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−48V電源ラインの電流を単電源回路で計測Design Ideas 計測とテスト

−48V系の電源は、実際には−60V〜−48Vの範囲で変化する。この電源の電流を計測するための回路には、±15Vの電源が必要となる。正負両電源から負電源を不要にできれば、装置の複雑さが緩和できる。本稿では、−60V〜−48Vの電源ラインに対応した単電源(正電源)動作の電流計測回路を紹介する。

» 2014年10月03日 09時00分 公開
[Wenshuai Liao/Stephen Lee(Analog Devices),Yanhui Zhao(北京大学),EDN Japan]

公衆通信装置などで広く使用

 −48V系の電源は、無線基地局や中央交換局における公衆通信装置などで広く使用されている。その値は、実際には−60V〜−48Vの範囲で変化する。この種の電源の電流を計測するための回路には、通常±15Vの電源が必要となる。この正負両電源から負電源を不要にできれば、装置の複雑さが緩和でき、コストも低減可能になる。本稿では、−60V〜−48Vの電源ラインに対応した単電源(正電源)動作の電流計測回路を紹介する(図1)。

図1 単電源で動作する電流計測回路 (クリックで拡大)

 この回路の中心にあるのは、差動アンプIC1(米Analog Devices製の「AD629」)とオペアンプIC2(同「AD8603」)である。差動アンプとしてAD629を使用した場合、計測の対象とできる電圧(コモンモード電圧)の範囲は次式を用いて求めることができる。

  VCOM_MAX=20×(VS−1.2)−19×VREF

  VCOM_MIN=20×(−VS+1.2)−19×VREF

 例えば、基準電圧VREFが5Vの場合、許容電圧範囲は−71V〜121Vになる。

 回路の動作としては、まず電流Iにより、シャント抵抗RSに生じる電圧が差動アンプIC1に入力される。IC1のゲインは1に固定されているので、この入力に対する出力はI×RS+VREFになる。この出力を受けるIC2が減算器として働くことにより、コモンモード電圧とVREFの成分が除去され、その結果、I×RSが増幅されて出力となる。IC2のゲインを20とすると、出力信号がこの例のA-Dコンバータの入力範囲である2.5Vに整合するレベルとなる。

 IC2としてAD8603を使用した理由は、バイアス電流、オフセットドリフトが小さいことである。また、レールツーレール出力が得られるため、A-Dコンバータと同一電源を使用できる。

 この回路の計測誤差は、IC1、IC2のオフセット、入力バイアス電流、減算器部分の抵抗誤差によって生じるが、AD8603(IC2)の出力においては最大163mVとなる。この値は、減算器における抵抗誤差を0.01%とした場合の計算値である。回路全体の動作は、シャント抵抗RSが50mΩ、100mΩ、200mΩの場合に対して確認した。


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※本記事は、2008年7月29日にEDN Japan臨時増刊として発刊した「珠玉の電気回路200選」に掲載されたものです。著者の所属や社名、部品の品番などは掲載当時の情報ですので、あらかじめご了承ください。
「珠玉の電気回路200選」:EDN Japanの回路アイデア寄稿コラム「Design Ideas」を1冊にまとめたもの。2001〜2008年に掲載された記事の中から200本を厳選し、5つのカテゴリに分けて収録した。

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