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IoTのためのデバイスとローカルネットワークIoTの設計(3/4 ページ)

» 2014年03月07日 09時30分 公開
[Christian Legare,EDN]

WSN技術

 ネットワークプロトコル間での市場争奪戦はまだまだ終わりそうにない。有望株が幾つかある。初期には、BerkeleyのEmberZNetやTinyOSといったメーカー開発のメッシュ型ネットワークスタックがあった。しかし、市場の成長とともに動作の互換性や供給源の複数化を実現するために、標準規格をベースとするソリューションの適用が要求されるようになった。メッシュ型ネットワーキングおよびワイヤレスセンサーネットワークに向けて開発された最新の要素がアプリケーションプロトコルだ。こうした努力がZigbeeやZ-WaveあるいはAntなどの新しい標準規格の出現につながっている。

 IoTデバイス向けネットワーキング技術の第1の有望株がユビキタス性に優れたWi-Fiだ。Wi-Fiは多くの用途に対し効果的なソリューションであることは確かだ。インターネット接続用設備を有する家庭は全てWi-Fiルータを利用する。このWi-Fiアクセスポイントは家庭内の他のあらゆるデバイスに対して使用可能であり、しかもIPに対応する。NEST研究所(現在はGoogleの1部門)によるサーモスタット(Nest Learning Thermostat:学習型サーモスタット)やCraftsmanの車庫ドア開閉機がよい例だ。

 しかしながら、Wi-Fiはかなりの電力を必要とする。モノの分野では、バッテリー動作のデバイスやグリッドから電力を受けることのできないセンサーのようにWi-Fiの動作に必要な電力の供給を受けられないデバイスが多数ある。

 ワイヤレスセンサーネットワーク用の最新ネットワーキング技術が、低コスト、低電力のソリューションの開発の推進力となっている。これらの技術は、センシングとデータ収集のための小型インテリジェントデバイスから構成される非常に大きなネットワークをサポートするものだ。現在の主要な研究開発は次のようなことに焦点が置かれている。

 ・数年間のバッテリー寿命を可能とする低電力、高効率の無線通信

 ・特に将来的な低電力無線通信を考慮したIoTデバイス向け電源としての環境発電

 ・人間の介在を要しない長時間無人動作を実現する高信頼・メッシュ式ネットワーキング(つまり、M2Mネットワーク)

 ・自立動作を可能とするアプリケーションプロトコルとデータフォーマットに対する新しい標準規格

 IoTの実現を支える主要技術の1つが2003年に発行されたIEEE802.15.4(以下、15.4)無線規格だ。この規格は商用無線の低電力システムの基盤となるものだ。このIEEE規格は2006年および2011年に15.4eおよび15.4gの修正条項を含むよう拡張、改善された。商用RFデバイスの消費電力はここ数年間で半減され、次世代デバイスではさらに50%の削減が期待されている。

 例えば、EnOceanは消費電力課題に対応するための環境発電式ワイヤレス技術の特許を持っている。EnOceanの技術は、ヨーロッパでは868MHz、北アメリカでは315MHzの周波数で動作する。送信距離は建物内で30m、屋外で300mに達する。

 環境発電技術を利用するデバイスでは、デバイスを動作させるプロセッサおよびソフトウェアは可能な限り最短の時間内でタスクを実行することが要求される、つまり、送信メッセージは可能な限り短くなければならない。この要求はプロトコル設計の方向性を示すものだ。そして、このことは、カプセル化やヘッダ圧縮のメカニズムにより短時間送信が可能になるという特徴を持つ6LoWPAN(short for IPv6 over Low power Wireless Personal Area Networks)をARM(Sensinodeの買収により)やCisco(ArchRock社の買収により)が採用した理由の1つだ。

 さまざまな業界向けに専用化された多種多様なワイヤレスネットワークがある。以下に、簡単なリストを示す。

  • 6LoWPAN
  • ZigBeeおよびZigBee IP
  • ANT
  • Z-Wave
  • Bluetooth
  • Wireless Hart
  • Wireless M-Bus
  • ISA100
  • DASH7

 IoTデバイスに対する接続性要求は非常に幅が広いことから、広範囲な技術が必要とされる。1つの技術で距離、電力、サイズ、コストなどに関する全ての要求を満足することは不可能だ。しかしながら、筆者は、IPパッケージを伝送可能なプロトコルがその他のものに比べて有力だと考えている。おそらく、これらの技術が最終的な勝者になるだろう。6LoWPANがWSN用の選択肢となり、インターネットバックエンドサービスにおけるIPベースプロトコルの優位性を示すことになると確信している。

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