メディア

“サプライズ”で学ぶ電子回路の面白さWired, Weird(1/3 ページ)

今回は、電子回路の入門学習に最適な“教材”を紹介しよう。身近で親しみやすい100円ショップのセンサーライトが、その教材だ。ちょっとした工夫で、初心者の興味を引き付け、サイリスタなどの特性を身をもって理解できる教材になる。新入社員教育はもちろんのこと、夏休みの自由研究のネタとしても良いかもしれない。

» 2016年07月07日 11時30分 公開

「Wired, Weird」連載一覧

せっかくの研修――面白くて、ためになる内容でないと!

 今回は、電子回路の初歩学習の教材にうってつけな身近な電気製品を使った工作ネタを紹介しよう。身近な電気製品とは、100円ショップで見つけたセンサーライトだ(見つけたのは12年以上も前だが)。このセンサーライトは、サイリスタ(SCR)がどのようなものなのか良く理解するための最適な教材になるのだ。

 10年ほど前に話はさかのぼるが、ある会社の電子回路設計についての社内教育研修の講師を担当した。当時は不況で仕事が減り、企業は会社と雇用の維持で『教育訓練給付制度』を活用していた。しかし、この社内教育は受講者の時間を消化させるだけで知的な興味を引き付けるものが少なかった。筆者も事前に研修を聴講したが、『これでは貴重な時間を捨てているだけだ』と思った。社内講師の仕事を引き受けたからには、受講者に有意義な教育を行おうと思っていた。研修を機会に電子回路の面白みを味わってもらいたい。

 そこで、少しでも親しみを持ってもらうため、教材は極力、身近な電気製品を使うことにした。また研修時に可能な限り、受講者の目と耳と手で電子回路を感じてもらって、頭ではなく“カラダで覚える電子回路教育”を目指した。さらに研修中にサプライズを起こして受講者の関心を引き付けた上で、サプライズの仕掛けを理解させることでより深く電子回路に興味を持たせようと考えた。

教材は100円ショップのセンサーライト

 前置きが長くなったが、まずは社内研修に使ったセンサーライトを説明しよう。

 読者もこのセンサーライトを見たり、使ったりした経験があるだろう。センサーライトの動作は簡単で、周囲が暗くなるとランプが点灯し、明るくなるとランプが消灯する。最近、Web検索したところ“DX センサーライト”という記事があり、教材に使ったセンサーライトとほぼ同じものがこのWebサイトで説明されていた。このWebサイトには分かりやすくセンサーの構造や回路が紹介されているので参照願いたい。

 さて、筆者が教材に使ったセンサーライトの回路図を図1に、基板の部品面の写真を図2に示す。

左=図1:教材に使用したセンサーライトの回路図 / 右=図2:センサーライトの基板(部品面)

 図1の回路図は、紹介したWebサイトが扱っているセンサーライトの回路図と抵抗の値が少し違っていた。紹介したWebサイトではR1に3MΩが使用されCDS(カドミウムセレン)の感度を少し変えてあった。

 図1の回路動作を簡単に説明する。SCRはゲートGからカソードKへ電流が流れるとSCRがオンしてアノードAからカソードKへ電流が流れオン状態を保持(ラッチ)する。またゲート電流が流れ始める電圧VGKは約0.8Vだ。

 図1の回路ではゲートには電源電圧を抵抗R1(2.4MΩ)とCDS R0の直列接続の分割電圧が印加されている。CDSは周囲が明るいと数kΩの抵抗値だが、暗いと1MΩを超える抵抗になる。つまり、SCRがオンする条件は周囲が暗くなってCDSの抵抗が10kΩ程度に大きくなり、AC電源電圧がプラス側になって電圧が上がった時だ。この時にSCRにゲート電流が流れ、SCRがオンしてランプが点灯する。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

RSSフィード

公式SNS

EDN 海外ネットワーク

All material on this site Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
This site contains articles under license from AspenCore LLC.