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» 2014年06月09日 09時30分 UPDATE

津田建二の技術解説コラム【海外編】:知ってるつもりの外国事情(3)――ジャーナリストから見たエレクトロニクス広報の日米の違い

今回は少し毛色の変わった分野として、エレクトロニクス企業の広報について、日米を比較してみます。長い間、ジャーナリストという仕事をしていますと、広報部門とは長く付き合ってきました。広報は英語ではPublic Relation(PR)と言いますが、日本語でPRといえば、宣伝のことを指すことが多いようです。しかし、広報(PR)は文字通り広く知らしめるという意味で、自分の有利な方向に導く「宣伝」とは違います。米国は広報やジャーナリズムの先進国です。日本とは何がどう違うのでしょうか。

[PR/EDN Japan]
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“広報 先進国”のアメリカはオープン

 エレクトロニクス産業の広報は、米国では企業の知名度、理解度を高めるためにオープンなところが多いです。取材に対しては極めて協力的です。企業側は、自社の認知度を上げるためにメディアを利用することに熱心です。企業を理解するのに必要な会社情報、製品やサービス情報など公開できる情報に関しては、メディアが要求すればまず開示してもらえます。広報部門は、寄稿に関してもメディアに掲載してもらえるように働きかけてきます。

 日本は最近こそ、広報が広く知らせるという役割を理解する所が増えてきましたが、自社情報をいまだに隠したがるところもあります。取材を広報に申し込んでも、限られたメディアにしか取材させない企業もいまだにあります。広く知らしめるという活動にはなっていません。このような企業は成功しているときはまだよいのですが、いざ業績が悪くなるとこれまで取材拒否した媒体から徹底的にたたかれます。広報が開かれていれば、あえて“たたく”ということはしないでしょう。韓国企業も似たような面があります。

隠すリスクが付きまとう

 PR会社にも似たような体質の所があります。概して取材に協力的なところが多いのですが、閉じた企業の広報と同じようにPR会社がメディアを管理しようとしたがります。これではクライアントである企業が迷惑するでしょう。ある台湾の大手メーカーは、日本だけではなく米国や欧州にも支社を持ち、それぞれの国ごとにPR会社を使っています。ユーザー向けのイベントを行う場合、日本のPR会社はメディアをシャットダウンしていました。一方、米国と台湾の記者に聞いてみると、それらの国ではオープンでメディアも存分に取材していることが分かりました。取材させないといった状況は、メディア・広報共に不幸だと思います。

 B2Bビジネスでは、正直・オープンは必要不可欠な要素です。ノウハウや企業方針で答えられないことは答えられない、とはっきり言ってもらえれば、まともなメディアはそれ以上追及しません。正直にオープンに、企業の目指すものは何か、はっきり話していただければ記者は正確に書くことができます。記者がうがった見方をするのには、それなりの理由があるのです。

 これまで、米国の広報では取材に協力的ではない企業にあまり出くわしたことがありません。企業として限られた時にしかメッセージを出さない、インテルやアップル、グーグルなどは、広報担当者という個人ではなく、どのメディアに対しても公平に扱うという方針がはっきりしています。大抵の半導体メーカーは記者が取材を申し込むと協力してくれます。また記者会見の時は、会社のことを理解してもらうための資料を山のようにくれます。ただし、インサイダー取引や証券法違反に関わるような将来予測などには決して答えません。株主に対する公平な態度を保つためです。

記者を無料で米国に招待

 日本にはなくて、アメリカにしかない、PR会社の新しいビジネスモデルを紹介しましょう。Globalpress Connection社では、アジアと欧州の記者を無料でシリコンバレーに招待し、アジアや欧州に進出したい米国企業にプレゼンさせる場を提供します。記者の飛行機代とホテル代をPR会社が持ち、米国のシリコンバレーに20〜30人の記者を集めます。アジアや欧州に進出したい新興企業にとっては絶好のチャンスとなります。プレゼンは、記者の泊まっているホテルの会議室か、企業を訪問して行います(写真1)。企業訪問にはバスを仕立てます。

tt140609SE_TSUDA001.jpg 【写真1】ホテルの会議室でプレゼン

 一方、記者側から見て、有名な企業は既に日本に法人を持っていますが、新興企業についてはほとんど知りません。しかも米国の新興企業は、優れたテクノロジーを持っていることが多いです。テクノロジーを持たないベンチャーには、ベンチャーキャピタルが出資してくれないからです。メディア同士も企業と同様、競争していますので、「すごい技術」を持ちながらも知られていないベンチャーには、大抵のメディアは飛びつきます。このため、記者が書く確率は高くなるわけです。

低コストで外国メディアに露出

 外国の記者20〜30人にプレゼンするということは、20〜30の雑誌やインターネットに載る確率が高い、ということに相当します。ちなみに4月に開かれたEuroAsia 2014に集まった記者は20人で、担当する媒体を複数受け持つフリージャーナリストが多いため、26誌にも及びました。カバー率は80%を超えます。自前でこれだけの数のメディアに自社の名前や技術を外国へ露出させようとすれば、かかるコストは半端ではありません。4色カラーで1ページ広告が100万円という媒体がありますが、白黒広告も含め平均して30〜40万円としてコストを抑えておき、さらに20誌に載せるとしますと、それだけで600〜800万円はかかります。それがプレゼンの時間スロットによって幅がありますが、100〜300万円で済むようになります。

 グローバル化は日本だけではありません。ベンチャーを立ち上げたらすぐにグローバル化を図り、サプライチェーンから顧客までグローバルなエコシステムを構築することが最近の流れです。だからこそ、グローバルに企業の認知度を上げることが世界中で行われています。

tt140609SE_TSUDA002.jpg 【写真2】Globalpress社のIrmgard Lafrentz社長

 上で紹介したEuroAsiaは、安いコストで海外知名度や製品の認知度を上げるのに都合の良い仕組みとなっています。このイベントでは、Globalpress社のIrmgard Lafrentz社長(写真2)が中心となって、シリコンバレーの企業に声をかけ募ります。イベントの最終日には、どの企業のプレゼンが良かったか悪かったか、なぜか、どうすれば改善できるか、など記者が1人ずつ意見を述べます。このフィードバックを元に次回のイベントに反映します。残念ながら日本のメディアの参加が少ないのです。ここでも日本の内弁慶さがよく出てます。

Profile

津田建二(つだ けんじ)

現在、フリー技術ジャーナリスト、セミコンポータル編集長。

30数年間、半導体産業をフォローしてきた経験を生かし、ブログや独自記事において半導体産業にさまざまな提言をしている。




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提供:ルネサス エレクトロニクス株式会社 / アナログ・デバイセズ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2015年5月31日


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