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疑似共振型コンバーターをCMOS ICで制御するDesign Ideas パワー関連と電源

今回は、取り扱いが簡単なCMOS ICを使ってMOSFETを制御するコンバーター回路を紹介する。

» 2016年05月12日 11時30分 公開

 図1はフライバック型電圧コンバーター回路である。取り扱いが簡単なCMOS ICを使って、スイッチング素子であるMOSFET(Q3)を制御する。CMOS ICは、シュミットトリガー入力のNANDゲートを4回路搭載したIC(4093)である。

 コンバーター回路のEMIは主に、電流スイッチングによって発生する。出力ダイオードのリカバリー現象によって変化速度(di/dt)の高い電流が生じてしまう。このため図1の回路では、疑似共振型スイッチングを採用した。スイッチング素子の出力電圧がほぼゼロのときに電流をゆっくりスイッチさせるため、EMIを低く抑えられる。

図1:CMOS IC制御のフライバック型電圧コンバーター回路 (クリックで拡大)
疑似共振型スイッチングを採用した電圧コンバーターである。スイッチング素子であるMOSFETの制御に、取り扱いが簡単なCMOS ICを使った。シュミットトリガー入力を備えたNANDゲートICである。

 図1の回路は電流不連続モードと電流連続モードの境界で動作する。Q3のドレイン電圧が最も低いときに電流をスイッチングする。コンバーター回路が動作し始めると、非絶縁の補助巻線がダイオード(D3)を介して4093の入力の論理レベルをハイレベルに保つ。

 MOSFETがオンすると、Q5のベースが導通し始めるまで1次側コイルの電流が直線的に増加し続ける。Q5のベースが導通するとMOSFETがオフしてフライバック動作が始まる。つまり2次側コイルに電流が発生し、出力コンデンサー(C7)を充電し始める。

 2次側コイルに電流が流れている間は、D5とR6によってQ5は導通状態に保たれる。Q5が導通しているためMOSFETはオフ状態を維持する。2次側コイルからエネルギーがすべて放出されるとD5が導通しなくなり、出力ダイオード(D6)も導通しなくなる。このため出力ダイオードのリカバリー現象による雑音が発生しない。

 Q5が導通しなくなっても、R5とC5から成る遅延回路で、MOSFETはしばらくオフ状態を維持する。MOSFETの出力静電容量と1次側コイルの寄生容量は、1次側コイルのインダクタンスと共振し、1次側コイルへの印加電圧が低下する。R5とC5による遅延時間が存在するため、電圧が最小値に達したところでMOSFETが再びオンする仕組みである。

スイッチング損失を最小化することも可能

 こうした疑似共振型スイッチングを採用すれば、EMIを低減するだけでなくスイッチング損失を最小化することも可能だ。なお、スイッチング素子であるMOSFETのゲートに接続する抵抗値は大きくできる。抵抗値を大きくしておけば、MOSFETがオンしたときに寄生容量への充電速度を抑えられる。その結果、スイッチングによって生じる雑音をさらに軽減できるだろう。

 Q4とその周辺に配置した部品から成る回路はオプションである。MOSFETがオンするときに発生する電流グリッチを抑える役割を果たす。抵抗とコンデンサーで構成するRC遅延回路よりも効果が高い。低負荷時のデューティ比を低く設定できる。ほとんどの電源回路で利用可能だ。今回、2次側の電圧安定化にはシャントレギュレーター「TL431」を使った。フォトカプラに流れる電流はシャント電流に重畳される。

 なお図1には、定数を指定していない部品が数多くある。これらの定数は、電源回路の用途に応じて適切な値を選ぶ必要がある。

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