SDR用トランシーバの開発を迅速に、ADIがプラットフォーム追加：アナログ・デバイセズ AD-FMCOMMS4-EBZ

　アナログ・デバイセズ（ADI）は2014年2月27日、ソフトウェア無線（SDR：Software Defined Radio）システム向けのトランシーバソリューションとして2種類のプラットフォームを新たに追加し、発表した。シングルチャネル対応のトランシーバFMC（FPGA Mezzanine Card）モジュール「AD-FMCOMMS4-EBZ」と、デュアルチャンネル対応のトランシーバFMCモジュール「AD-FMCOMMS3-EBZ」だ。また、ADIのWeb上には開発を支援するためのデザインファイルや、トランシーバFMCモジュールのドキュメント、デバイスドライバなどが用意されている。これらをダウンロードして回路設計に活用すれば、SDR用トランシーバの開発を迅速に行うことが可能となる。

　ADIは、1チップにRFフロントエンドやミックスドシグナルベースバンド回路、周波数シンセサイザ、A-Dコンバータ、ダイレクトコンバージョンレシーバなど送信系統と受信系統を2回路ずつ集積したRFトランシーバIC「AD9361」を、2013年10月に発表した（関連記事：ソフトウェア無線向けRFトランシーバ、広範な周波数帯で動作）。このICを搭載したトランシーバFMCモジュールがAD-FMCOMMS3-EBZである。70MHz〜6GHzの周波数範囲で動作する。価格は750米ドルである。

シングルチャネルのRFトランシーバIC「AD9364」の外観 出典：アナログ・デバイセズ

　そして今回、AD9361の性能や特性を維持しつつ、シングルチャネルのRFトランシーバICとして「AD9364」を新たに開発した。AD9361と同様に周波数範囲は70MHz〜6GHzに対応し、1Hz単位で設定することができる。ベースバンド帯域幅も200kHz〜56MHzと広い。競合製品に比べて、「周波数範囲は69％、チャネル帯域幅は111％、それぞれ拡大することができた」（同社）と話す。また、従来だと5、6個のICとディスクリート部品を組み合わせて実現していた機能ブロックを、AD9364では1チップに集積して、外形寸法が10×10mmの144端子CSPで供給する。

シングルチャネルのRFトランシーバIC「AD9364」の回路ブロック図 （クリックで拡大） 出典：アナログ・デバイセズ

　このAD9364を実装したトランシーバFMCモジュールがAD-FMCOMMS4-EBZである。防衛用電子機器、RF試験用機器、通信用インフラ装置などの用途に向ける。価格はAD9364が130米ドル（1000個購入時の単価）、AD-FMCOMMS4-EBZが399米ドルである。

AD9364を実装したトランシーバFMCモジュール「AD-FMCOMMS4-EBZ」の外観 （クリックで拡大） 出典：アナログ・デバイセズ

　ADIは、RFトランシーバICやトランシーバFMCモジュールの供給に加えて、SDRシステムの回路設計をWeb上で支援する環境も整えている。例えば、同社Webサイト上から、IBISモデルやインピーダンスマッチングに関する情報、推奨する電子部品などのファイルをダウンロードすることができる。また、Wiki上にはトランシーバFMCモジュールのドキュメントやデバイスドライバなどが用意されている。

SDRシステムの回路設計をWeb上で支援する環境も整えた （クリックで拡大） 出典：アナログ・デバイセズ

　同社はSDRプラットフォームとして、これまでもシングルチャネル対応のトランシーバFMCモジュール「AD-FMCOMMS1-EBZ」と、デュアルチャンネル対応のトランシーバFMCモジュール「AD-FMCOMMS2-EBZ」を提供してきた。今回、2種類を新たに追加し、合計4種類のSDRプラットフォームを用意したことになる。この他、アブネットはFPGA開発プラットフォームに、アナログ・デバイセズのトランシーバFMCモジュールを実装した評価ボードを供給している。