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» 2016年04月01日 10時00分 UPDATE

アナログ回路設計講座(2):温度センサー測定の課題を解消する高精度温度/ビット・コンバータ

正確に計測することが難しい温度。熱電対やサーミスタなどさまざまな温度センサーがある中で、それらセンサーに応じて0.5℃や0.1℃単位の高い精度で測定できるシステム構築は至難の業です。しかし、さまざまな温度測定ノウハウが詰め込まれ、あらゆる温度センサーに対しても、高精度の温度測定ができるデバイスが登場しました。温度センサー別に、高精度で温度計測するコツをみていきましょう。

[PR/EDN Japan]
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tt160401LTC04_Fig01.jpg 図1:LTC2983の温度精度

 温度は私たちの生活に密接に関わる物理量ですが、正確に計測するのは困難です。現代電子工学の時代になる前、ガリレオが温度変化を検出できる初歩的な温度計を発明しました。その200年後、ゼーベックが熱電対を発見しました。熱電対は、異種金属の温度勾配の関数として電圧を生成するデバイスです。現在では、温度を電気的に測定するために、熱電対や、温度依存の抵抗素子(RTDおよびサーミスタ)および半導体素子(ダイオード)が一般的に使用されています。これらの素子から温度を抽出する手法はよく知られていますが、0.5℃もしくは0.1℃を超える精度で温度を正確に計測するのは困難です(図1参照)。

 これらの基本的なセンサー素子をデジタル化するには、アナログ回路設計、デジタル回路設計、そしてファームウェア開発のノウハウが必要になります。LTC2983は、これらのノウハウを1つのデバイスに詰め込むことで、熱電対、RTD、サーミスタ、ダイオードに特有の問題を解消します。LTC2983では、各種類のセンサーに必要なあらゆるアナログ回路、温度計測アルゴリズム、線形化データが1つのデバイス上に集積されており、各センサーを直接測定して結果を℃単位で出力できます。

熱電対の概要

 熱電対は、先端の温度(熱電対温度)と回路基板への電気接続の温度(冷接点温度)の温度差に応じて変化する電圧を発生します。熱電対温度を求めるには、冷接点温度を高精度に測定する必要があります。これは冷接点補償として知られています。通常、冷接点温度は、別の(熱電対以外の)温度センサーを冷接点に設置して求めます。

 LTC2983では、冷接点センサーとして、ダイオード、RTD、サーミスタを使用できます。熱電対が出力する電圧を温度値に変換するには、測定した電圧と冷接点温度の両方について(テーブルまたは数学的関数を使用して)高次多項式(最高14次)を解く必要があります。LTC2983には、標準的な8つの熱電対すべて(J、K、N、T、R、S、T、B)に対応する多項式が内蔵されており、カスタムの熱電対用にユーザーがプログラムしたテーブル・データを保存できます。LTC2983は、熱電対出力と冷接点温度を同時に測定し、必要なあらゆる計算を実行して、熱電対温度を℃単位でレポートします。

熱電対:重要ポイント

 熱電対が生成する出力電圧は高くありません(フルスケールで100mV未満)(図2参照)。そのため、電圧測定に使用するADCのオフセットおよびノイズも低くなければなりません。

tt160401LTC04_Fig02.jpg 図2:熱電対設計の課題
tt160401LTC04_Fig03.jpg 図3:ダイオード冷接点補償を使用した熱電対測定

 また、電圧は絶対電圧として読み取るため、高精度/低ドリフトな基準電圧が必要です。LTC2983には、10ppm/℃の最大リファレンスを持つ、低ノイズで連続的にオフセット校正された24ビットΔΣ型ADC(オフセットおよびノイズ:1μV未満)が内蔵されています(図3参照)。

 先端が冷接点温度より低い温度に接触すると、熱電対の出力電圧もグランドを下回ることがあります。これにより、2つ目の負電源か、入力レベル・シフト回路のいずれかの追加が不可欠になり、システムが複雑化します。LTC2983には、1つのグランド基準電源を使用して、グランド未満の信号をデジタル化可能な独自開発のフロントエンドが内蔵されています。

