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国境なき電解コン劣化問題Wired, Weird(2/3 ページ)

» 2016年09月12日 11時30分 公開

搭載されていたリレー基板

 AC電源はリレー基板に実装された茶色の小型のコネクターに接続されるようだ。この機器は2つのヒーターの電力を制御するシステムで、温度センサーには熱電対(TC)が使用され温調器に接続されていた。温調器には2つの信号出力があり、1つはSSRに接続してヒーターの電力制御を行い、もう1つの温度センサーはリレー基板に接続されており、過昇温時にリレーをオフにしてヒーターの電源が切っているようだ。

 搭載されていたリレー基板の写真を図3に示す。

図3 図3:リレー基板 (クリックで拡大)

 図3下の“茶色のコネクター”にAC100Vが接続され、図3左の端子台から温調器とヒーターへ電源が供給されていた。2つの温調器の信号とも基板の右下のコネクターP2へ接続されていて、過昇温監視と思われた。茶色の電源コネクターは小形で大電流は流せない。小電力のヒーターを制御する機器と思われた。

 さて、配線接続とその意味も把握できたので、通電して動作を再確認することにした。コネクターP2の信号は図1のリレー基板の右上にある9PのDSUBコネクターで3,4と4,5ピンへ接続されていた。どうやらこの接続信号は過昇温を検知する温度センサーで間違いないようだ。この端子は短絡しても構わないと思われるが、端子の電流の流れも分かったので、センサーの代わりにLEDを入れてみた。温度センサー(TC)の2本をそれぞれの温調器に接続しAC100Vを茶色のコネクターに供給した。

 “LINE温調器”のパネルは表示が点灯し、センサー代わりのLEDも点灯したが、“VALVE温調器”のパネル表示が消えていた。

「あっ! この現象は依頼主からの不具合情報と同じだ!」

電源の電流供給能力が低下

 やっと客先の不良現象が再現できた。パネルの表示は点灯しないがこの温調器へはAC100Vは給電されていた。LEDをコネクターから外したらVALVE温調器のパネルの表示も点灯した。

 VALVE温調器のパネル表示が消える原因を確認するためLEDに流れる電流をマルチメーターで測定したら「30mA」だった。LEDの代わりに抵抗(4.7kΩ)を挿入し、電流を5mA程度に減らしたら温調器のパネル表示が再び点灯した。

「これだ! 温調器に内蔵されている電源の電流供給能力が低下している」

 VALVE温調器の表示が消える理由が分かった。

 温調器の型名の「Series 965」から取扱説明書をWeb検索したら、なんとか英文の取扱説明書が見つかった。しかし温調器の出力2の使い方や外部へ供給可能な電流の記載はなかった。だが、温調器に内蔵された電源回路の性能の劣化が動作不良の原因であることが分かったので、取りあえず分解して調べることにした。温調器のケースの開封には苦労したがなんとか分解できた。温調器の内部基板の写真を図4に示す。

図4 図4:温調器の内部基板 (クリックで拡大)

 図4の温調器は上部にスリットがあり、電源部の熱を外部へ逃がすように設計されている。小型で良い設計の温調器だ。

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