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特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜

メッシュネットワーク技術「TSCH」とは産業用IoTで注目を集める(4/5 ページ)

» 2016年03月28日 11時30分 公開

TSCHと低消費電力ハードウェアのパワフルな組み合わせ

 IEEE802.15.4トランシーバーが一般的な動作(送信、受信、スリープなど)を行うための動作電流は、過去10年間、着実に減少してきました。例えば、リニアテクノロジーの「LTC5800-IPM」の消費電力は、+8dBmでの送信時に9.5mA、受信時に4.5mAと、前世代のIEEE802.15.4トランシーバーの3分の1から5分の1になっています。ピーク電流の消費を削減するのは良いことですが、パケットを送信するのに必要な電力は、一定期間中に供給された電荷の関数です。オシロスコープで電流の流れを測定して経時的にプロットした場合(図3参照)、パケットを送信するのに必要な電力は曲線の下の領域であり、ピーク電流の影響だけでなく、各動作がアクティブな時間の影響も受けています。

 LTC5800-IPMなどの製品は、3.6Vの電源電圧(または196.2μJのエネルギー)でわずか54.5μCの電荷によってパケット送信/確認応答を正常に行える、正確に最適化されたパケット交換を実現しています。

図3:TSCHに最適化されたハードウェアのメリット
この図は、パケット送信中およびリンク層確認応答の受信中の電流の流れを示す。TSCHに最適化されたハードウェア(リニアテクノロジーのLTC5800-IPMなど)では各トランザクションはわずか54.5μCになる。

低消費電力へのシステム的アプローチ

 WSNでのエネルギー消費をより全体的な視点で見た場合、低消費電力の実現は、次式に示すように、データトラフィック量、1パケットを送信するために必要なエネルギー、1パケットのノード間送信が成功するまでに必要な再送信回数の関数と見なすことができます。

エネルギー消費の平均値
=[パケット数/一定時間]×[1パケット当たりのエネルギー]
           ×[1パケットの送信に成功するまでの再送信の回数]

 1パケット当たりのエネルギーに注目し、時間ダイバーシティー、パスダイバーシティー、周波数ダイバーシティーを再送信ごとに実行する(それによってパケット送信に必要となる平均再送信回数が少なくなる)ネットワークプロトコルを採用することで、アプリケーション層を犠牲にすることなく、システム全体の効率性を向上でき、消費電力を低下できます。

 TSCHネットワーク内の通信スケジュールは、高度に構成可能で、通信タイムスロットはアプリケーションの要求に基づいて自動的に割り当てられます。TSCHネットワークは、必要な消費電力を最小限に抑える低速のデータレートで構成できるため、エナジーハーベスト(環境発電)で使用できる可能性があります。同じTSCHネットワークを、ゆっくりと変化する変数(タンクレベルなど)や素早く変化する変数(パイプ内の流量など)が混在する産業用プラントでよくある、不均一なレポートレート用に構成することもできます。

 TSCHネットワークは、必要なタイムスロットを必要なネットワーク部位に自動的に割り当てます。ネットワークの要求に合わせてユーザーがアプリケーションをカスタマイズする代わりに、TSCHネットワークは、幅広いアプリケーションのニーズに合わせてカスタマイズすることが可能です。

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