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過電流/過電圧保護用のブレーカー回路Design Ideas アナログ機能回路(3/3 ページ)

» 2016年06月03日 11時30分 公開
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負荷が容量性である場合

 負荷が容量性である場合、あるいは電球やモーターなどのように突入電流の大きいものである場合には、回路に初めて電源を投入する際に大電流が流れてブレーカー動作に入ることがある。この問題を避けるために、図1に記載しているコンデンサーC2を追加する方法がある。このようにすれば、レファレンス端子電圧が変化する速度を抑えることができる。この方法は簡単だが、過電流に対する応答速度も同時に低下させてしまうという問題がある。

 この方法の代案となるのが、図1に記載しているコンデンサーC1、抵抗R1、R2、トランジスタQ1を追加する方法だ。これにより、電源の投入時にはまずC1が充電される。次いでQ1がオンになり、レファレンス端子電圧が0Vにクランプされて、突入電流によるブレーカー動作を防止できる。最終的にはC1はQ1がオフになるまで充電され、その時点でレファレンス端子電圧のクランプが解除されて正常な過電流対応動作になる。C1、R1、R2が図示した値である場合、約400ミリ秒後には突入電流対応動作を脱して通常動作となる。ほかの部品の定数を適切に選定すれば、任意の値の突入電流に対処できる。

図1:過電流/過電圧保護用のブレーカー回路 (クリックで拡大)

 回路がブレーカー動作した後のリセットは、電源の再投入かスイッチS1の操作によって行う。突入電流対策を必要としない用途では、C1、R1、R2、Q1は不要であり、S1はレファレンス端子とグラウンドの間に挿入すればよい。

D2保護には、適切なツェナーダイオードを

 使用する部品は、定格電圧/電流が使用条件を満足するように選定しなければならない。各バイポーラトランジスタは一般的なものでよいが、Q2とQ3は電流増幅率の高いものが望ましい。Q4のMOSFETはオン抵抗が小さく、ドレイン‐ソース間およびゲート‐ソース間の最大許容電圧が、使用する電源電圧以上のものでなければならない。D1としては、一般的な小信号用ダイオードを使用できる。極度に高い過電圧が予想される場合には、D2を保護するためにツェナーダイオードD3とD4を適切に選択する必要がある。

 この回路ではD2としてZR431を使用したが、これに相当する製品は多くのメーカーから供給されている。ただし、それらの動作は完全に同じだとは言えないので注意を要する。例えば、Texas Instruments(TI)製の「TL431CLP」とZetex製の「ZR431CL」を用いて動作確認を行ったところ、両者ともにレファレンス端子電圧が0Vのときにはカソード電流が0Aになった。しかし、レファレンス端子電圧を2.2Vから2.45Vまで徐々に上げていったところ、カソード電流はTL431CLPでは220μA〜380μA、ZR431CLでは23μA〜28μAとなり、約10倍もの差があった。R7、R8の抵抗値を決める際には、このようなカソード電流の違いを考慮しなければならない。

 また、D2として用いる製品の種類や、R7とR8の抵抗値によって応答速度が変わることにも注意を要する。例えばD2としてTL341CLPを使用し、R7を1kΩ、R8を4.7kΩとしたところ、過電流に対する応答時間は550ナノ秒以下であった。TL341CLPをZR431CLに置き換えた場合の応答時間は約1マイクロ秒となり、さらにR7とR8をそれぞれ10倍の10kΩと47kΩにすると、応答時間は約2.8マイクロ秒になった。注意すべきは、TL431CLPのようにカソード電流が大きくなる場合には、R7とR8の抵抗値を小さくする必要がある。

 R3、R4をそれぞれ62kΩ、10kΩにすることで、トリップ電圧は18Vに設定される。この条件の回路で評価を行ったところ、実際の過電圧判定値は、D2がTL431CLPの場合には17.94V、ZR431CLの場合には18.01Vとなった。このように、過電圧の判定は正確に行われる。過電流の判定はQ2のベース‐エミッタ間電圧の影響を受けるため正確さに欠ける。精度を良くするには、R6とQ2の部分を電流検出アンプに置き換えればよい。

 ここで言う電流検出アンプとは、ハイサイドの負荷電流に比例してローサイドの電流信号を出力するものだ。こうした製品は、LinearTechnology、Maxim Integrated Products、TI、Zetexなどから供給されている。

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※本記事は、2008年7月29日にEDN Japan臨時増刊として発刊した「珠玉の電気回路200選」に掲載されたものです。著者の所属や社名、部品の品番などは掲載当時の情報ですので、あらかじめご了承ください。
「珠玉の電気回路200選」:EDN Japanの回路アイデア寄稿コラム「Design Ideas」を1冊にまとめたもの。2001〜2008年に掲載された記事の中から200本を厳選し、5つのカテゴリに分けて収録した。

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