 熱電対回路は、測定精度の高さに加え、ノイズ除去、入力保護、アンチエイリアス・フィルタリングを搭載する必要があります。LTC2983の入力インピーダンスは高く、最大入力電流は1nA未満です。余分な誤差を生じることなく、外付けの保護抵抗とフィルタリング・コンデンサを接続できます。LTC2983は、50Hzと60Hzの両方に対応する75dB除去の内蔵デジタル・フィルタを備えています。

 フォルト検出は、多くの熱電対測定システムにおいて重要な機能です。最もよくレポートされるフォルトは、開回路(熱電対の故障や未接続)です。歴史的に、この種のフォルトを検出するために、熱電対入力に電流源やプルアップ抵抗を接続していました。このアプローチの問題は、それらに起因する信号により誤差やノイズが発生し、入力保護回路と干渉することです。LTC2983には、測定サイクルの直前に熱電対の故障をチェックする独自の開回路検出回路が内蔵されています。この場合、開回路励起電流/抵抗は、測定精度の妨げになりません。LTC2983は、冷接点センサーに関連するフォルトもレポートします。また、産業環境でセンサーとの接続距離が長い場合に発生する静電気放電(ESD)イベントの検出、レポート、復帰が可能です。LTC2983は、フォルト・レポートの一環として、測定した温度が、その種類の熱電対の想定範囲を上または下に外れていたかどうかもレポートします。

ダイオードの概要

 ダイオードは、温度センサーとして使用可能な低価格な半導体ベースのデバイスです。ダイオードは、熱電対の冷接点センサーとしてよく使用されます。ダイオードに励起電流が供給されると、温度と供給された電流の関数である電圧が生成されます。既知の比率を持つ、完全にマッチングされた2つの励起電流源をダイオードに印加すると、温度に対して既知の比例関係を持つ(PTAT)電圧が出力されます。

ダイオード:重要ポイント

 既知の比例関係を持つPTAT電圧を生成するには、高度にマッチングされた比率を持つ2つの電流源が必要です(図4参照)。

tt160401LTC04_Fig04.jpg 図4:ダイオード設計の課題

 LTC2983は、ΔΣ型オーバーサンプリング・アーキテクチャによって、この比率を高精度に生成します。ダイオードと、ADCに接続するリード線には、未知の寄生ダイオード効果が含まれています。LTC2983は、寄生リード抵抗を除去する3電流測定モードを備えています。ダイオードのメーカーによって、ダイオード非理想係数は異なります。LTC2983では、各ダイオードの非理想係数を個々にプログラミングできます。絶対電圧が測定されるため、ADC基準電圧の値とドリフトが重要です。LTC2983には、工場でトリミングされた10ppm/℃の最大リファレンスが内蔵されています。

 LTC2983は、比率電流を自動的に生成し、発生したダイオード電圧を測定し、プログラムされた非理想係数を使用して温度を計算し、結果を℃単位で出力します。熱電対用の冷接点センサーとしても使用できます。ダイオードが故障、短絡、もしくは誤って接続されている場合、LTC2983はそのフォルトを検出して変換結果出力ワードと、(冷接点温度の測定に使用されている場合)対応する熱電対結果にレポートします。

RTD:概要

 RTDは、温度に応じて値が変わる抵抗器です。RTDデバイスを測定するには、低ドリフトの高精度な既知のセンス抵抗を、RTDと直列に接続します。励起電流をネットワークに印加し、レシオメトリック測定(比率測定)を行います。その比からRTDの抵抗値(Ω単位)が求められます。この抵抗値から、テーブル・ルックアップによって、センサー素子の温度が求められます。LTC2983は、励起電流を自動的に生成し、センス抵抗とRTD電圧を同時に測定し、センサー抵抗を計算し、結果を℃単位でレポートします。RTDは、−200℃〜850℃の幅広い範囲の温度を測定できます。LTC2983は、ほとんどの種類のRTD(PT-10、PT-50、PT-100、PT-200、PT-500、PT-1000、NI-120)をデジタル化することができ、多数の規格(米国、ヨーロッパ、日本、ITS-90)に対応する係数を内蔵しており、カスタムのRTD用にユーザーがプログラム可能なテーブル・データもあります。

RTD:重要ポイント

tt160401LTC04_Fig05.jpg 図5:RTD設計の課題

 標準的なPT100 RTD(図5参照)の抵抗値の変動は、電流励起が100μAで信号レベルが4μVのとき、1/10℃当たり0.04Ω未満です。低オフセットかつ低ノイズのADCは、高精度な測定に不可欠です。RTDの測定はセンス抵抗に対するレシオメトリック測定ですが、励起電流とリファレンス電圧の絶対値は、温度を計算するときにそれほど重要ではありません。

