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» 2014年12月18日 15時56分 UPDATE

Design Ideas アナログ機能回路:オペアンプ1個で、コモンモードノイズを抑える

オペアンプを使って、コモンモードノイズを相殺するアイデアを紹介する。

[Tamara Papalias/Mike Wong(Intersil),EDN Japan]

 一般に、コンポーネントビデオ信号(色差信号)の伝送には、安価なカテゴリ5のネットワークケーブルが使用される。耐久性のある外皮で覆われた4本のツイストペアケーブルのうち3本はRGB信号を伝送し、残り1本はオーディオ信号や同期信号などを伝送する。だが、一般にカテゴリ5のケーブルはシールド加工が施されていないため、コモンモードノイズが発生しやすい。

 コモンモードノイズの対策の第一歩は、RGB信号の経路を差動系として構成することである。しかし、ツイストペアケーブルの送信側(ドライバ)と受信側(レシーバ)の基準電位(グラウンド)に差が生じると、受信ライン側でコモンモードノイズが発生する。このコモンモードノイズは、ビデオ信号の伝送品質に悪影響を及ぼす。ここでは、差動型のビデオレシーバに対するコモンモードノイズの影響をオペアンプ1つで最小限に抑える方法を紹介する。

photo 図1 差動ビデオ信号ラインに発生するコモンモードノイズを低減するための回路

 図1に示したのがその回路例である。この回路では、信号品質を維持し、反射を最小限に抑えるために、各ビデオ信号伝送ラインを100Ωで終端している。例えば、抵抗R35とR37でR+ラインを終端し、R36とR38でR−ラインを終端するといった具合だ。もちろん、終端用の回路としては同一のものを使用している。しかし、各RGB差動信号のレシーバ側のグラウンドとドライバ側のグラウンドに差が生じると、例えばR信号では、R37、R38の接点とR39にコモンモードノイズが発生する。

 このコモンモードノイズを相殺するために、図1では3系統(または4系統)のすべての信号をオペアンプIC1(図ではIntersil社の「ISL55001」を使用)で加算して反転させている。例えば、R+信号とR−信号を加算すると、それらの差動電圧成分(正負が反転した主信号成分)が相殺され、コモンモードノイズだけが倍増される。また、コンデンサC1とC2によってオペアンプの入出力をAC結合することにより、オペアンプ出力が、30kΩの抵抗R42およびR43を介してR+/R−の受信側にかけるバイアス電圧として働くようにしてある。このとき、ROUT+/ROUT−の差動電圧とコモンモードノイズとの整合性をとるためには、R42とR43の許容誤差を小さく抑えなければならない。なお、コンデンサC11とC12は、差動ビデオ信号の高周波成分を持ち上げる(イコライゼーション)役割を担う。

 図2にコモンモードノイズが発生している様子を示す。(a)の信号はR+側の1Vピーク受信信号であり、(b)の信号は、それによって発生している2Vピークのコモンモードノイズである。これに対し、図1の回路を適用すると、図3のような効果が得られる。受信信号(a)に変化はないが、コモンモードノイズ(b)は80%(14dB)も減衰している。

photo 図2 コモンモードノイズの発生
コモンモードノイズの対策を行わないと、主信号(a)に大きな影響を与えるコモンモードノイズ(b)が発生する
photo 図3 図1の回路の効果
図1の回路を追加することにより、主信号(a)はそのままで、コモンモードノイズ(b)を大きく低減することができた

 このように、図1の回路を使うことで大きな効果が得られるが、最高の性能を得るにはいくつか気を付けなければならないことがある。まず1つ目の注意点として、コモンモードノイズがIC1の定格入力電圧を超えないようにしなければならないことが挙げられる。またIC1としては、広帯域で安定したゲインと高いスルーレートを実現するものを選び、高い電源電圧で動作させる必要がある。加えて、超低周波のコモンモードノイズに対応するために、オペアンプの入出力に用いるAC結合用のコンデンサには、無極性のものを使用すること。さらに、関連するすべての周波数に対して、IC1の電源端子を適切にバイパスする必要がある。


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※本記事は、2008年7月29日にEDN Japan臨時増刊として発刊した「珠玉の電気回路200選」に掲載されたものです。著者の所属や社名、部品の品番などは掲載当時の情報ですので、あらかじめご了承ください。
「珠玉の電気回路200選」:EDN Japanの回路アイデア寄稿コラム「Design Ideas」を1冊にまとめたもの。2001〜2008年に掲載された記事の中から200本を厳選し、5つのカテゴリに分けて収録した。

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