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» 2015年02月24日 11時45分 UPDATE

Design Ideas 計測とテスト:高Q デバイスの簡単な測定方法

Q値の測定には通常、マクスウェルやヘイズのようなブリッジ回路で構成したQメーター、もしくはベクトルやスカラーのインピーダンス・アナライザーを使う。しかし、いずれもテスト用測定器には向かない。そこで、簡単なQ値用テスト装置を提案する。

[Alan Victor(IBM Microelectronics),EDN Japan]

 位相雑音が少ない発振器を設計する際は、共振子の無負荷時におけるQ値に注意を払う必要がある。位相雑音が少ない高周波発振器では、無負荷時におけるQ値の目標を400以上に置いている。加えて、パッケージとプリント基板の効果を観察しなければならない。シールド方法や接地のとり方によっては、無負荷時のQ値の低下を招くからだ。

 通常、Q値の測定には、マクスウェルやヘイズのようなブリッジ回路で構成したQメーター、もしくはベクトルやスカラーのインピーダンス・アナライザーを使う。しかし、いずれもテスト用測定器には向かない。テスト治具を注意深くセットし、最終的に納得のいく試験結果を再現できるように校正を行う必要があるからだ。

tt150224DI001.jpg 図1 簡単なQ値試験装置
直列トラップ・ネットワークを使って構成した

 そこで、簡単なQ値用テスト装置を提案する(図1)。直列共振(トラップ)ネットワークに組み込んだ被試験デバイスを含む電圧分圧器以外は、何も使わない装置である。インダクタンス値を測定したり、計算したりする場合は、ソレノイド*1)やトロイド*2)、ヘリカル*3)、平面スパイラルといったコイルの形状に基づく既知の等価式を活用する。こうして求めたインダクタンス値を用いて、可変容量でQ値が高いコンデンサーC1を選定する。共振点においては、インダクタンスとキャパシタンスの合成インピーダンスはゼロになる。すなわち実質的な負荷は、終端抵抗の50Ωと、これに並列に接続した直列抵抗RSのみとなる。

*1)ソレノイド:導線を円筒の上に巻き付けた形状のコイル
*2)トロイド:ソレノイド・コイルをドーナッツ状にしたコイル。環状ソレノイド・コイルとも呼ぶ
*3)ヘリカル:らせん状に巻いたコイル

表1 ノッチの深さと直列抵抗の関係
RS
(Ω)
ノッチの深さ
(dB)
0.1 −47.993
0.2 −42.007
0.3 −38.52
0.4 −36.055
0.5 −34.151
0.6 −32.602
0.7 −31.297
0.8 −30.171
0.9 −29.181
1 −28.299

 まずRF発振器と電圧計を使って、トラップ回路のノッチの深さを測る。この深さ、すなわち減衰量は、共振子を構成している直列抵抗RSの残留成分によるものである。表1に直列抵抗RSを0.1Ω〜1.0Ωに変化させたときのノッチ減衰量を示す。この値は、入力の発振器と終端インピーダンスが50Ωで、各回路素子が図1の値であることを前提にしている。

 無負荷時のQ値はXL/RSに等しい。ここでXLはコイルのリアクタンス、RSは等価直列抵抗である。図2にノッチ減衰量と等価直列抵抗の関係を示す。無負荷時のQ値は、f0をノッチの−3dB周波数帯域幅で割ることで計算できる。またトラップ回路に直列抵抗を挿入すれば、簡単に無負荷時のQ値を減らせる。この減少幅は、直列抵抗の値で決まる。

tt150224DI002.jpg 図2 ノッチ減衰量とコイルの等価直列抵抗の関係
図1の回路が共振したときのノッチ減衰量は、コイルの等価直列抵抗に反比例する

 こうした簡単な実験を行えば、これらの値は幾つかの微妙なファクターから成り立っていることが分かる。例えば、自己共振周波数近傍における素子動作がある。

 図1の回路を使った実験の場合、直径が0.75インチ(約19mm)のロッドに6ゲージ*4)のワイヤーを注意深く巻けば、70MHz付近で500程度の無負荷におけるQ値が得られる。ここで、ソレノイド・コイルのシールド効果によるQ値が低減することを明らかにする。

*4)ゲージ(Gage)は、ワイヤーの直径を示したもの。6ゲージは直径が0.192インチ(4.877mm)のワイヤーである

 測定手法を以下に述べる。

 インダクタンス値と周波数f0におけるXL値が既知のコイルを用意する。このコイルは、50Ωの発振器と50Ωの終端抵抗に接続した直列接続回路で共振する。終端抵抗に接続したRF電圧計はノッチ減衰量をデシベルで表示する。図2から、Q=XL/RSの関係を使うことで無負荷時のQ値を求めることができる。例えば、直径が0.75インチ(約19mm)で6ゲージのワイヤーを5回巻いたソレノイドのインダクタンス値は65MHzにおいて460nHである。

 このコイルは13pFのコンデンサーと65MHzで直列共振を起こす。そこで発振器を65MHzに設定し、可変コンデンサーを調整してノッチを65MHzに合わせる。こうした回路を測定して得られるノッチ減衰量は36dBである。すなわちRSは0.4Ωで、無負荷時のQ値は469と求まる。実際に実験を行えば、コイルの位置の微妙な変化によって、ノッチの深さが変化することを簡単に体験できる。


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※本記事は、2008年7月29日にEDN Japan臨時増刊として発刊した「珠玉の電気回路200選」に掲載されたものです。著者の所属や社名、部品の品番などは掲載当時の情報ですので、あらかじめご了承ください。
「珠玉の電気回路200選」:EDN Japanの回路アイデア寄稿コラム「Design Ideas」を1冊にまとめたもの。2001〜2008年に掲載された記事の中から200本を厳選し、5つのカテゴリに分けて収録した。

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