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パワーエレクトロニクス最前線 特集

窒化ガリウムの時代が到来、シリコンに対する優位性がより明らかに近づきつつあるムーアの法則の限界(1/3 ページ)

シリコンプロセスは、時代の急激な変化により、効率的なパワー変換を行う適切な手段として十分な役割を果たせなくなりつつある。そのため、エレクトロニクス業界は、新しい種類のパワー半導体への依存を徐々に増やしている。そこで、本記事ではパワーシステム設計の将来を形作るプロセス技術の1つとして台頭しつつある、窒化ガリウム(GaN)について検証する。

» 2015年07月29日 11時00分 公開

 民生機器、通信機器、電気自動車、のいずれにおいても電力変換効率を向上させ、電力密度を高め、バッテリー寿命を延ばし、その結果スイッチングスピードを加速化する必要があるという厳しい要求がエンジニアに突き付けられています。

 つまり、エレクトロニクス業界がシリコン(Si)以外のプロセス技術を利用した、新しい種類のパワー半導体への依存を徐々に増やすことになることを意味しています。窒化ガリウム(GaN)は、今まで不可能だった性能を達成する能力を備え、パワーシステム設計の将来を形作るプロセス技術の1つとして台頭しつつあります。

 GaNは、過去10年間、複数の業界分野に大きな影響を及ぼしてきました。オプトエレクトロニクスでは、高輝度の発光ダイオード(HBLED)の開発と普及に大きな役割を果たしてきました。無線通信では、高電子移動度トランジスタ(HEMT)やモノリシックマイクロ波集積回路(MMIC)などハイパワー無線周波数(RF)デバイスとして既に導入されています。現在、パワーアプリケーションにおいてGaNが幅広く採用される可能性が高く、市場調査会社のYole Researchは、2020年までにGaNパワーコンポーネント事業は年間約6億米ドルの規模に到達すると予測しています。

 Yoleの市場予測が的中し、上記規模まで拡大するには、今後5年間に年平均成長率(CAGR)100%を達成する必要があります。ただし、そのためには克服すべき課題がたくさんあります。本稿では、GaNの幅広い普及に向けた活動を検証していきます。

なぜ今、GaNが注目されているのか?

 近年、以前にも増してGaNの採用を真剣に検討する大きな動きがいくつかあります。パワーシステムの設計におけるスペースの制約は大きくなっています。例えば、民生機器分野では、ポータブル機器に使われる充電器は絶えずコンパクトさが追求されています。同様に、データセンターのラックの数は増え、高密度化しています。

 その結果、電力密度を高め、パワー変換効率を向上させることで、パワーICに付随するヒートシンクに必要なスペースを抑える必要があります。このため、より高速のスイッチングスピードで動作するパワーMOSFETへの需要が高まっています。

図1:GaNを用いた電力密度の潜在的な向上

 現在の半導体プロセス技術の大半は、シリコン基板に依存しています。シリコンプロセスは、長年の製造実績があり、数十年間にわたりエレクトロニクス業界の土台となってきました。この期間、効率的なパワー変換を行う適切な手段として十分な役割を果たしてきましたが、時代の急速な変化により、それが十分でなくなりつつあります。

 ムーアの法則は物理的な限界に近づきつつあります。今後は実際に期待できるシリコンの性能向上はわずかです。社会の消費電力が拡大する運命にあることを考慮すると、別の半導体技術を調査する必要があります。

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