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機械式リレーの接点バウンスを取り除く回路Design Ideas パワー関連と電源

機械式リレーを開状態から閉状態へ変化させると、接点は開閉のサイクルを数回繰り返す「接点バウンス」と呼ぶ状態を経てから最終的な状態へ移行し、導通を確保する。この接点バウンスは、機械式リレーの後段に接続した回路に何らかの影響を与えてしまう可能性がある。そこで、接点バウンスの影響を簡単に除去する方法を紹介する。

» 2015年03月06日 09時00分 公開

 機械式リレーは、多くの用途で半導体リレーなどのIC製品に取って代わられてしまった。ただし現在でも、用途によっては機械式リレーが使われる。例えば、大電流回路である。正負どちらの極性の電圧にも対応する必要があったり、高い電圧を切り離す必要があったりする場合に利用されている。

 機械式リレーを開状態から閉状態へ変化させると、接点は開閉のサイクルを数回繰り返す「接点バウンス」と呼ぶ状態を経てから最終的な状態へ移行し、導通を確保する。この接点バウンスは、機械式リレーの後段に接続した回路に何らかの影響を与えてしまう可能性がある。そこで、接点バウンスの影響を簡単に除去する方法を紹介する。機械式リレーにホットスワップ(活線挿抜)コントローラーICを組み合わせた回路を利用する。

 ホットスワップ・コントローラーICは通常、システムに電源を供給したままでボードやモジュールなどを抜き挿しする(活線挿抜する)機能を実現するために使われる。ここでは、ボード/モジュールとシステムを接続するコネクタを、機械式リレーに置き換えて考える(図1)。

図1 接点バウンスの影響を取り除く回路 (クリックで拡大)
ホットスワップ・コントローラーICとpチャンネルMOSFETから成るホットスワップ回路を利用する。機械式リレーの接点バウンスによって生じる突入電流などの影響を除去できる。

 リレー駆動回路によって機械式リレー(K1)が閉じると、pチャンネルMOSFET(Q1)とホットスワップ・コントローラーIC(IC1)から成るホットスワップ回路に電源電圧(28V)が供給され始める。ホットスワップ・コントローラーICは、機械式リレーを介して供給された電源電圧がある一定の値に達してから、少なくとも150msが経過するまでpチャンネルMOSFETをオフ状態に保持する。こうして機械式リレーの接点バウンスが収束するまでの時間を稼ぐ。

 ホットスワップ・コントローラーICは150msが経過すると、pチャンネルMOSFETのゲート端子を駆動して、ホットスワップ回路の出力電圧が9V/msのスルー・レートで立ち上がるように制御する。スルー・レートを制御することで突入電流の発生を最小限に抑える。

この結果、電源や機械式リレー、ホットスワップ回路の後段に接続するコンデンサーへの電気的なストレスを低減できる。

 図2は、機械式リレーの接点バウンスを観測した例である。

図2 機械式リレーの接点バウンス
機械式リレーを単独で使用した際に生じる接点バウンスを観測した。上の波形は機械式リレーからの出力電圧、下の波形は機械式リレーへの入力電流である。発生した突入電流のピーク値は約30Aに達した。

 この例では機械式リレーをホットスワップ回路と組み合わせずに単独で使用した。上の波形は機械式リレーからの出力電圧、下の波形は機械式リレーへの入力電流を示す。54Ωの抵抗と100μFのコンデンサーを並列接続した回路を用意して、これを負荷として機械式リレーの出力に接続した状態で測定した。大きく3つのバウンスが生じていることが分かる。突入電流のピーク値は約30Aに達した。

図3 突入電流を抑えられる
図2の測定で使用した回路にホットスワップ回路を組み合わせた。上の波形はホットスワップ回路からの出力電圧、下の波形はホットスワップ回路への入力電流である。図2に比べて突入電流が大幅に低減された。

 図2の測定に用いた回路に図1のホットスワップ回路を組み合わせると、接点バウンスの影響を大幅に軽減できる(図3)。出力電圧はゆっくりと立ち上がり、バウンスは生じない。入力電流の変動ははるかに小さくなる。入力電流が定常状態(500mA)に落ち着くまでのピーク値は1.5A以下に抑えられた。


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※本記事は、2008年7月29日にEDN Japan臨時増刊として発刊した「珠玉の電気回路200選」に掲載されたものです。著者の所属や社名、部品の品番などは掲載当時の情報ですので、あらかじめご了承ください。
「珠玉の電気回路200選」:EDN Japanの回路アイデア寄稿コラム「Design Ideas」を1冊にまとめたもの。2001〜2008年に掲載された記事の中から200本を厳選し、5つのカテゴリに分けて収録した。

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