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マイコン周辺部品の選び方――電源編Q&Aで学ぶマイコン講座(15)(3/3 ページ)

» 2015年06月16日 11時00分 公開
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電源の電流供給容量

 電源の電流供給容量が小さいと、大電流により電圧が低下します。電源の出力インピーダンスが小さい場合、このような電圧低下が発生します。したがって、ユーザーはマイコンの消費電流の最大値を計算して、それに見合った電源設計が必要です。USB 2.0規格であれば、最大500mAと決まっていますので、マイコンを含む電気回路の総消費電流を500mA以下にする必要があります。

(ただし、最近では、USB Power Delivery(USB PD)と言う最大5A(20V時/5V時であれば最大3A)までの給電を全てUSBケーブルで行ってしまうという新しいUSB規格が登場しています。)

 電池の場合は、電池の容量mAh(ミリアンペアアワー)で、電池寿命を計算する必要があります。消費電流が大きいと、単一、単二などの大きな容量の電池が必要です。小さければ単三、単四などの小さい電池でも大丈夫です。

 最近では、非接触で電源供給を行う家電品が登場してきました。ワイヤレス給電の場合、電流供給能力が比較的小さいため、突入電流などで電圧降下が起きて、マイコンが起動しない場合がありますので、特に電源設計に注意が必要です。

 電源容量を計算する際に注意しなければならない点は次の2つです。

(1)突入電流(起動電流、始動電流)

 電源を入れた瞬間に大電流が流れる現象です。これは主に電気回路内のコンデンサ成分を充電する電流によって発生します。電源が入っていない時は回路内のコンデンサは無電荷の状態です。電源を入れると同時に、全てのコンデンサの充電が始まり、大電流が発生します。コンデンサが充電されてしまえば、電流値も小さくなります。

 この突入電流を考慮しないで電源容量を設計すると、起動時の大電流による電圧降下でマイコンは起動しません。


(2)マイコン以外の回路の消費電流

 マイコンのデータシートに記載されている電流値はマイコンに流れる電流だけで、GPIOおよび外部回路に流れる電流は含みません。

 しかし、電源にとっては、マイコンに流れる電流以外にもGPIOに流れる電流と外部回路に流れる電流の合計を賄わなくてはなりません。したがって、ユーザーはシステムの総電流量の最大値を考慮する必要があります。


トラブル事例

 最後に、私が実際に経験した電源に関するトラブルを紹介します。

(1)電源用ICの回路定数を間違えた

 図1を見ていただくと分かりますが、3端子レギュレータなどの電源用ICには、コンデンサが必要です。ユーザーはマイコンのデカップリングコンデンサに推奨値を使用してはいましたが、電源用IC用のコンデンサの値を考慮せず適当なコンデンサを使っていました。そのため、必要な電圧が得られずにマイコンが起動しませんでした。マイコンだけでなく電源用ICの仕様書もよく読んで回路定数を間違えないないようにしましょう。

(2)起動時に電流が大きくて立ち上がらなくなった。

 ワイヤレス給電を開発するユーザーで、起動電流の計算を間違えたため、電流供給能力が不足して、マイコンを起動できなかった例を図3に示します。内部降圧方式を採用しているマイコンで、内部電圧の安定化用のコンデンサが必要な場合、このコンデンサの充電電流も起動電流に含まれます。ユーザーはデカップリングコンデンサの充電電流だけを考えて電源容量を計算したため、実際の起動電流が設計値を上回り電圧降下が発生しました。

図3:突入電流,突入電流 (クリックで拡大)

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