEDのフラッシュ点灯を制御する。

*1)入力信号の論理値のハイ/ローを判断するしきい値が2つあるデジタル回路。単安定マルチバイブレータなどに良く用いられている。入力信号をハイレベルと判断するしきい値(上側しきい値)と、ローレベルと判断するしきい値(下側しきい値)がある。

 トランジスタQ4、Q5とインダクターL1、さらにそれらの周辺部品は昇圧回路として機能する。この昇圧回路は、1セル乾電池の端子電圧VSを白色LEDの駆動に十分な電圧まで高める役割を担う。トランジスタQ3は昇圧回路の動作を、シュミット・トリガー回路によって決まる周期でオン/オフするスイッチとして機能する。

昇圧回路の動作を理解するための仮定

 昇圧回路の動作を理解するため、次のように仮定しよう。すなわちトランジスタQ3は完全にオンしており、Q4のエミッタ電圧は電池から供給される電圧VSにほぼ等しくなっている。このときQ5には、Q4とR8を介してバイアス電圧が印加される。バイアス電圧が印加されるとQ5がオンし、インダクターL1を介して電流ILを引き込み始める。ILが立ち上がる際のスルー・レートは、VSとL1の値でほぼ決まる。ILが立ち上がる間、LED1に加えてこれに直列接続したダイオードD1は逆方向にバイアスされている。インダクターL1に流れる電流は、ピーク値ILPEAKに達するまで増え続ける。ILPEAKに達すると、Q5は電流の増加に対応できなくなる。するとL1にかかっている電圧の極性が反転する。この結果、いわゆるフライバック電圧*2)が発生する。フライバック電圧によって、LED1の正極の電位はVSよりも高くなり、LED1とD1を順方向にバイアスできるようになる。

*2)インダクター(誘導性負荷)に流れる電流を急激に変化させることで発生する高電圧のこと。

 同時に、フライバック電圧はC3およびR10を介してQ4のベース端子にも供給される。これによってまずQ4がオフし、続いてQ5がオフする。この状態では、インダクターL1に流れる電流ILはL1とLED1、D1を循環することになる。L1に蓄積されていたエネルギーが減少するにしたがってILは減少し、最終的にはゼロになる。するとL1にかかっている電圧の極性が再び反転する。この変化はC3を介して直ちにQ4に伝わり、Q4はオンする。続いてQ5がオンすると、L1を流れる電流が再び増加し始める。こうして最初の状態に戻り、同じ過程を繰り返す。

昇圧回路の発振周波数

 昇圧回路の発振周波数は、VSとL1、R8の値で決まるQ5の順方向電流利得や、LED1の順方向電圧などによって決まる。図1に示した回路では、発振周波数は50k〜200kHzになる。この周波数で、ピークがILPEAKの電流パルスがLED1に印加される。電流パルスは1秒当たり数千回もLED1に供給される。このため、LED1は連続的に点灯しているように見える。

 シュミット・トリガー回路とその周辺部品は、低い周波数の発振器を構成している。この発振器で昇圧回路をオン/オフする。この動作を理解するため、Q1がオフでQ2がオンしていると仮定しよう。ここでQ2の順方向電流利得がかなり大きいとすれば、ベース電流の影響を無視できる。すなわちQ2のベース電圧VB2は、VSの値と、R3とR5から成る抵抗分圧器の分圧比によって決まる。図1に示したR3とR5の抵抗値では、VSが1VのときにVB2は約800mV〜900mVになる。

 VB2がこの値のときは、R4に約300mV〜400mVの電圧がかかる。この結果、Q2のコレクタ電流は、R4が20kΩの場合に少なくとも15μAになる。Q2のコレクタ電流がQ3のベース端子を駆動して、Q3を飽和させる。すると昇圧回路がオンしてLED1を点灯させる。LED1が順方向にバイアスされると、C4はある電位VPに達するまで充電される。ここで、VPはVSよりもダイオード1個の電圧降下分だけ高い電位である。

 C4に続いて、タイミング調整用に設けたコンデンサーC1が、R1を介して充電される。充電時の時定数は主に、VPとR1、R2、C1の値によって決まる。R1とR2の抵抗値の比を適切に設定しておけば、Q1のベース電位VB1はVB2(シュミット・トリガー回路の上側しきい値電圧VTUにほぼ等しい)よりも高くなる。この結果Q1はオンになり、Q2はオフになる。この時点でQ3もオフになり、昇圧回路の動作は停止する。こうしてLED1を消灯する。

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