 歴史的に、RTDとセンス抵抗間のレシオメトリック測定は、1つのADCで行われてきました。センス抵抗の電圧降下が、RTD電圧降下を測定するADCのリファレンス入力として使用されました。このアーキテクチャでは、10KΩ以上のセンス抵抗が必要であり、そのセンス抵抗には、ADCのリファレンス入力ダイナミック電流による減衰を防止するためにバッファが必要です。センス抵抗の値は重要であるため、これらのバッファは低オフセット、低ドリフト、かつ低ノイズである必要があります。このアーキテクチャでは、寄生熱電対効果を除去するために電流源をローテーションするのは困難です。ΔΣ型ADCのリファレンス入力は、入力よりはるかにノイズに敏感であり、リファレンス電圧の値が低い場合、不安定になることがあります。これらの問題は、複数のADCを使用するLTC2983のアーキテクチャによって、すべて解決されます(図6参照)。

tt160401LTC04_Fig06.jpg 図6:LTC2983を使用したRTD温度測定

 LTC2983は、RTD用に1つ、センス抵抗用に1つ、合計2つの高度にマッチングされ、バッファリングされ、自動校正されたADCを使用します。これらのADCがRTDとセンス抵抗の両方を同時に測定し、RTD抵抗を計算し、ROMベースのルックアップ・テーブルに適用して、最終的にRTDの温度を℃単位で出力します。

 RTDには、2線、3線、4線式の構成が存在します。LTC2983は、設定変更可能な1つのハードウェア実装により、これらすべての構成に対応できます。また、1つのセンス抵抗を複数のRTDで共有できます。そのハイ・インピーダンス入力により、誤差を加えることなくRTDとADC入力間に外部保護回路を実現できます。また、電流励起を自動ローテーションさせて、外部熱的誤差(寄生熱電対)を除去できます。センス抵抗の寄生リード線抵抗によって性能が劣化する場合、LTC2983ではセンス抵抗をケルビン検出することができます。

 LTC2983には、フォルト検出回路が内蔵されています。フォルト検出回路は、センス抵抗やRTDの故障や短絡を検出できます。測定した温度がそのRTDに規定された限界値を上回るか下回る場合に警告します。RTDを熱電対の冷接点センサーとして使用している場合、3つのADCが同時に熱電対、センス抵抗および、RTDを測定します。RTDのフォルトは熱電対の結果に受け渡され、RTDの温度は自動的に冷接点温度の補償に使用されます。

サーミスタの概要

 サーミスタは、温度に応じて値が変わる抵抗器です。RTDとは異なり、サーミスタの抵抗は温度が変わるにつれて何桁も変動します。サーミスタ・デバイスを測定するには、センス抵抗をセンサーと直列に接続します。励起電流をネットワークに印加し、レシオメトリック測定(比率測定)を行います。その比からサーミスタの抵抗値(Ω単位)が求められます。この抵抗値から、Steinhart-Hart式を解くか、テーブル・データを用いて、センサーの温度が求められます。

 LTC2983は、励起電流を自動的に生成し、センス抵抗とサーミスタ電圧を同時に測定し、サーミスタの抵抗を計算し、結果を℃単位でレポートします。サーミスタは、通常、−40℃〜150℃で動作します。また、LTC2983は、標準的な2.252kΩ、3kΩ、5kΩ、10kΩ、30kΩサーミスタの温度を計算するための係数を内蔵しています。サーミスタのタイプと値は多岐にわたるため、LTC2983では、カスタムのサーミスタ・テーブル・データ(R対T)またはSteinhart-Hart係数のプログラミングが可能です。

サーミスタ:重要ポイント

 サーミスタの抵抗(図7参照)は、温度変化につれて何桁も変動します。例えば、室温で10kΩ、最高温度で100Ω、最低温度で300kΩを超えるサーミスタがあります。また、抵抗が1MΩを超えるサーミスタ規格もあります。

tt160401LTC04_Fig07.jpg 図7:サーミスタ設計の課題
tt160401LTC04_Fig08.jpg 図8:LTC2983を使用したサーミスタ温度測定

