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特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜

欧米で普及が進む無線規格「Z-Wave」の国内動向IoT時代の無線規格を知る【Z-Wave編】(1)(1/2 ページ)

私たちの生活を劇的に変化しようとしているIoT(モノのインターネット)。その実現には多くの要素技術が求められるが、その中でも重要になるのは“ネットワーク技術”である。本稿では、海外を中心に普及が進むIoT向け無線規格「Z-Wave」について、国内の動向を中心に紹介する。

» 2016年06月09日 11時30分 公開

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IoTがもたらす劇的な変化

 「IoT(モノのインターネット)は、あらゆる面において革新をもたらすことから、各産業のビジネスや産業構造そのものを大きく変革する可能性を秘めている」――。

 総務省の「平成27年度 情報通信白書」にはこう書かれている。IDCによると、国内市場におけるユーザー支出額は、2015年の見込み値が6兆2232億円に対して、2020年には13兆7595億円に達すると予測されている。IoTの登場によって、私たちの生活は劇的に変化しようとしている。

 機器本体の組み込み技術/セキュリティ/アプリケーション開発をはじめ、IoTを実現するには多くの要素技術が求められる。その中でも、重要となるのが“モノとモノをつなぐネットワーク技術”だ。本稿では、ネットワーク技術の中でも、海外を中心に普及が進むIoT向け無線規格「Z-Wave」について連載で紹介する。第1回は、Z-Waveに基礎的な解説に加えて、他の無線規格との比較、国内動向について掘り下げよう。

Wi-Fi環境下でも確実な伝送を実現

筆者のZ-Works社長 小川誠氏。無線規格「Z-Wave」のエバンジェリストとしても活動している(関連:IoTで実現する“頑張らない介護”とは一体何なのか

 Z-Waveとはスマートホーム市場で普及が進むIoT無線規格である。2003年にデンマークのZen-sysが開発した。2009年に米Sigma DesignsがZen-sysを買収し、規格団体Z-Waveアライアンスの母体として規格管理、プロモーション、製品開発を行っている。

 Z-WaveはWi-Fi環境下でも確実な伝送を実現するため、Sub1GHz帯を使用している。Sub1GHz帯とは、800MHzから900MHz帯域を利用するもので、各国の法律に基づいて、細かく分かれている。米国は902M〜928MHz、EUは865M〜868MHzが利用できる。

 日本では、周波数再編を経て、2012年7月から920MHz帯の利用がスタートしている。

最大の特長は、製品の互換性

 スマートホーム市場において、IoT端末に求められる要素は多岐にわたる。センサーであれば、検知する精度だが、1つのセンサーでできることは限られている。それを補うためには、複数のセンサーや異なる種類のセンサーが必要だ。導入コスト、多種多様なセンサーのラインアップ、手軽に使えることなどが重要になってくる。

 導入の手軽さでは、無線が有効的である。IoTではBluetooth Low Energy(BLE)が注目されているが、BLEを使用した大規模なサービスは海外で存在しない。その背景には、1)Wi-Fi環境下での干渉、2)石造りの家庭が多い欧州では減衰すること、3)通信距離は、最大でも7〜10m程度、4)端末数を増やせないなどの理由がある。

他の無線規格との比較
Wi-Fi Bluetooth ZigBee Z-Wave
周波数 2.4GHz 2.4GHz 2.4GHz
(一部920MHz)
920MHz
アプリレベル
での互換性
なし なし 限定的 完全互換
伝送速度 高速 中速 低速 低速
通信距離
ダイレクト
長距離 短距離 中距離 中距離
通信距離
ルーティング
不可 不可 長距離 長距離
*)厳密な値ではないため、参考データとしてご参照ください

 Z-Waveは、上記の課題を解決できる。1)Sub1GHz帯を使用しているため、Wi-Fiと干渉しない、2)ノード間でも30m、4回ホップを実現するルーティングレイヤーにより150m四方をカバー、3)端末数も最大232個まで増やすことができる。また、4)低消費電力のため、海外を中心にバッテリー駆動のセンサーに多く採用されている。

 特に、4回ホップを実現したメッシュネットワーク技術は13年の実績があり、ホテルなどをはじめ、数万個のデバイスを一斉にコントロールするといった事例が既にある。

Sigma Designsが展開するZ-Wave認証済み製品 出典:Sigma Designs

 最大の特長といえるのが、製品の完全互換性である。Z-Waveアライアンス(2016年6月1日現在の加盟企業は375社)が、1500種類にも及ぶZ-Wave認証済み製品をリリースしており、メーカー間の垣根を越え、さまざまなサービスが広まっている。

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