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» 2014年06月09日 10時00分 UPDATE

しっかり分かる「センサーの活用法」:いまさら聞けないジャイロセンサー入門 (2/3)

[野口洋,STマイクロエレクトロニクス]

3軸ジャイロセンサーの仕組み

 振動式ジャイロの構造体については前項でも述べた通り、コリオリ力を利用します。1軸ジャイロセンサーの構造体を例にこの動作原理を説明しましたが、同じ原理は2軸品、3軸品へも拡張して適用することができます。現在振動型ジャイロセンサーを利用するアプリケーションを考えた場合、かなり多くの場合で2軸以上を必要とします。また、部品を実装できるスペースも限られていることから、1軸品を方向を変えて2つも3つも同じ基板上に実装するのは好ましくありません。そこで、1パッケージで2軸、もしくは3軸における回転の角速度を検知できるジャイロセンサーが各メーカーにより製品化され、現在では携帯電話機やデジタルカメラなどの民生機器がそれらが利用されています。

 図3にSTマイクロエレクトロニクスが製品化した3軸ジャイロセンサーの構造体を例に挙げ、動作と検出原理を簡単に説明します。STの3軸ジャイロセンサーは各軸を検知する電極ブロックを1つのシリコンチップ上に製造し、構造体も一体化した設計となっています。

【図3】静電容量方式MEMS3軸ジャイロセンサー (参考:STマイクロエレクトロニクス)

 この1つの構造体でヨー軸、ピッチ軸、ロール軸の3軸における回転角速度を検知します。動作原理としては、図2で説明した1軸品と同等で、振動している質量に回転が加わった際に発生するコリオリ力を検知する仕組みです。この3軸品の場合、ヨー軸の検知は1軸品と同じで面内の振動と、その振動と同じ面内で直交する方向に作用するコリオリ力により素子の駆動と回転の検出を実現しています。ピッチ軸とロール軸に関しては、振動はヨー軸と同じ面内で印加されますが、回転軸も同じ面内で直交する方向に存在するため、コリオリ力は素子面から垂直に作用します。この力を、構造体が上下に動き、構造体とシリコンの基板の間の静電容量が変化することで検出します(図3の下2つの図を参照)。なお、図2の1軸品でも図3の3軸品でも、構造体は左右対称に設計されており、回転によるコリオリ力は必ず差動で作用するようになっています。この構造により、直線加速度のような角速度を検知する上では不要な信号を効果的に除去することができます。

 3軸品の説明を簡単に述べましたが、詳細はSTのウェブサイトからテクニカルノートがダウンロードできます。

 MEMS素子部を振動させるための駆動回路とコリオリ力から得られた静電容量信号を電圧に変換してデジタル化する信号処理部はコンパニオンチップ(ASIC)としてMEMS素子部とともにパッケージ化されています。図4に、上で説明した3軸MEMS素子の信号処理用ASICのブロック図を示します。ジャイロセンサー用のASICは大別すると駆動回路ブロック、検知回路ブロック、デジタル化ブロックの3つに分かれています。駆動回路ブロックは素子を消費電力の観点から効率の良い周波数(機械的構造体における共振周波数)で駆動させるためにMEMS素子からのフィードバック信号も利用しながら正確なタイミングで駆動用信号を提供します。検知回路ブロックはコリオリ力により発生した静電容量(電荷)の変化を捉え、電圧値に変換することで電極間の距離変化(∝ コリオリ力 ∝ 回転角速度)に比例した出力を提供します。アナログ信号を出力するジャイロセンサーの場合、この信号がそのままセンサーの出力となりますが、デジタル信号を出力するジャイロセンサーの場合、センサー内部で信号をデジタル化します。デジタル化ブロックはアンチ・エイリアシングフィルタとA-D変換部、およびその後段のロジック部により構成されており、デジタル化された出力信号は16ビット形式で出力用レジスタに格納され、外部のマイコンからI2CもしくはSPIバス経由でアクセスすることが可能です。

【図4】静電容量方式 MEMS 3軸ジャイロセンサー信号処理用ASIC (参考:STマイクロエレクトロニクス)

ジャイロセンサーのアプリケーション

【図5】アプリケーション別に必要とされる角速度範囲(参考)

 民生用途で使われるジャイロセンサーはアプリケーションによって必要とされる角速度の検出範囲が非常に幅広く、それに適したジャイロセンサーを選定することが重要となります。例として本稿の冒頭に記載したアプリケーションでも一般的に使われる角速度検出範囲が大きく異なります(図5参照)。

 ゲーム機やスマートフォンのユーザーインタフェースとしてジャイロセンサーの出力を利用する際は、大きく振るなどの動き(大きな検出範囲)と細かな動き(小さな検出範囲)の両方を捉える必要があるため、検出範囲を幅広く確保する必要があります。ジャイロセンサーには検出範囲切り替え機能が搭載されている場合が多く、1つのデバイスでレンジを切り替えることができます。例としてSTのL3GD20Hジャイロセンサーの場合、設定により ±2000dps、±500dps、そして±245dpsの検出範囲を選択することができます。カーナビやポータブルナビの自律航法用にジャイロセンサーの出力を利用する際は、±100dps〜±500dps程度の検出範囲を利用します。また、デジカメ(もしくはスマートフォンに内蔵されるOISモジュールと呼ばれる光学手ブレ補正付きカメラモジュール)にジャイロセンサーの出力を利用する際は、±150dps以下の検出範囲を利用します。

 車載用途で使われるジャイロセンサーは、横滑り検知やロールオーバー検知といった走行安全のアクティブセーフティやパッシブセーフティに関るアプリケーションで用いられ、その際のジャイロセンサー出力範囲は±100dps〜±300dps程度が利用されます。この場合でも振動型のジャイロセンサーは多く利用されていますが、民生品と比較すると+105℃や+125℃といった、より高い動作温度での特性や信頼性保証が求められたり、車に搭載することで発生する振動による悪影響を極力削減する工夫が必要になるため、民生品をそのまま車載用途に利用することはできず、車載に特化して設計・製造されている製品群から選択する必要があります。

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