 通常、大きな抵抗値に対応するには、大きなセンス抵抗と合わせて非常に小さい励起電流源を使用します。これにより、サーミスタの範囲の最下端の信号レベルが非常に小さくなります。ADCのダイナミック入力電流をこれらの大きな抵抗器から絶縁するには、入力バッファおよびリファレンス・バッファが必要です。しかし、バッファは、個別の電源がない場合グランド付近ではうまく動作せず、オフセット/ノイズ誤差を最小化する必要があります。これらの問題は、LTC2983によって、すべて解決されます(図8参照)。

 LTC2983は、グランド・レベルの信号さらにはグランドを下回る信号までもデジタル化できる、独自開発の連続的に校正されたバッファを、複数のADCを使用するアーキテクチャと組み合わせて使用します。2つのマッチングおよびバッファリングされたADCが同時にサーミスタとセンス抵抗を測定し、(規格に基づいて)サーミスタの温度を℃単位で計算します。値の大きいセンス抵抗は必要ないため、異なるタイプの複数のRTDおよびサーミスタで1つのセンス抵抗を共有できます。LTC2983は、サーミスタの出力抵抗に応じて励起電流の範囲を自動調整できます。

 LTC2983には、フォルト検出回路が内蔵されています。フォルト検出回路は、センス抵抗やサーミスタの故障や短絡を検出できます。測定した温度がそのサーミスタに規定された限界値を上回るか下回る場合に警告します。サーミスタは、熱電対の冷接点センサーとして使用できます。その場合、3つのADCが熱電対、センス抵抗、サーミスタを同時に測定します。サーミスタのフォルトは熱電対の結果に受け渡され、サーミスタの温度は自動的に冷接点温度の補償に使用されます。

ユニバーサル測定システム

tt160401LTC04_Fig09.jpg 図9:ユニバーサル温度測定システム

 LTC2983は、汎用の温度測定デバイスとして構成できます(図9参照)。1つのLTC2983につき、最大4セットの汎用入力を与えることができます。これらの各セットは、オンボード・ハードウェアを一切変更することなく、3線式RTD、4線式RTD、サーミスタ、熱電対を直接デジタル化できます。各センサーは同一の4つのADC入力と保護/フィルタ回路を共有でき、ソフトウェアで構成できます。1つのセンス抵抗をセンサーの全4つのバンクで共有し、冷接点補償はダイオードで測定されます。LTC2983の入力構造では、任意のチャネルに任意のセンサーを接続できます。任意の組み合わせのRTD、センス抵抗、サーミスタ、熱電対、ダイオードおよび、冷接点補償を、LTC2983の21個のアナログ入力のすべてに接続できます。

まとめ

 LTC2983は、革新的な高性能温度測定システムです。熱電対、RTD、サーミスタ、ダイオードをラボ・グレードの精度で直接デジタル化できます。3つの24ビットΔΣ型ADCと独自開発のフロントエンドを組み合わせることで、温度測定でよく発生する多くの問題が解決されました。高い入力インピーダンスとグランド未満にも対応する入力範囲により、すべての温度センサーを直接デジタル化し、入力予測を容易に実行できます。

 20個の柔軟なアナログ入力を使用でき、シンプルなSPIインタフェースを使用して再プログラミングすることで、1つのハードウェア設計で任意のセンサーを測定できます。LTC2983は冷接点補償を自動的に実行し、冷接点の測定に任意のセンサーを使用でき、フォルト・レポート機能を内蔵しています。2線式、3線式、4線式RTDを直接測定でき、センス抵抗を簡単に共有してコストを削減し、電流源をローテーションして寄生熱効果を除去できます。サーミスタの測定に関する精度向上とノイズ低減のため、範囲を自動調節する電流源を備えています。LTC2983では、カスタムのユーザー・プログラム可能なセンサーを使用できます。カスタムのテーブル設定によるRTD、熱電対、サーミスタをデバイスにプログラム可能です。LTC2983は高い精度、使いやすいセンサー・インタフェース、優れた柔軟性のすべてを完全なシングルチップ温度測定システムで提供します。

   著:Michael Mayes/リニアテクノロジー ミックスド・シグナル製品、デザイン・セクション長

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提供:リニアテクノロジー株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2016年4月30日

















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