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マイコンとDSPの違いって何?Q&Aで学ぶマイコン講座(14)(2/3 ページ)

» 2015年05月27日 12時00分 公開

マイコンとDSPの守備範囲

 DSPは複雑な演算を高速処理できるようになっています。例えば、次のような計算を1命令で、かつ1サイクルで実行できます。


(16ビットデータ×16ビットデータ)±(16ビットデータ×16ビットデータ)=32ビットデータ

(16ビットデータ×16ビットデータ)±(16ビットデータ×16ビットデータ)+32ビットデータ=32ビットデータ

(16ビットデータ×16ビットデータ)±(16ビットデータ×16ビットデータ)+64ビットデータ=64ビットデータ


 このような複雑な高速演算は、音声処理、画像処理、信号の変調/復調、高速フーリエ変換、デジタルフィルターで要求されます。マイコンで同じ処理を行うとすると、複数の命令を非常に高速で実行しなくてはなりません。不可能ではありませんが、超高速演算能力を持ったマイコンが必要になります。それならば、DSPを使った方が便利だと言えます。かといって、一般的な生活家電ではこのような複雑な高速演算は要求されません。逆に、高速演算処理ではなく、さまざまなことができる汎用性が求められます。マイコンの方がDSPよりもいろいろな種類が出回っていますので、ユーザーは自分の作りたい製品に合ったマイコンを容易に選べます。

 野球に例えると、マイコンはほとんどの守備位置を守れるオールマイティな選手で、DSPは足の速い代走選手、長打力のある打者、剛速球投手などの特殊な能力に長けている選手と言えます。

 マイコンとDSPの使用例を図1に示します。

図1 マイコン、DSPのそれぞれの代表的な使用例 (クリックで拡大)

マイコンの良いところ

 マイコンはDSPに比べ、汎用性に優れ、使いやすいことが1番の特徴です。

 もともとマイコンは電卓用ICとして生まれ、その後、生活家電や産業機器などの制御用ICとして成長してきました。そのため、現在では、生活家電から産業機器、医療機器、健康機器、スポーツ用品、ゲーム機器などの幅広い用途で使用されています。

 簡単な機能のマイコンだとテレビやエアコンのリモコン、生活家電の時計機能、照明の調光機能などがあります。複雑な機能のマイコンだと、エアコンや冷蔵庫のコンプレッサのモータ制御です。最近は、タブレットやカーナビで採用されているタッチ検知機能でもマイコンは使われています。

 マイコンは、さまざまな用途に対応するような機能がコンパクトにまとめられていますので、多種多様な製品で使えます。

 さらに、初心者は、各マイコンメーカーが提供しているスターターキットと無料の統合開発ツールを利用すれば、簡単にマイコンを使い始めることができます。高度な専門知識も必要とせず、中高生でも使いこなせます。最近では学生を対象とした、マイコン内蔵のロボットコンテストやマイコンカーラリーが人気です。

DSPの良いところ

 とにかく複雑な計算が速いということです。例えば、マイコンで次のような計算をしようとすると、超高速演算能力を持ったマイコンが必要になります。

(16ビットデータ×16ビットデータ)±(16ビットデータ×16ビットデータ)=32ビットデータ

(16ビットデータ×16ビットデータ)±(16ビットデータ×16ビットデータ)+32ビットデータ=32ビットデータ

(16ビットデータ×16ビットデータ)±(16ビットデータ×16ビットデータ)+64ビットデータ=64ビットデータ

32ビットデータ±(32ビットデータ×32ビットデータ)=32ビットデータ

(32ビットデータ×32ビットデータ)+64ビットデータ=64ビットデータ


 このような命令はDSPだと1命令1サイクルで実行可能です。複雑な演算が高速が求められる場合はDSPが圧倒的に便利です。

 どのくらい高速化が可能なのかは、最後の章で具体例を挙げて説明します。

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